幸せに働くには・・

 ある調査から、アメリカでエンゲージメント(意欲や愛着、一体感など)を持っている労働者は30%にとどまっています。職場にしっかりと、「心と頭でコミットしている」人は少ないようです。

あまりに多くの人々が、自分の周囲で何が起きているかを気にもかけていません。職場が嫌いで幸福を感じていない人は、一緒に働いていても気持ちがいい相手ではなく、価値貢献も乏しく、組織に著しくマイナスの影響を与えます。

リーダーがそうである場合は、その態度を他者に伝染させるため、さらに厄介です。彼らの感情と考え方が、他者の心理状態や仕事ぶりに大きく影響を及ぼします。私たちの感情のあり方は、思考のあり方と連動しています。

つまり、思考は感情に影響し、感情は思考に影響します。そこで、仕事と同僚に対してエンゲージメントを持っている人は、より懸命に、そしてより賢明に働きます。幸福な人ほど有能な働き手であるということです。

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些細なことの積み重ねが、幸せの糸口に

毎日、ささやかな良いことが十数回起こる人は、本当に驚くほど素晴らしいことが一回だけ起こる人よりも幸せである可能性が高いのです。

だから、楽な靴に履き替えたり、奥さんとハグをしたり、フライドポテトを一本こっそりつまみ食いしたりしてみてください。些細なことのように聞こえ、実際に些細なことです。しかし、その些細なことが大事です。

私たちは、一つか二つの大きな出来事が深い影響を与えると想像しがちですが、幸福は無数の小さな出来事の総和なのです。 幸福を実現するには、ダイエットと同じ取り組み方が必要になります。痩せたい人は一瞬で成果が出る魔法の薬をほしがりますが、そんなものはあるはずがありません。

食べる量を減らし、もっと運動することです。食べる量を一気に減らしたり、運動量を一気に増やしたりする必要はありません。一貫して続ければよいだけです。そのうちに結果が出てきます。

幸福も同じです。幸福度を高めるためにできることは、わかりきった些細なことで、大して時間もかかりません。ただし、毎日続けて成果が出てくるのを待たなければなりません。

幸福度を高めるために

些細な積み重ねとしては、瞑想する、運動する、十分な睡眠を取るというように、いくつかの単純な行動を励行することです。

そして、利他主義を実践することです。他人を助けることは、自分にできる最も利己的なことの一つです。たとえば.ホームレス用シェルターでボランティアをしてみてください。ホームレスの助けになるかどうかはさておき、ほぼ確実に自分自身の助けになります。

それから、人脈を広げること。週2回、感謝したいことを3つ書き出し、その理由を誰かに話しましょう。

幸福は誤解されている

幸福についての誤解の一つは、いつも陽気で、喜び、満足しているのが幸福な人だという考えです。いつも笑顔でいる人が幸福な人だと考えられています。でも、そうとも限りません。

悪い事態のなかに良いことを見出し、悪い事態を別の見方で見るような生き方によって実現するのが幸せで豊かな人生だと思います。

ハーバード大学の研究者ジョルディ・クォドバックによる「感情多様性と感情エコシステム」と題する最近の研究で、ポジティブなものも、ネガティブなものも含めて幅広い感情を経験することが心身両面の満足感につながっていることが明らかになっています。

つまり、私たちは幸福とは何であるかを誤解しているだけでなく、間違った方法でそれを追い求める傾向があるようです。幸福ビジネスが犯している最大の考え違いは、幸福を手段ではなく目的にして、望みのものを得たら幸せになれると考えていることです。

しかし実際の脳の働きは逆で、目標を達成してしまうと幸福感が低減することが判明しています。

私たちは"幸福であること"を最終的なゴールと見なしがちですが、本当に重要なのはそこに至るプロセスであることを忘れています。何をしている時がいちばん幸せかを発見し、その活動に定期的に関わることで、私たちは充実した人生を送ることができるのです。

