考えるより先に・・・

 人間の脳は生命維持のため、命に別状がないかぎり、できるだけ変化を避けて現状維持をしようとする防衛本能が働いています。

今までの生活習慣や行動をいっきに変えて新しいことに挑戦しようとするとき、最初の数日は気合いや根性でなんとかなります。でも、残念ながら、長続きせず、三日坊主やリバウンドを起こしてしまうことになりがちです。

これは、能力や性格、やる気の問題ではなく、脳の防衛本能が、我々の行動を抑制しようとすることが原因です。私たちの脳は、とても面倒くさがり屋なので、いっきに完璧に物事をやり遂げようとすることは、脳の仕組みから難しいようです。

ですが、私たちの脳には「側坐核」と呼ばれる場所が存在し、刺激され、楽しいと感じるドーパミンというホルモンが分泌され、意欲を高めてくれます。このドーパミンが行動力の源になることが分かりました。

このスイッチを入れさえすれば、誰でもすぐに動くことができるようになります。

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「すぐやれない」のはみんな同じ

では、「すぐやる」人になるには、どうすればいいのでしょうか。仕事や家事をつい後回しにして、無駄な時間を生んでしまっていないでしょうか。ちょっとした工夫で、誰でも「すぐやる脳」に変身できる方法があります。

   実は、脳は怠惰な臓器です。理由は3つあります。
1つ目は、エネルギーの節約のためです。
脳はとんでもなく燃費の悪い臓器で、わずか1.4kgほどの重さなのに、人間が1日に必要とするエネルギーの20%も消費します。

そのためか、できる限りエネルギーを節約しようと、あの手この手で休もうとします。人間も動物ですから、太古の昔から常に外敵から身を守る必要がありました。

外敵に襲われたときは、一目散に逃げるまたは必死で戦うしかありません。肉体に最大限のエネルギーを注がなければならないので、脳にはエネルギーを節約するようになりました。

2つ目は、脳は「周りに流されやすい」という特徴があります。
幼い子どものように「みんなと一緒」という状態を好みます。このような癖を経済用語では「バンドワゴン効果」と呼びます。「○○が流行っている」とか「みんな△△をしている」といった情報を知ると、自分もそうしないと不安になるのです。

反対に、皆がしていないことは、自分もしたくないという心理が働き、誰も頑張っていない場所で自分だけ頑張ることができないようです。

3つ目は、脳は「誘惑に弱い」からです。
たとえば満腹でも、ケーキを目にした途端、「別腹」といって食べる人は少なくありません。人の脳は、視覚や聴覚、嗅覚などの五感によって過去の体験を呼び覚まし、新たな欲望が生じやすくできています。

 神経伝達物質ドーパミンが鍵

  脳科学の観点から結論をいうと、やる気を出す神経伝達物質「ドーパミン」をいかに分泌させるかが鍵となります。

人は「成功体験」をしたとき、脳内にドーパミンが分泌されます。ドーパミンが出ると心地よい状態になり、「その状態になりたい」と、脳の中でその行動にまつわる部位の働きを活性化させようとします。

これを「強化学習」と呼びます。つまりドーパミンには、依存性があり、成功体験をした後だけでなく、成功が予測されるときにも多く分泌されます。その効果によって「やる気」を引き起こされます。

つまり、ドーパミンをコントロールすれば、「やりたくない脳」を「やりたがる脳」に変えられるというわけです。

2つのステップの実践

   ドーパミンをコントロールする方法は2つのステップがあります。
ステップ① 自己暗示をかける
偽の薬も本人が薬と信じて飲むと、症状に改善が見られることは医療の世界でもよく知られています。これを「プラシーボ効果」と言います。

 「○○を×分で行う」[今日は○○を必ずやる]などと、小さな目標を声に出して唱え、自分に言い聞かせ、脳を「やる気」にさせます。

このとき、声に出すのがコツです。 自分の声を耳で聞くことで聴覚が働き、脳に強く刻み込み、五感を刺激する効果が高まります。

ステップ② 小さな目標に分ける
大きな目標にいきなり挑んでも、達成感を得るまでには時間も労力もかかるため、ドーパミンは出にくいです。

そこで神経学者のジュディーウィリス氏は「小刻みに目標を設定すること」を勧めています。スモールステップ化することで、ドーパミンを思いどおりに出せるようになります。

 たとえば仕事で本を1冊読まなければならないときに、一気にまとめて読もうとすると、なかなか読み始めることができません。

そこで1時間で3分の1読み終えると目標を小さくすると、すぐに読み始められるうえ、3分の1しか読んでいないのに、達成感も味わえます。このように少し余裕を持って達成できるくらの負荷のスモールステップを設定する方が、ドーパミンの効果を得られるそうです。

①と②の実践によりドーパミンの分泌を活発にさせましょう。  重要なことは、やる気があろうとなかろうと、まず始めることです。 作業を始めることによって脳内のやる気スイッチに指令が届き、そこからやる気がわいてくるというメカニズムが脳にあり、この現象を「作業興奮」と言います。

すぐ行動に移す

さらに「ドーパミン」の分泌をより促すためには、基本的なところから言いますと、まずは心身の健康が第一ということです。疲労がたまった状態や、過度のストレスを抱えている状況では、ドーパミンの分泌が抑えられてしまいます。そして睡眠時間をしっかりとることも大切です。

またウォーキングなど、適度な運動をすることもお勧めです。一般的に運動は血流を促進し、脳にも酸素が十分に供給されることから、パフォーマンスが上がると言われます。それに加えて「作業興奮」の原理も働きます。

すぐやる人になるには、完璧主義をやめることも非常に重要な要素です。人は質を求めれば求めるほど、着手するのが遅くなるのが常なのです。

その理由は「逃避」という心の「防衛機制」が働くからです。じつはこれが結果を出す人と出せない人の差でもあります。  すぐやるための最善策は状態も状況も気にせず、何よりまず着手することが重要です。

手を動かすことにより、その信号が大脳の「腹側淡蒼球」に伝わり、さらに「側坐核」が刺激されると言われています。この「側坐核」が「やる気スイッチ」であります。

100点を目指す仕事の仕方ではなく、合格点スレスレで十分だと思えば、行動を始めるハードルも下がります。 質を極めて時間をかけるより、完璧ではなくてもアウトプットの総量を増やすほうが、現代の仕事の仕方として評価されるのではないでしょうか。  

 参考文献:『プレジデント 人生後半の時間術』 2024/11/15号    

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