よい心の状態に・・

仕事でも勉強でも、あるいは趣味や社会活動の場面において、ある期間一つのことに夢中になって没入した経験が誰にもあるはずです。 そのときは、報酬や見返りなどはまったく気にならずただ、そのことに没頭していることが何よりも楽しく、その時間が充実しています。人間にとってもっとも生産性の高い幸福感に満ちた精神状態のことです。

ではいったい、人間の幸せとは何なのか。 お金や家族があって、似たような環境でも、幸せな人とそうでない人がいるということは、環境そのものが幸せをもたらすのではなく、幸せを規定するかどうかを決定しているのは、ただ自分の心の持ちかたです。

そして、お金や家族、あるいは、地位や名声といったものは、幸せを喚起しやすい環境要因となり得るけれども、それのみで幸せを感じるわけではありません。それらを得ようとする過程、つまり、お金を儲けようと日々努力する過程に、家族を育むための育児や家事労働の過程に、地位や名声を得ようして働く日々の労働や社会活動等の過程において発生する精神状態に起因すると思われます。

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「ありがとう」と言えば

ご機嫌な心の状態を、いつでもどこでも自分でつくるための方法があります。「人間は脳と心の生き物です」。脳は「思考」の中枢です。心は、あなたの今の「状態」です。心の状態は「不機嫌」な方向へ向かうか、「ご機嫌」な方向へ向かうか、この二つのどちらかしかありません。

不機嫌なときにはイライラしたり、落ち込んだり、ストレスがかかったりします。そこで多くの人が考える解決方法といえば、酒を飲む、たばこを吸う、風呂に入るなどといった「行動のルーティン」に頼るわけです。しかし、勤務中に飲酒をしたり、入浴はできません。対処法としての限界があるわけです。

なぜ、人間が行動のルーティンに頼りたがるのかといえば、意識しない限り脳は「環境」「出来事」「他人」に関する情報を収集し、行動の内容を考え続けるからです。たとえば、雨が降ったら傘を差す、締め切りが迫っているから徹夜で仕事をするといった具合です。

対して、いつでもどこでも実践できるのが「思考のルーティン」です。 ご機嫌な状態をつくり出す脳のスキルを「ライフスキル」と呼んでいます。ライフスキルは従来の脳とは異なる新しい脳の使い方をするので「第2の脳」と言えます。最初にすべきは「機嫌がいいことの価値を考える」ことです。

たとえば、「機嫌がよければあなたはどうなりますか?」と自分に問いかけます。紙とペンを用意し、「何をやっても楽しくなる」「アイデアがわく」「飯がおいしくなる」など、思いつくことを書き出します。

目的は、ご機嫌な状態にあれば、いいことが次から次へと自分のところに寄ってくると確信すること。日々の習慣としてこれを実践します。 なぜなら、多くの人は意識しないと不機嫌になる行動をとってしまいます。

PDCAサイクルのように脳をフル稼働させてしまうからです。すると過去にこだわり、コントロールできない未来を心配するストレスだらけの生活を送るしかありません。

「今朝、人身事故で電車が2時間も遅れ最悪だった」といった話を午後になっても、帰宅しても引きずる。営業で顧客を訪問する前から「断られたらどうしよう」と不安に駆られる。ライフスキルは、このように過去に囚われたり、未来の出来事に暴走したりしている自分に気づくところから始まります。

人間はもともと一生懸命を楽しめる

そして「今に生きると考え」て、リセットする習慣をつけます。心をリセットする方法としては、「休日に家族と過ごす」など行動によるイベントが考えられますが、リセットするまでの時間がかかります。「今に生きる」と考える思考の習慣を持つことによって、いつでもリセットできるようトレーニングする必要があるのです。

まず「一生懸命が楽しい」と考えます。仕事を無理やり楽しめという意味ではありません。人間は一生懸命を楽しめる能力を持っています。 子供の頃、どろんこ遊びに夢中になったように。「一生懸命って楽しいよな」と考えれば、もともと持っている遺伝子がオン化されます。

まずは自分で自分の心をご機嫌にする力をライフスキルの中で「社会力」と呼んでいます。さまざま外部の状況や出来事が次から次へとやってくる社会の中で、自分らしく生きていく力という意味です。

