― 企業におけるビジョンと戦略の重要性 ―

企業理念やビジョン、戦略の良し悪しは、企業の盛衰を左右し得る大切な要素です。企業の理念は不変ですが、ビジョンは、社会環境や価値観の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。10年程度の長期計画と3~5年の中期計画を併用するのが望ましいでしょう。
ブランド力の強化や社会貢献度アップ、収益の向上など、現状と比べて、近い将来こうありたいと思い描く姿がビジョンです。IBMは汎用機が全盛の時代に、ハードを中心に据えた戦略で大きな発展を遂げました。その後パソコンの出現によって、衰退の道をたどっていましたが、ソリューションやサービスで社会貢献をするというビジョンの転換を行って、業績を回復しています。
そのビジョンを実現するためのツールが「経営戦略」です。戦略とは、チームに最大限力を発揮させる総合的な基本方針です。そして、戦場で勝利に向かって取る具体的な術(=手段)が戦術です。例えば、「これまで20歳代が主な顧客層だったが、30代以上もターゲットにして利益拡大をめざす」というのは戦略です。その中で、30代以上のニーズをマーケティングし、結果に見合った製品を開発、販売地域を検討することは戦術です。このように、戦略は戦術を包括しているので、戦略の方向性を誤ると正しい戦術がとれません。戦略を適切に設定したうえで、戦術を選択することが肝要です。
戦略や戦術は通常、1年ごとの経営計画として盛り込まれます。ビジョン(=中長期計画)や戦略・戦術(年次計画)の実施にあたっても、PDCAサイクル(※)を回すことが有効です。
※営業プロセスにおけるPlan・Do・Check・Actionのサイクルのこと。
  詳しくはこちらのページをご覧ください。

バランス・スコアカードとは?

ライフスタイルの短縮、人口構造の大きな変化、発展途上国の追い上げなど、企業を取り巻く環境はますます厳しくなっています。将来は必ずしも過去の延長線上にあるとは限らず、今までの経営手法では、利益を確保することが困難になってきているのが現状です。

従来の市場情勢と現在の情勢とを比較すると、顧客や消費者を乗り物の乗客に例えれば、企業側がバスの運転手であった時代から、タクシーの運転手の時代に変わったのだと言うことができます。前者の場合、乗客はバス停で待っていますし、走行ルートとスケジュールも予め決まっているので、それに沿って安全に運行していれば問題ありませんでした。つまり企業は、過去の実績に数%上乗せした予算を編成し、「勘と度胸で頑張ろう」という精神論的経営(有視界経営)で目標を達成していたのです。ところが、高い競争力が要求される昨今の市場においては、もはやこうした経営は通用しません。タクシー運転手のように、乗客を見つけ出すところから始め、それぞれの希望に応じて、迅速かつ適切に目的地に向かうことが期待される時代なのです。

バランス・スコアカードは、このような戦略経営時代を生き抜くための革新的マネジメントシステムです。企業経営における様々な問題点を克服し、ビジョンと戦略を明確にし、その実現に向けて組織の結束力を強化します。夢であり目標であるビジョンや戦略を、経営トップから組織の末端(=従業員一人ひとり)まで浸透させ、部門や個人の目標との整合性をとりつつ、果敢に挑戦していけるよう、以下の4つの視点を設けています。

財務の視点

掲げたビジョンと戦略を確実に実現するために、具体的行動の指針を明確にする。
財務目標を達成し、目標利益を確保し、ビジョンと戦略を実践する。

顧客の視点

顧客が何を期待しているか、顧客の立場から考える。顧客満足度・顧客定着率・新規顧客獲得率・市場占有率を上げるため、何をすべきかを明確にする。顧客のニーズを充足できれば、財務目標の達成につながる。

業務プロセスの視点

顧客満足度の向上を図り、財務目標を達成するには、競合他社よりも秀でた業務プロセスを備える必要がある。顧客ニーズの察知から、それに合致した製品やサービスの設計・開発、生産、販売あるいは提供、アフター・サービスまで、確実・スピーディーに対応できる能力を育てるための具体的対策を明らかにする。

人材と変革の視点

優れた業務プロセスを確立するには、相応の企業基盤が必要不可欠である。
能力開発や人材育成で社員一人ひとりの能力を高め、前向きな組織風土・変革能力を育て、情報システム技術のインフラ整備を行い、企業基盤の充実・強化を図る。

バランス・スコアカードは、上記の4つの視点を有機的に関連させながら、
ビジョンと戦略を実現する具体的方策を明らかにし、その因果関係を明確にすることができます。

ビジョンと戦略の実現

顧客満足の充実から、財務の視点における財務的目標を達成できる
製品シェアの拡大・リピート比率の向上・キャッシュフロー・ROIの向上

顧客の視点における戦略目標である、顧客満足度の向上を図れる
顧客創造・納品時間の短縮・クレームへの迅速な対応とゼロ化

業務プロセスの視点における、顧客ニーズに合う製品・サービスを提供できる
新製品の開発・生産効率や品質の向上・不良品の撲滅・コンプライアンス

人材と変革の視点から人材教育の実施・ITの有効利用・生産システムの効率的な運用
⇒変革能力や成長力の強化・従業員のパワーアップを実現できる

このようにバランス・スコアカードは、各視点の因果関係を明確にして
ビジョンと戦略を実現するためのシナリオを描くことができます。
バランス・スコアカードの4つの視点は、それぞれ以下の5項目で構成されています。

  戦略目標各視点の基本目標
  重要成功要因1の達成に最も重要なパフォーマンス・ドライバー
(業績向上要因)
  業績評価指標(KPI)2に対応して設ける、アクションの成果とプロセスを
継続的に測定・評価するための指標
  ターゲット(数値目標)3で測定するアクションないし行動の具体的数値目標
  アクション・プランバランス・スコアカードを組織全員に周知徹底させ、
戦略目標や4を達成するための実行プラン

バランス・スコアカードの基本モデルで重要なことは、各視点の
戦略目標重要成功要因業績評価指標(KPI)ターゲット(数値目標)
およびアクション・プランの各項目間の垂直的因果関係を明確にすることです。

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