■人生を好転させるには・・・
私たちが今日あること、そして存分に働けることは、お客様や取引先はもちろん、職場の仲間、家族といった周囲の多くの人々の支援があるからです。このことを忘れず、常に周囲への感謝の気持ちをもち、お互いに信じあえる仲間となって仕事を進めていくことが大切です。
「感謝」研究の第一人者である米国カリフォルニア大学ディビス校ロバート・エモンズ教授は、感謝日記を継続的に実施している1000人以上を対象に調査を行いました。
それによりますと、驚くべき結果です。
①身体的な効能として、免疫力の向上、痛みの軽減、血圧の低下などが示されました。
②心理的効能として、ポジティブ感情、楽天性や幸福感の高まりなどが挙げられました。
③社会的効能として、他者を助け寛容で慈悲深くなり、孤立感や孤独感の軽減、外向性の向上などの変容が見られました。 「感謝」は、人間関係を強化し、社会的利点として大切にすべき感情と言えます。
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感謝は、上手に生きるためのスキル
人間は、まわりの人と支え合い、助け合っているからこそ生きていられる存在です。人間が長い時間をかけて進化してきたなかで、「感謝」という気持ちを持つようになったのも、社会を基盤とした生き方がきっかけだったのかもしれません。
誰かに、お世話になったとき、相手の人に「ありがとう」という言葉を伝えれば、清々しい気持ちになります。
アイルランド生まれの教育学者、マーガレット・カズンズは、こんな言葉を残しています。 「感謝は一日を豊かにし、人生を変えることさえあります。必要なのは、それを言葉にしようとするあなたの意欲だけです」 しかし、ちょっとしたこと、小さなことへの感謝は忘れがちになります。
「感謝力」がある人は簡単にへこたれない
生きていると、いろいろなことがあります。 ときには、お叱りを受けたりして、自己嫌悪に陥ってしまうこともあります。 そんなとき、素直に「貴重なお言葉、ありがとうございます」といえる人と、そうでない人とでは大きな差が出るようです。
「ありがとう」といえる人は、圧倒的に打たれ強いようです。多少の失敗では簡単にめげません。何度でも挑戦するパワーを持っています。 なぜなら、感謝の気持ちを持っている人の発想はポジティブだからです。
素直な心で現実を受け止めることができるからです。仕事で多少追い込まれても、「ピンチはチャンス」と気持ちを切り替えられます。 仮に失敗することがあっても、「自分はまだまだ恵まれている」と気持ちをプラスに持っていくことができます。
そして、仮に失敗してもそこであきらめず、次のチャンスに挑戦する意欲を失うことはありません。 すぐに気持ちを立て直し、「この前は失敗したけれど、次はこうしよう」と再挑戦するパワーを持っています。
「こんなことも自分はできない人間なんだ」ではなく、「おかげさまで、ここまでは行けた。次、またがんばる」と感謝力を発揮しようと努力します。
大切なのは「結果だけを見ない」ということです。仮に結果は失敗だったとしても、そこに至るまでのプロセスで、いろいろなことがあったはずです。
同僚が助けてくれたこともあったでしょう。 上司がアドバイスしてくれたこともあったでしょう。 ひょっとしたら部下から問題解決のヒントをもらったこともあったのでは? 私たちはけっしてひとりではなく、仲間がいたからこそ、少しずつでも前に向かっていけたのです。
失敗したっていいのです。プロセスを思い出すことです。その作業のなかで、きっと感謝できること、感謝すべきことがいくつも見つかるはずです。それを、再度挑戦するための起爆剤にしていましょう。
私たちは「生かされている」
現在、地球にはおよそ870万種の生物がいるといわれていますが、そもそも生命が誕生したのはおよそ40億年前のことだと言われています。
その生物の遺伝子が受け継がれ、多くの生物種が誕生や滅亡を繰り返し、想像もできないほど長い時間を経た結果として人類が誕生しました。
そうした事実を考えれば、「いま、私が私として存在していること」はまさに奇跡といってもいいでしょう。 その後、人類は社会を形成し、文明を発達させることで繁栄してきました。先進国ではかってのように餓死を恐れる必要はなくなっていますし、必要なものを大量に生産する能力も手に入れています。
でも、それは多くの人が協力し合っているからです。お互いに依存し合い、共存しているからこそ、豊かな生活を送ることができています。
お坊さんの法話では、よく「私たちは生かされているんですよ」という言葉が出てきます。 それを聞くたびに、私は「そのとおりだな。本当に、みんな支え合って生きている。ひとりでは生きていけない。
だから、まわりの人への感謝を忘れてはいけないなと思います。 それを考えれば、「生かされている」という言葉の意味もはっきりとわかってくるでしょう。
だから、お坊さんは、私たちは生きているのではない。生かされているんだ。だから感謝の心を持たなければいけない」とことあるごとに諭してくれているのです。
こうした教えは仏教に限ったことではありません。 たとえば、アフリカのナイジェリアには、「小さなものに感謝しなさい。そうすればあなたは多くのものを得るだろう」 という、古くからのことわざがあるそうです。
そんな現代人に対して、アフリカでの獣身的な医療活動で「密林の聖者」とも呼ばれたドイツの医師アルベルト・シュヴァイツァーは、 「感謝を表現する言葉や行動からけっして逃れないよう自分自身を鍛錬しなさい」という言葉を残しています。
感謝し、感謝されるということ、それにふさわしい行動をするには、それだけ努力することが必要だということです。
「感謝のルーティン」をつくる
北アメリカの先住民族であるミンガス族の格言に、次のようなものがあるそうです。 「感謝する理由が見つからなければ、落ち度はあなた自身にある」と、なるほど。
「あなたが生きている世界を見渡せば、感謝すべきことはいくらでも見つかるはずですよ。それを見つけられずに人をうらやんだり、妬んだりしているとしたら、それはあなた自身の考え方に問題があるからですよ]とても深く、考えさせられる言葉です。
だから、ことあるごとに「ありがとう」を口にするのです。 そうすれば、白分のまわりにたくさんの感謝が隠れていることに気がつき、素直に感謝の気持ちを伝えられるようになるはずです。
そして人間関係が、仕事が、人生が好転していくことでしょう。さらに、心身共に豊かになることでしょう。
参考文献:『小さな感謝』 鹿島 しのぶ 著 三笠書房