つながり意識を・・・

さて、仏教では、自利利他を強調します。それは自分のポテンシャルを引き上げ、他者とともにつくり上げていく生き方です。

つながり意識や関係性の縁起の理念が健全思考(安定して穏やかな感情)を後押しします。 そして、すべての現象は、無数の原因や条件が相互に関係しあって成立しているものです。

たとえば、「ご縁がありますね。」「・・・のご縁によって」など使われますが、このとき、実は人々の心情やスピリチュアリティが、ときには内在的に時には全体的として躍動的に動いています。

スピリチュアリティとは、ダイナミックな命の活動性や関係性を意味します。人が自己のスピリチュアリティに気づき、他者や環境との調和を図りながら、成熟してすべての存在に融合しようとする営みは、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)そのものです。

これは、病気や障害、人生の課題に直面したときだけスピリチュアリティが働くのではなく、人間存在そのもとにスピリチュアリティが内在し、成長し続けています

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祈ることで心は穏やかに

理由のわからない気分の落ち込みを感じたり、何かにすがらなけれぽ耐えられないと感じたときには、神社仏閣や教会などに足を運んで祈ります。 「祈る」というと、特殊なことを強いられる気がするかもしれませんが、そんなにことはありません。

というのも、誰でもいろいろと日常的に祈っているのではありませんか。お子さま、孫が受験の際には、近くの社寺へ行って「どうか合格しますように」と手を合わせたことがあるでしょうし、肉親や親しい人が病気にかかったときには「早く治りますように」と祈ります。

よくいわれますが、日本人は不思議な民族で、お正月には初詣へ行って柏手を打ち、夏休みには盆踊りを踊り、ハロウィンでは仮装して楽しみ、クリスマスにはプレゼントを交わします。

神道、仏教、古代ケルト信仰、キリスト教のいいとこ取りをしているわけですが、神仏を信じている人の割合となると3割を切っているそうです。信心深い人からすると、「都合のいいときだけ祈るなんて、ムシがよすぎる」と感じるかもしれません。

実は、祈りには現実的な効能があることがわかってきました。祈ることで脳の緊張がとれ、気持ちにゆとりが出て、実力を発揮しやすくなるそうです。

また、「ありがとう」という感謝の言葉を口にすることも、感情を平穏に保つ効果があるとされています。家族の誰かが新聞を取ってきてくれたときに「ありがとう」と言えば、直前に嫌なことがあったとしても表情が柔らかくなるはずです。もちろん、「ありがとう」と口にした本人も、穏やかな気持ちになれるでしょう。

作り笑いで運を

中国のことわざ「笑一若感一老」です。これは、「一回笑えばそれだけ若くなる。一回怒ると、そのぶん老いてしまう」という意味。つまり、しかめっ面ではなく、笑顔で過ごしたほうが若々しくいられるというのです。

このことわざが示している通り、笑いが心身にとてもよい影響を与えることが医学的に証明されています。ガンさえもやっつけることができる、とても頼りがいのあるNK細胞が、笑顔を心がけることで活性化することがわかったのです。

そこで、悩みや不安ばかり考えるのではなく、友人や趣味のことなどを考えて笑みを浮かべるようにしてほしいのです。

また、テレビのお笑い番組を「くだらない」と毛嫌いする人もいるようですが、お笑いの殿堂として有名な「なんばグランド花月」で行なわれた実験では、およそ8割のお客さんのNK細胞が鑑賞後に増加したという驚くべき結果が出ました。

私たちは「楽しいから笑う」と思っていますが、「笑っていると、不思議なことに楽しい気分になってくる」という心理もあります。だからこそ、「不安すぎて笑えない」という人は、まずは鏡を見て笑い顔を作る練習をしてほしいと思うのです。

感情の老化を防ぐボランティアのパワー

ボランティアの意味は「自らすすんで何かを行なうこと」で、単なる無報酬の奉仕活動ではありません。

たとえぽ「シルバー人材センター」に草刈りなどの作業をお願いすると、ある程度のお金がかかります。しかし、作業をする人はお金が目的で働いているわけではなく、「何か人のためになりたい」という気持ちで働いているわけで、これもボランティアです。

