■人生を豊かに・・
さて、人とのコミュニケーションをとるときや、仕事において企画を考えたり、アイデアを生み出そうとする時、まだ形にされていない目に見えないものを思い描きます。 一方で、物事がうまく進まないとき、「想定外」という言い方をします。プラスの面だけでなくマイナス面にも想いを巡らせ、予め危険を避けようと努力します。
多くの人と関わりながらより良い選択をし、人生を豊かに過ごすために、「想像力」は欠かせません。 「想像力」を高めようとする時、自分の中にある常識や普通という感覚は邪魔になります。まずは「普通は〜でしょう」という言葉をやめることからです。
そして、自分が思っている常識や普通という感覚を疑ってみましょう。「本当にそうだろうか」という疑問を持つことで新たな視点が生まれることでしょう。
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創造力より想像力
岐路に立つ日本の今後の発展のためには、イノベーションを起こす「創造力」ある人材が必要だという声は聞いても、「想像力」のほうはあまり聞きません。創造力は、新しい価値を生み出す力を意味します。たとえば、既存の発想にとらわれず、課題に対して新しい解決法を見つけ出すことです。
「想像力」はというと、別に何かを生み出すわけでもない、すでにあるものをなぞるだけのことだと思われているからかもしれません。「創造力」は苦手だが、「想像力」のほうならだいじょうぶ、と自信を持っている人が多いようです。
日常生活あるいは、仕事上の失敗を重ねていくなかで、少なくとも仕事の実務においては、創造力より想像力のほうがずっと大事だと言えます。
想像力が欠如すると
「想像力」をおろそかにしますと、何かとトラブルに見舞われます。 たとえば、予定した仕事が期日を過ぎてもできてこない、依頼した提案書が意図に合ったものになっていない等々。
その原因はというと、「なんで、そんなこと、最初から予想できなかったの?」「どうして、最初にひとこと、言っておかなかったの?」等々、ちょっと「想像力」を働かせれば、すんだはずのことがほとんどでしょう。
仕事が速い、それこそ「生産性の高い」人というのは、そのあたり、自然に気を配ったり、常に「万一の場合」や「最悪の場合」に備えて、二の矢、三の矢を用意しています。だから、トラブルも少ないし、万一うまくいかなかったときも、慌てずすぐに次の手が打てます。つまり、的確に「想像力」を駆使しているのです。
家庭、恋愛においてもとくに人間関係については、想像力がすべて、と言ってもいいかもしれません。仕事の能力というのは案外、この程度の想像の積み重ねで、差がついていくものです。
相手の事情、相手の気持ちを「想像」します。いわゆる「相手の立場に立って」ということです。わたしたちは、「自意識」によって、自分を中心に世界を見て、解釈しているわけですが、他者もまた、その人自身の「自意識」により、自身の世界を見ているわけです。
「その世界が必ずしも、自分自身が見ている世界と同じであるとは限らない」ということを想像できるかどうかです。
愛とは想像力
「なぜ、その仕事を受けなければいけないの?」「だって、わたしがそれをしてほしいから」「そういうことを言われるのは心外だ」「そういうつもりで言ったんじゃない」との会話は、要するにこれらは、「愛」の欠如だと思われます。
「自分だったらこうだけど、あなただったらきっと…」「あの人だったらそりゃあもう…」「その人だったらもしかすると…」と気持ちの先回りをします。
マナーや論理的思考力の問題ではなく、愛の問題です。 それがないと、つまり、愛とは、相手の自己中心性を想像することです。
とすると、世の中から想像力が欠如しているというのは、愛が欠如しているということなのかもしれません。
多様な視点を持つ
ある時代をある環境の中で生きてきた、特定の属性を持つ自分の視点がすべてあって、異性がどう思っているか、他人が自分をどう思っているかに対する想像力が圧倒的に欠けている人がいます。
こうしたいわゆる「自己中心的」なものの見方は、ピアジェの発達心理学によると、二歳から七歳の幼児に見られる「自己中心性」と同じです。たとえば、かくれんぼで、穴に顔だけ突っ込んで、背中は丸見えなのに、隠れたつもりになっている状況と、変わらないそうです。
「多様な視点を持つ」「多様な価値観があることを受け入れる」等が大切です。様々な角度から事象を観察することで、仕事の成果に繋がり、趣味の幅が広がったりして、人生が豊かになり有意義な人生を送れることができるでしょう。
参考文献:『楽しくなければ、仕事じゃない』 千場弓子 著 東洋経済新報社