不確実性の時代に・・

 デジタルが主流となる現代において会社のスピード感は大きな武器となっています。そのため、会社のスピードに対応できる「適応力」をもつ人材が求められています。

適応力とは、環境に合わせ行動や考え方を上手く切り替えることを言います。柔軟性がある人は、決まりに縛られることがありません。その場その場に応じて、臨機応変に適切な処理ができます。

完璧な計画を立案できても、物事が100%そのとおりに進む事はほとんどありえません。事前に考えられる「悪い結果」に対して、予測だけでなく、その回避方法も考えておかなければなりません。

柔軟性がなくては、世の中の変化や急な事態に対処していくことができません。人間関係などにおいても、柔軟性のなさがトラブルの源になることは珍しくありません。仕事も同じです。頑固な考え方やこだわりが、時として大きな障壁になっています。

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柔軟に修正しよう

飛行機が「予定ルート」を飛んでいる割合とは? ちょっと想像してみてほしい。あなたはいま、成田発ニューヨーク行きの飛行機に乗っているところだ。飛行中、機体が予定されたルート上を飛んでいるのは、飛行時間全体のどのくらいの割合だと思いますか?

飛行時間全体の90パーセント?80パーセント?それとも70パーセント?正解は、なんと、「ゼロパーセント」らしい。 飛行機の窓際の席に座って翼のふちのあたりを見ていると、「補助翼」がしきりに動いているのがわかる。

補助翼の役割は、飛行ルートを絶えず修正することにある。自動操縦装置は、毎秒何回も予定位置と現在位置とのずれを感知し、舵の役目を果たす翼に修正指令を出している。車の運転も同じだ。一直線にのびる高速道路を運転しているときでさえ、ハンドルから手を離せば車は車線を逸脱し、事故を起こしかねない。

同じことは、私たちの人生にも当てはまる。しかし、私たちの理想は、飛行機や車と違って予測や計画どおりに進むスムーズな人生だ。 そのために私たちは、せめて最適な前提条件をそろえておこうと「最初の設定づくり」に精を出す。

職業教育も、キャリアも、恋人や家族との生活も、すべてにおいて最初に完壁な条件を整えたがる。なんとかして計画どおりに目的地にたどり着けるように。

だが、現実は物事がうまく運ぶことなどほとんどない。人生は常に乱気流の中にあって、私たちはありとあらゆる種類の横風や、予想外の急激な天候の変化と闘わねばならないのだ。

重要なのは「スタート」ではなく、「修正技術」

飛行機を操縦するとき、重要なのは、「スタート」ではなく、「離陸直後からの修正」技術だということだ。 自然は、そのことを10億年も前から知っている。細胞分裂のときには、遺伝物質の複製エラーがたびたび起こる。

そのため、どの細胞にも、こうした複製エラーをのちのちに修復するための分子が内包されている。 このいわゆるDNA修復の機能がなければ、私たちは癌ができたらほんの数時間で死んでしまうだろう。

「修正」は、私たちの免疫システムにおいても重要な意味を持っている。 免疫システムには、マスタープランはない。なぜなら、排除すべき外敵を前もって予測しておくことは不可能だからだ。悪性のウイルスやバクテリアは何度も突然変異をくり返すので、常に排除方法を修正していかなければ体を防御できない。

例えば、あなたが、誰が見てもお似合いの非の打ちどころのないカップルの結婚生活が破綻したと耳にする。さほど驚く必要はない。明らかに「はじめの条件設定」を重視しすぎた失敗例だからだ。

誰かと5分間でもパートナーになってみた経験のある人なら、わかるだろう。常に微調整や修正をくり返さなければ、パートナー関係はうまくいくものではない。どんな関係にも、メンテナンスは必要なのだ。

よい人生とは「一定の決まった状態を指す」と思っている人が多いが、それは間違いなのだ。修正をくり返した後に、手に入れられるものごとでも「計画通り」に運ぶことなどありません。

例外的に修正なしで計画が実現できたとしても、それはまったくの偶然にすぎない。 米軍の司令官で、のちに大統領にもなったドワイト・アイゼンハワーはこんなことを言っている。「計画そのものに価値はない。

計画しつづけることに意味があるのだ」大事なのは「完壁な計画を立てること」ではなく、「状況に合わせて何度でも計画に変更を加えること。変更作業に終わりはない。どんな計画も、遅くとも自国の軍隊が敵とぶつかる頃には通用しなくなってしまう」と、アイゼンハワーにはわかっていたのだ。

「修正する力」は、民主主義の基盤をなすものだ。最初から適切なシステムではなく(もちろん"理想的な条件設定"のためであるが)、そのつど修正をほどこしながら、流血の惨事を引き起こさずに、不適切な案件排除していく。さまざまな社会体制が存在するが、修正メカニズムが組み込まれているのは民主主義だけだ。

早いうちに軌道修正した人こそ、うまくいく

勉強し、学位を取得しているうちに、人生で重要なのはできるだけ高い学歴を手に入れ、できるだけよい条件で社会人生活をスタートさせることだと思い込まされてしまう。実際には、学位と職業的な成功の関連性はどんどん弱くなる一方なのだが。

反対に、ものごとを修正できる力の需要は高まっているのに、修正する力を学校で身につけられる機会はほとんどない。

人格を形成するうえでも、「修正力」は欠かせない。その人が賢くなった理由は、生まれのよさや、模範的な家庭や、一流の教育といった条件がそろっていたためではない。つまり、自分の欠点を克服したり、自分に足りないところを補ったりしつづけた修正の努力の結果である。 

長い時間をかけて完壁な条件設定をつくりあげ、計画がうまくいくのをいたずらに待ちつづける人より、早いうちに軌道修正した人は得るものが大きい。理想的な職業教育など存在しない。人生の目的地も、ひとつだけとは限らない。

完壁な企業戦術や、最適な株式ポートフォリオもなければ、唯一無二の適職というのもありえない。すべて空想の産物だ。何ごともある条件のもとでスタートさせ、それが進んでいく過程で持続的に調整をほどこすのが、正しいやり方である。

我々は、何かを修正をしたり見直したりすることに、「抵抗」がある。 それは、どんな些細な修正も「計画が間違っていたことの証拠」のように思えるからだ。 つまり、「修正」に抱いている悪いイメージを、私たちは断ち切らねばならない。

参考文献:『Think clearly』 ロルフ・ドベリ 著 サンマーク出版

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