目標を立てる意図

パーパス経営は、企業の経営理念として自社の存在意義を明確にしてどのように貢献していくのかという「パーパス」を掲げることです。

パーパス(purpose)とは「目的・意図・意思」などの意味をもち、そこから「存在意義」や「志」などの考え方に広がりました。 似たものに「ミッション」「ビジョン」などがあります。これらは未来に向けた実現すべき姿であるのに対し、パーパスは己の存在価値を主張している点が異なります。

現代の社会では、すべての企業に社会的課題解決への貢献が求められています。どのように貢献するのか、その企業が存在することが社会にどう役立っているかを対外的に明示するものが企業のパーパスなのです。

消費者心理としても、社会的に存在価値の高いパーパスを重視している企業の商品、サービスを利用することで社会に貢献できるため、支持する消費者が増えています。

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留守番話から

アメリカ人の著述家、デリー・ピアースは、ある日、仕事仲間のゲイリーに電話をかけた。 「はい、ゲイリーです。これはただの留守番電話ではありません。 

いまからあなたにふたつ質問をします。1つ目、『あなたは誰ですか?』。そして2つ目、『あなたは何がしたいのですか?』」 またゲイリーの声が続く。 

「なんてつまらないことを訊くんだと思うあなた。95%の人は、どちらかひとつの質問の答えさえ、一生かけても見つけられないって覚えておいてくださいね。」 

「あなたは誰ですか?」と訊かれたら、あなたはどう答えるだろう? たいていの人は名前と職業を言うだろう。 

そのような表面的なことだけを聞いても、その人の本質は何もわからない。けれどもそういう答え方をされたからといって、腹を立ててはいけない。そもそも自分のアイデンティティをたったひとつのフレーズにまとめろと言うほうが無理な話だ。

 目標そのものがなければ、達成することはできない

次に、「あなたは何がしたいのですか?」という2つ目の質問はどうだろう? 1つ目とは違い、この質問にならば答えが出せる。というよりむしろ、この質問に答えることは意味がある。 なぜならこれは、人生の目標を問う質問だからだ。「人生の意義」といいかえてもいい。 

だが、「意義」とは意味の広い曖昧な言葉だ。「人生の意義」の答えを見つけようとするときは、まず「人生の大きな意義」と「人生の小さな意義」を区別して考えよう。 

[人生の大きな意義]を見つけるには、「私たちはなぜこの世に生まれてきたのか?」「私たちはなぜ存在するのか?」「そもそも、この世とは何か?」という問いの答えを探さなくてはならない。 キリスト教では、神は6日かけて世界をつくり、最後の審判の日に世界は終わると言われている。 

だが神話の世界と違って、科学の世界では「人生の大きな意義」の答えは見つけられていない。 だから、最初の質問と同じように、「人生の大きな意義」の答えを探すのはやめたほうがいい。時間を無駄にするだけだ。 

だがそれに対して、「人生の小さな意義」の答えを見つけるのは大事だ。「人生の小さな意義」とは、あなたの個人的な目標、あなたが意欲的になれることや、あなたがすべきことを意味する。ゲイリーの留守番電話にあった2つ目の質問がこれに当たる。個人的な目標がなければよい人生にはならない。 

古代ローマの哲学者、セネカはすでに2000年前に次のように言っている。「すべての行動は、ひとつの目標に向けられていなければならない。そのためには、常にその目標をしっかり見据えておくことだ」。

目標を達成できるとは限らないが、はじめから目標そのものがなければ何も達成できない。「人生の目標」の意味はきわめて大きい。

幸福度は「目標を達成できたかどうか」で決まる

   アメリカの研究チームが行った、こんな調査がある。 17歳と18歳の学生に「経済的な成功をどのくらい重視するか」と質問し、「(a)重要ではない」「(b)少しは重要」「(c)非常に重要」「(d)経済的な成功は不可欠」の4つから選んでもらう。

そして数10年後に、その学生たちが実際に得ている「収入」と人生に対する「幸福度」を調べた。その結果、確認できた事実がふたつあった。

第1は、若い頃に経済的な成功を重視していた人のほうが、数10年後の所得額が多かった。つまり、目標の有効性が裏づけられたのだ! 心理学者だけはこの結果に驚いた。

第2の事実は、社会に出たら高収入を稼ごうと若い頃に目標を立て、のちにその目標を達成した人は、人生に対する満足度も非常に高かった。 一方、同じように金銭面をとても重視していたにもかかわらず、経済的な成功を得られなかった人たちは人生に大きな不満を抱えていた。

この結果は当然だと思うだろう。「お金があれば幸せになれるに決まってるじゃないか。」と。  だが、彼らの「幸福度の高さ」は「所得の高さ」によるものではないのだ。つまり、人が幸せを感じるかどうかは所得の額によって決まるのではなく、目標を達成できたかどうかで決まるのである。

どうして、「目標」がこれほど大きな意味を持つのだろう? なぜなら、目標を持っている人は、持っていない人より、目標達成のために努力しようとする。

人生には、無数の分かれ道がある。分岐点に差しかかるたびに、目標があれば、それに適した道を選ぶことができる。正しい決断を下しやすくなるからだろう。

参考文献:『Think clearly』 ロルフ・ドベリー 著 サンマーク出版    

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