第2は、周りの人もご機嫌な状態に導く「コーチ力」、第3は組織をご機嫌な状態に築きあげる「リーダー力」になります。ご機嫌な状態は自分だけにおさまらず、広く実現できれば、結局は自分のためにもなるのです。たとえば、人に接するときは、積極的に挨拶や「ありがどう」と口にするだけで、口にしている自分もご機嫌になるのです。

幸せな人の体ほど、よく動く

米カリフォルニア州立大学リバーサイド校のソニア・リュボミルスキ教授は、インタビューとアンケートという手法を用いてハピネス(幸福度)を定量化し、数字にしています。人の幸せに最も影響を与えているのは遺伝的性質で、全体の50%。一方、健康、お金、人間関係といった、一見幸福感を直接左右していそうな環境要因は、わずか10%でしかありません。

では、残りの40%は何かと言うと、それは日々の習慣や行動です。行動の結果うまくいったかどうかは関係ありません。積極的に行動を起こす、そのこと自体が幸福感を高めるのです。そして、行動を起こすかどうかは自分で制御できます。こう言うと日本ではすぐに、やる気やモチベーションの議論になりますが、そんなものに関係なく行動を始める環境をつくればいいのです。

また、幸福度の高い人はそうでない人に比べ、仕事の生産性が平均で約37%高く、創造性は300%も高いという結果も出ています。ここでも重要なのは、仕事ができてクリエーティブだと、評価が高まったり収入が増えたりして幸せ感が高まるのではなく、普段から幸せを感じている人ほど、仕事のパフォーマンスが高く、創造的だということです。

ある企業の研究開発プロジェクトに集まった技術者たちに、名札型のウエアラブルセンサーを装着してもらって、仕事中の内面の変化と体の動きを同時に測定しました。すると、幸福度と身体活動の総量との間には、強い相関関係があるということがはっきりしました。予想どおり、幸せな人の体ほど、よく動いていたのです。

たとえば、「積極的に業務の問題解決に取り組んでいるか」という質問に対し点数の高かった人は、会話のときの運動量も多いという傾向がありました。問題が発生したとき何とか解決しようとすれば、会話も熱を帯び、体の動きも活発になるからです。

反対に、問題と正面から向き合わず先送りしたり、誰かが何とかしてくれるだろうと放置したのでは、熱い会話が少ないので運動量も必然的に少なくなり、こういう人が仕事ができるかといったら、推して知るべしでしょう。

自分を伸ばす「少し上」の課題

米クレモント大学のミハイル・チクセントミハイ教授は、仕事やスポーツで高いパフォーマンスを上げている人たちを研究しました。すると、「時間の過ぎるのを忘れる」「自分と周りが一体化する」「自分の思うように対象をコントロールしている」といった共通の状態を彼らが体験していることが判明しました。。

これを「フロー状態」と名づけ、目の前の行為をやりがいのあるものと感じ、自分の能力を最大限に発揮しています。日常生活や仕事中にこのフロー状態を体験する頻度が多いほど、幸福感が高いのは言うまでもありません。では、どういう状況に置かれると人はフロー状態に入りやすいのでしょうか。自分の能力より少し上の課題にチャレンジしているときです。。

課題が難しすぎると無力感にさいなまれて集中できないし、逆に簡単で余裕がありすぎると飽きてしまいます。ミスをするのが嫌で、できることしかやらないというのを習い性にしている人は、知らぬ間に自分を幸福から遠ざけているという事実に気づくべきです。。

フロー状態と相関性の高い身体運動の指標は、継続性です。やや、速めの身体運動を継続する傾向が強い人ほど、プロー状態になりやすく、体の継続的な速い動きが、目の前の行為への集中を深めていきます。集中する人は体が継続的に速く動くことの両方を意味します。。

いずれにせよ、仕事や生活においてより多くのフローを経験している人は、身体運動の継続性が高いのは明らかです。体を継続的かつ速く動かせる状況を意図的につくることで、幸福感や充実感を得る機会を増やすことは充分期待できます。。

身体運動は人から人へ伝わります。職場おける身体運動の連鎖が活発になれば、全体のハピネスも向上し、生産性も高まります。。

身体運動の連鎖を起こりやすくするには、従業員に適度な休憩時間を与えて、心身ともにリラックスさせることです。

上司や監督暑が部下に対し的確に声掛けをすることが効果的であり、そうすることによって業績が上がるということも、実験で確認されています。従業員の幸福度をいかにして高めるか。今後はこれが最大の経営課題になると思っています。

参考文献:『 PRESIDENT 』 2018..7.16号 プレジデント社

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