しかし、ボランティアをやっていると「ありがとう」とお礼を言われたり、心の底から感謝される機会を得ることができます。ボランティアをしている人の多くが若々しい心を持ち続けているのも、こうした言葉や気持ちを糧にできているからだと思うのです。

ただし、「ありがとうと言われたいからボランティアを始める」というのは本末転倒なことです。こんな動機では、相手の気持ちも自分の心も満足させることはできません。

感情の老化を防げるというのはあくまでも結果です。まずは「手伝わせてもらう」という意識で活動に集中してみてください。

すると気づいたときには、やりがいを実感できたり、自分の存在意義を感じられるようになっているものです。最終的にはその充実感が、少しのことでは揺さぶられない心を作ってくれるでしょう。このように、ボテンティアでしか得られないものも大いにあります。

物事の「いい面」に注目してラッキーだと思う

「どうせ」とか「ダメだ」という後ろ向きの言葉を使わないようにと話しましたが、言うまでもなく、こんな言葉を使っていたらとても笑顔にはなれません。 では、笑顔になれる言葉は何でしょうか。「ありがとう」「よかった」「ラッキー」という言葉だと思っています。

「ありがとう」という言葉がもたらす素晴らしい効能については、すでに紹介したので、ここでは「よかった」「ラッキー」について触れておきます。 大切なグラスを割ってしまったとしましょう。

こんなときはどうしても、「私はなんて不器用なんだろう」「ああ、もったいないことをしてしまった」などと嘆きがちです。あなたの大切なグラスをパートナーが割った場合には、腹を立てて怒鳴りつけてしまうかもしれません。

でも、いくら嘆いても怒鳴っても、割れてしまったグラスが元に戻るわけではありません。それなら、こんなふうに感情を波立たせてもしかたがないと思いませんか。

「ラッキー!これで新しいグラスを買える」「もっと高いグラスじゃなくてよかった」などと考えてみるのです。すると、大切なグラスを割ってしまったという失敗も幸運に思えてきて、笑いが浮かぶはずです。

穏やかな心を取り戻すための楽曲

介護の現場では、音楽療法に注目が集まっています。音楽を聴いたり、楽器の演奏をすると、認知症の予防や回復に効果があるだけではなく、嚥下障害(食べ物を誤って気管のほうへ送り込んでしまう)の予防や、肺機能の維持・向上にも効果があるとわかってきたのです。

もちろん、脳にもよい刺激になることは言うまでもありません。 イライラする、感情が波立っているというのは、脳がストレスに耐えきれなくなっている状態です。そういうときに音楽を聴くだけでも脳の働きはよくなり、感情が安定して、穏やかな心を取り戻せるはずです。

ただし、ひとくちに音楽といっても、ロックやポップスを大きな音で聴くと、かえって脳を疲れさせてしまうかもしれません。そこで、モーツァルトの楽曲を小さな音量で聴いてみてください。

なぜモーツァルトなのか。それは、モーツァルトの楽曲には「f分の1ゆらぎ」といわれる独特の音の波形が繰り返されるためです。f分の1ゆらぎとは、砂浜に寄せる波の音や川のせせらぎなどにみられる自然のリズムのことで、精神の昂りを抑える働きがあるとわかっています。

波の音や川のせせらぎを聴いていると、無心になり、心が落ち着きます。モーツァルトの曲を聴くと、これと同じ効果が得られるわけです。

ちなみに、乳牛にモーツァルトの曲を聴かせたところ、通常よりも多く乳を出したといいますし、造り酒屋の蔵でモーツァルトの曲を流したところ、通常よりもまろやかな味になったという話もあるほどです。

心が穏やかになるだけではなく、血圧が安定したり、自律神経のバランスまで整うと考えられています。

そこで、快適な社会生活を送るために、前述した各5つの事項を実践されることを推奨します。

参考文献:『シニアのための感情ストレッチ』 保坂 隆 著/祥伝社

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