■後悔、前進の源泉に・・
後悔は、選択した行動の結果が期待外れに終わった際に起こります。 行動をするかしないかを迫られた時に、"やる後悔"よりも"やらなかった後悔"の方が大きいことが分かっています。
一方で何度も挑戦できる行動は、新しい機会を得やすいため、やらなかった時に後悔しても時間がた経つにつれて後悔が和らぐことが多いと言われています。
身体的な自由が利かず、残された時間が少なくなることで、新しいチャレンジが出来ない状況に陥ると「元気なうちにやっておけばよかった」「こんなはずじゃなかったのに」という気持ちが次々に沸き起こってしまうのです。
後悔を吟味することで、自分の本当の望みや理想を確認することができるのです。自分の失敗や間違いを繰り返さないヒントにもなります。 「次は失敗しないようにしよう」と強く感じます。
そのため、次にチャレンジする時に向けて、同じ失敗や間違いをしないように自分のスキルを伸ばしたり、必要な支援を求めたりすることができます。後悔する気持ちをバネにすることで、今後の人生で成功する可能性を高める工夫ができるのです。
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後悔の種類
私たちは、毎日のように後悔しています「こんなことなら先延ばししなければよかった」「あのとき辛いことからに逃げていなかったら」と後悔は、多くの人が経験しているはずです。
そのうち、[こんなことなら○○しておけば/しなければよかった]という過去の出来事に対する感情は、「過去展望の後悔」と呼ばれます。
違う意思決定をしていれば、より高い基準の収入を得ることができたはずとネガティブな感情を抱えているわけです。
一方、「予防接種をしなかったらウイルスに感染して重症化するかもしれない」というように、未来の悪い結果を思い浮かべて後悔を疑似体験することもあります。これは心理学では「未来展望の後悔」と呼ばれ、『予期後悔』としても知られています。
後悔を回避するために必要なのは、 この予期後悔です。何かを決断するときは、「もしこの選択をして悪い結果が出たら、この選択をしたことをどれくらい後悔するだろうか」とシミュレーションし、後悔の少ないほうを選ぶようにしてみましょう。
「もしも」を想像することは「反実仮想的思考」と呼ばれ、各選択肢のメリットとデメリット、費用や時間などの物理的なコスト、大変さや面倒さなどの心理的なコストなどを洗い出し、 それぞれの選択肢を客観的・公平に見ることにつながります。
「予期後悔って難しそう」と思うかもしれません。でも、服を買うとき、「これカッコイイけど家にある服と合わないからダメかな」などと考えますね。
これも予期後悔です。より重要な意思決定の場面でも、予期後悔的思考を繰り返し実践することで次第に慣れていくと思いますし、この視点を持つだけでも後悔を回避できる可能性が高くなるはずです。
今回のアンケートの結果は、「自分も今後の意思決定次第で同じ後悔をする可能性がある」と考えるヒントになるでしょう。
後悔の対処法
後悔には、ポジティブとネかティブの二通りの対処法があります。ポジティブな対処法は、その結果を素直に受け入れ、反省し、その後悔から学ぶことです。
さらに、ポジティブな対処法は「適応的行動」を促進する、つまり自分自身をよりよい方向に変える力があります。前向きに対処すれば後悔は教訓となり、同じ失敗を繰り返さずに済むのです。
自己嫌悪に陥るなど精神的に参っているときには、その後悔した出来事を考えないようにするというネガティブな対処法をとることで心の安寧をはかり、ある程度落ち着いてからポジティブな対処法に移行するのもよいでしょう。
後悔感度の一定の法則
どういうときにどのくらい後悔を感じるかにも個人差がありますが、一定の法則があることは研究から明らかになっています。例えば、やらなかった後悔はやった後悔よりも大きいうえに、やった後悔は時間経過とともに小さくなるのに対して、やらなかった後悔は時間経過とともに大きくなる傾向があります。
「やらない=現状維持」に強い理由は必要ないので、時間が経過するとやらなかった理由を思い出せなくなり、「なぜやらなかったのか」と後悔してしまうのです。
ほかにも、最良を追求するマキシマイザー型の人は、常に現状をよりよいものと比較してしまいます。満足できればほどほどでよいと感じるサティスファイサー型の人よりも後悔しやすいと考えられています。
後悔の少ない生き方をするためには、こうした法則を念頭に置き、自分自身の傾向を把握することが必要です。
「自分はいつも後回しにして結局やらずじまいで後悔するから、今回は思い切ってすぐに挑戦してみよう。」また「これまでは完璧主義者だったけど、本当はこれぐらいでいいのかもしれない」など、普段とは逆の視点から物事を見ることで、新しい学びを得ることができるはずです。
「最近やる気がでない」「何をやっても認められず、やるだけ無駄と思う」……こうした訴えをよく耳にします。
現在「やる気がない」という人も、かつては希望に溢れて入社してきたはずです。あなたは、なぜ、いつの間にやる気を失ってしまったのでしょうか?それは、自主性や発言を却下され続けた結果、(どうせうちの会社(自分)は、何も変わらない」「努力しても無駄」の精神が身についてしまったためかもしれません。
自己効力感の強化
無力感の打破を自己効力感といいます。「自分にはできる」「この会社でなら挑戦できる」という気持ちが高まっている状態を指します。「どんどん挑戦していいんだ!」「この取り組みは素晴しいことなんだ!」と積極性を肯定されることが、自己効力感を高め、やる気を取り戻してくれるのです。
「自己効力感」をもたらすのは、
A.「成功体験」小さくてもいいので、成功体験を積み重ねていくこと。
B.「代理体験」=先輩やロールモデルなど、他者の成功体験を聞くなど、疑似体験する。
C.「言語体験」=第三者から言葉がけや説得、励ましなどを受ける。
D.「良好な生理状態」=睡眠が十分で過度な緊張やストレスのない良好な職場環境を整える。 以上4点です。
名経営者の言葉を引用
以上を一度に叶えてくれるのが、成功体験を幾度となく経験した名経営者たちの言葉ではないでしょうか。「どんどん挑戦しよう!「一緒に頑張っていこう!」と背中を押し、「私もそんなふうに頑張っていいんだ」とやる気を底上げしてくれます。
「名言」が私たちの胸を打つのは、その言葉で心に「気づき」が生まれ、自分の中で「一人対話」が始まるからです。「悩みの解決の糸口を発見できた」あるいは、「薄々感じていたことが、この言葉で確信が持てた」など、名言は個人の内面に、「発見と内省の機会」を与え、自己効力感を高めます。
部下やチームメートのモチベーションをマネジメントする際は、名経営者の言葉を引き合いに出して、自分自身の心にも響いた言葉を引用したら相手に響くでしょう。「自分自身も過去にこの言葉で救われた」。
もしくは「彼ならこの言葉に何かを感じるのでは」という前提が必要です。 ただし、私のことを理解してくれたうえで言ってくれているんだと相手が捉えなければ、名言もただの押し付けになります。
そのためには、相手が日頃何を考え、どんな価値観を持ちライフプランを描いているかの理解も大切です。今、職場で求められているのは、上司からの[指示]ではなく「対話」です。
相手を単なる「人材」ではなく、ひとりひとり異なる人生観を持つ「個人」として尊重する意識しなければなりません。
その点を踏まえたうえで、ときに名経営者の言葉を用いて、ときに日常的に「元気?」と雑談を交わせ、そのライフ・キャリアプランを真剣に考えてこそ、「名言」はモチベーションを上げるトリガーになるでしょう。
参考文献:『PRESIDENT 22/09/30号』