ラクに任せるには・・

「他人より自分のほうが優れている」と思う経営者、意思決定者は珍しくないだろう。自分の能力や実績に自信を持つのは、良いことですが、それが過剰になると、能力的に劣ると認識している他人に仕事を任せられなくなります。

任せたとしても、途中で介入したくなります。結果、部下はいつまでも経験を積むことができずに、成長もかんばしくなく、ますます任せられなくなってしまいます。

しかし、ポジティブ志向のあるリーダーは「自分は○○はできるけど、●●は不得意」、「Aさんは、こういうところがすごい」と自分の能力を客観的に評価できます。一緒に働く部下の能力も的確に把握し、適材適所へ割り振ることができます。

一緒に働く仲間の能力を認めて仕事を任せることによって、自分自身が楽になれるし、周りの人も才能を発揮しやすくなって、みんなにとってハッピーになります。過度に忙しい・・と感じている経営層やマネージャーは、自分が誰よりも優秀だと過信していないかについて考えてみることが大切です。

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悩んでいるのはあなただけじゃない

部下に仕事をどのように任せるべきなのか、頭を悩ませている上司が多いのではないか。悩みが深くなる原因の一つは、部下の気持ちがわかりにくいことだ。丸投げでは困るだろうと気を使って細かく指示を出すと「もっと信頼してほしい」と要望される。

成長意欲を感じたので仕事を任せたら「業務量が多い」と文句を言われる。よかれと思って任せたのに、部下にはそのように受け取ってもらえないケースがある。ますます任せ方に迷うことになる。

これは家庭での仕事の任せ方も同じだ。いまや夫婦で協力し合って家事を分担するのはあたりまえだ。妻や夫の本音がわからずにすれ違いが起き、揉めてしまう夫婦も多いようだ。

いったい相手は、どのような仕事の任され方を望んでいるのか。それを探るために、プレジデント社ではアンケート調査を実施した。1332人の回答から職場や家庭における、上司、部下、配偶者の任せ方の本音を掘り下げてみた。

まずは、上司側の本音から「部下にもっと仕事を任せたいと思っているか」と尋ねたところ、任せたいと回答した上司は83%にのぼった。

少しでも部下に仕事を振って楽になりたいという気持ちはよくわかる。しかし、現実は、「部下に仕事を任せたいのに、ためらうことはあるか」との質問に対しては、73%もの上司がためらうと答えている。

ためらう理由を尋ねると、1位「自分でやったほうが早いから」、2位「部下の仕事の出来が悪いから」と、自分と部下のパフォーマンスの差をあげる回答が上位に入っている。 近年は管理職もプレイングマネジャーがあたりまえだ。また、労働時間制限がない管理職は過剰労働になりがちだ。

部下に気を使いすぎてはいないか

部下に仕事を任せるのは、教育の意味合いも大きい。部下が育てば、長期的には上司の仕事も楽になる。そのことは上司も理解しているはずだ。それでも自分で仕事を抱えてしまう現実がある。

一方、ためらう理由として4位に「ハラスメントにならないか心配だから」、5位に「嫌われたくないから」がランクインしたことにも注目したい。

かつては、部下からどのように思われようと、チームとして成果を出してさえいれば上司は評価された。部下を使い潰したとしても、代わりの人材がいたからだ。

しかし、いまは人手不足で、労働市場は完全に売り手市場である。企業は人的資本経営を掲げ、管理職も人を活かすマネジメントをしなければ評価されない時代になっている。

部下の機嫌を損ねて退職させてしまう上司は、管理職失格という風潮を汲んだ回答が、ランキングにもあらわれている。 「部下とコミュニケーションを取る際に、ハラスメントにならないように意識しているか」という質問に対して、意識していると回答した上司は93%だ。

また、「部下に仕事を任せるときに期待すること」についての回答は 1位、「報告・連絡・相談を行うこと」、 2位、「任された仕事を正確に理解すること」おどろくことに、期待しているのはビジネスパーソンが仕事を遂行するうえでの基礎的なことばかりだった。

次に、「部下は十分な業務量を行っているか」という質問については、77%の上司が部下の業務量に肯定的な評価をしているのに対して、十分に行っていないと感じている上司は22%にとどまっている。部下の業務量についても、過度な期待はしないで、部下にこれ以上仕事を任せて職場がブラック化することは上司も望んでいないようだ

。 部下が納得して仕事に取りかかれるように言い方や頼み方を工夫することが、管理職の必須スキルになっているらしい。

いまや、上司にとって部下は「触らぬ神に崇りなし」の存在になっているのか? 「つべこべ言わずにやれ」で済んだ時代はもう終わりだ。どうしても部下に仕事を任せなくてはいけない場面はある。そうなると上司はおっかなびっくりになる。

ただし、膨大な業務量をチームとしてこなさなければいけない現実がある。 一人あたりの業務量を増やせないなら、チームの人数を増やすしかない。この問題について上司の本音はどうか。

「部下の人数はもっと欲しいか」という質問に対しては、「はい」が55%、「いいえ」が45%と、大きな差はない。部下が増えれば職場のホワイト化が進んで部下が辞めにくくなるが、人数が増えれば上司のマネジメントの負担が増える。どちらがいいのか難しいところである。

8割は細かい指示を求めていないが、 進捗確認は必須

上司側の悩みは尽きないが、一方の部下側は仕事の任され方についてどのように考えているのだろうか。

上司として気になるのは、指示の出し方だ。細かな指示を出さなくても、部下が自分で考えて動いてくれさえすれば、上司は楽ができる。 しかし、自由にやらせた結果、部下が的外れなアウトプットを出してくれば、そのフォローでかえって上司の負担が増す。

この点について、部下の本音はどうなのか。「細かい指示があるほうがいいか。裁量を持たせてもらったほうがいいか」を尋ねると、78%の部下が「裁量が欲しい」と回答している。結果を見る限り、部下は自由放任を望んでいるように見える。

しかし、アンケートの回答を鵜呑みにして部下を放任しては問題だ。「上司に仕事を丸投げされて困ったことはあるか」と尋ねると、「ある」と回答した部下が60%もいた。過半数の部下は、丸投げを嫌っている。

マイクロマネジメントをされるのは嫌だが、放置されるのも困るのが部下の本音ようだ。

バランスを取るのが難しいが、基本は部下に任せつつ、やり方をおおまかに教えたり、適当なタイミングで進捗確認するなど、つかず離れずのマネジメントが上司には求められているようだ。

 参考文献:『毎日ラクになる任せるコツ』 PRESIDENT 2024/5/17号    

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