言い換えれば、幸福を追い求めている限り、幸せになれないということです。幸せになれるのは、幸せになりたいという思いを忘れている時です。やりがいのある仕事に没頭してその瞬間を楽しんでいる時、高い目標を目指して努力している時、助けを必要としている人のために働いている時、私たちは最高の幸せを感じることができます。

健全なポジティブ思考は、真の感情を別の何かで塗りつぶすものではありません。困難や苦しみがなければ幸福ではなく、逆境を跳ね返す能力のなかに幸福があります。幸福は喜びや恍惚感とも違い、充足感や満足感、そしてさまざまな幅広い感情を味わえる心の柔らかさのなかに存在するのです。

「有意義な仕事」の進捗を

モチベーションを高めるためのカギは「有意義な仕事」の進捗を支援することです。これまでで、退屈だった仕事を考えてみましょう。多くの人は10代の頃に初めての仕事、たとえば、レストランでの鍋洗いや、美術館でコートを預かる係だとしましょう。

どれだけ一生懸命働いても、洗う鍋や預かるコートが尽きることはありません。達成感が生まれるのは、1日の終わりにタイムカードを押すとき、一週間の終わりに給料をもらう時です。単なる仕事の遂行、業務を完了するだけで、この残念な事実を仕事のうえで経験されたことかもしません。

プロジェクトなどで一生懸命働いて仕事を終えたのに、やる気が出ず、評価されず、欲求不満がたまるとう経験もあったかもしれません。 良好なインナーワークライフ(感情・モチベーション・認識の相互作用し、仕事そのものから得られる満足度)は達成されなかったかもしれません。

考えられる原因は、やり終えたその仕事をあなたが重要視していないことです。進捗の法則が働くには、仕事がそれをする人にとって有意義なものでなければなりません。

1983年、スティーブ・ジョブズはジョン・スカリーを、ペプシコでの輝かしいキャリアを捨ててアップルの新しいCEOになるよう、口説きました。

ジョブズは「このまま商品を売っていたいですか。それとも世界を変えるチャンスを手にしたいですか」と尋ねました。 これは心理的に強烈な力を利用した言葉です。つまり、人間には有意義な仕事をしたいという根深い欲求があります。

有意義な仕事とは、一般大衆に最初のPCを普及させることでなくでもなく、貧困の軽減や、がんの治療促進でもなくて、社会にとっての重要性がそこまで高くない仕事でもいいのです。働き手にとって重要な何か、もしくは誰かに価値を提供することができれば、十分意義があります。

それは、顧客のために高品質で役に立つ製品をつくること、地域社会に真のサービスを提供すること、同僚を支援すること、生産プロセスの非効率を減らして会社の利益を増やすこと等々でもかまわないのです。

目標が高かろうが控えめであろうが、それが仕事をする人にとって有意義である限り、またその人の努力がそれにどう貢献するかがはっきりしている限り、目標へ向けての進捗は、インナーワークライフを活性化できます。

適度に挑戦しがいがあるとき

困難ではあるが、手が届かなくもない目標を達成しようとしている時に、人は最も幸福であることがわかっています。挑戦と脅威は同じことではありません。人は挑戦を受ければ活気づき、脅かされれば萎縮します。

もちろん、脅かして結果を出させることもできます。「金曜日までにこれができなければ、クビだ」と言えば、おそらく金曜日までにやるでしょう。しかし、それ以降、その人はあなたの足を引っ張ろうとし、組織に何ら忠誠心を抱かず、やらなければならないこと以上は何もしなくなるでしょう。

「ほとんどの人は、金曜日までにこれをするのは無理だと思うけれど、君ならできると絶対信じているよ。チーム全体にとっても、とても略重要なことなんだ」と、部下に告げたほうがずっと効果的です。

心理学者は一世紀にわたって報酬と処罰について研究してきましたが、その結果はこの上なく明瞭です。報酬のほうが効くのです。 つまり、挑戦は人々を幸福にするのです。

参考文献:『幸福学』 ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 編

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