仕事を楽しむ

誰しもが仕事を楽しみたいと思っています。興味ある趣味の分野では、時間を忘れて没頭します。他人に指示されるのではなく、自ら選択し、自律的に行動を起こしています。そして、それを達成できる自信をもっているでしょう。

夢中になって仕事に集中しているときはハイパフォーマンスで、より目標も達成できることは、心理学的に証明されています。

会社などの仕事の取組みも、趣味のような感覚で従事したいものです。 仕事を楽しくするための条件は「変化に富む」、「適切で柔軟な挑戦」、「明確な目的」、「直接的なフィードバック」等と言われています。

楽しく仕事できる環境を整えることが重要になります。そうすれば、人々は自主的に意欲をだし、仕事に挑戦する能力を発揮し、期待以上の成果が生まれます。 結果、業績も自然に向上していくことでしょう。

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進んで仕事を行う

進んで仕事をやろう。そのように思い至るには、「有能」と「自律」という感覚を自覚しながらおこない続ける必要があるといわれている。

もし、自分が有能であるという感覚をもっていないとすれば、仕事をすすんでやろうという気分になることは少ない。はっきりした自信を持っていなければ、すすんで仕事に取り組もうという気分にはなれない。

自分が不得手なことは、なかなか気がすすまないものである。 たとえば、日本野球界のミスターベースボールと称される長嶋茂雄は、「ぼくは、小さいころから足は速かったですよ。今みたいにこんなに背は高くなかったけれども、足だけは速かったですね。運動会で負けたことはなかったです。

いつも学校対抗なんかに出されて、それですぐ調子に乗っちゃっていた。「いま思えば、勉強ができるより、できないでよかったと思いますね。それだけ、自分の好きな道に純粋に打ち込めたとおもいます」と回想している。

足が速かったという長嶋氏の有能さは、彼の仕事である野球選手へとつながっていったのである。このように有能さにもとづいて仕事をおこなうことは、ものごとをすすんでおこなうための原点ともいえるだろう。

次に、自分ですすんで仕事をやろうと思うのは、「自分で選択したのだ。」という自律的な感覚が必要となる。というのも、誰かの指示にしたがっておこなう仕事では、どうにも燃えたぎるようなやる気は長く続かないからである。

自分で仕事を選択したという自律的な感覚がある場合には、その選択になんらかの責任を感じ、その仕事をどうしても行なわなければならないといった意欲が芽生えてくる。

再度、野球の例をあげてみる。偉大なキャッチャーといえる野村克也は、「あんなに面白いポジションはない。一球一球、打者の構えから彼の狙いを読み、ピッチャーの球筋を考え、野手の動きを指示する。一瞬の間にやってのけるその判断の積み重ねが、ゲームの結果に現れる。

うまくいって勝った時の爽やかさは、捕手冥利につきますわ。」と述べている。判断の積み重ねという自律的なおこないに、自らが選択し決定し、仕事をすすんでやろうとするための重要なヒントが見える。

有能と自律を支える自覚

有能な人であっても、自分自身を有能だと自覚していないかぎり、意欲が高まってこない。逆に、さほど有能ではない人であっても、自身が有能であると思い込んでいる場合には、意欲にみちあふれていることもある。自分自身の有能さの自覚は、意欲を引き出すための大きな要素となる。自分自身を信じることができる人は、前向きに仕事ができるといえるのである。

同様に、自律についてもそれを自覚しているかいないかが、重要になってくる。自分が自律して行動していることを自覚しているほど、自らすすんで仕事をしようという意欲が高まっていく。

自分で仕事を選択した人は、意欲的に働けるものである。仕事をやり遂げるという決心は、意欲的に働くだめの重要な要因なのである。

逆に、他人からいわれるがまま、仕方なく仕事を選択したと自覚している場合は、仕事への意欲を持続するのが難しいにちがいない。やらされ感にまみれてやる仕事は、長続きはしない。このように、自律的な感覚を自覚することは、すすんで仕事をしようとするための不可欠な要素なのである。

意欲はどこから来るのか

今のあなた自身は、過去のあなた自身の集積であると考えることができる。あなたが経験したことが、今のあなたの仕事意欲を形成する素材を形づくっている。実際に、少し過去を振り返ってみよう。過去のあなたは、何をしているとき楽しかっただろうか。

また、あなたが得意なこと、苦手なことは、何だろうか。

逆にこれまで経験したことで、これだけはごめんこうむりたいこと、それはどのようなことだったろうか。10年前の自分の状況を思い返し、今の自分との関連性を考えてみよう。もしも好きだったことや得意だったことが、今のあなたのまわりにあふれているならば、あなたは現状に少なからぬ納得をしているだろう。

反対に、過去の経験上嫌いだったことや苦手だったことに囲まれているならば、あなたは何とか今の状況を変えたいと願っているにちがいない。

まずは、自分自身の過去を振り返り、自分自身のことをよく知ることが大切である。自分のことをよく知れば、自分がこれまでしてきたことを確認できる。

そのうえで、自分がどのようなことに対して意欲的になれるかを推察することが可能になる。もし、自分がこれまで取り組んできたことと現状があまりにもかけ離れていれば、環境を変えることを考える必要があるかもしれない。

長いあいだ楽しむ

仕事が好きな人にとっては、死ぬまで仕事ができることが幸せかもしれない。逆に、早く仕事をやめたい人でも、経済的な理由から、なかなか思うように退職できないこともあるだろう

。いずれにせよ、仕事に対する意欲をもつことは、長いあいだ、それもひょっとしたら死ぬまで働く人々につきまとう課題である。とはいえ、長いあいだ、それもずっと意欲満々で働き続けていると、人は疲れきってしまう。

あしたのジョーのように、燃え尽きてしまったら後がない。短期間で、パッと燃え尽きてしまうような働き方が必ずしもいいとはかぎらない。ボチボチと長く、そういった意欲のあり方も真面目に考えてみる必要がある。

必要に応じて意欲を燃えたぎらせる。リラックスすべきところでは、くつろぎながら過ごす。このように意欲の出力を操ることが、長期間働くためには必要な視点となってくる。

たとえば、キャンプの焚き木の「火」を考えてみよう。焚き木の火を消すのは、簡単である。 放っておけば、火は自然と消えていく。火を消さぬようにするには、風通しをよくし、限られた薪を少しずつくべていく。

あまり火を大きくしすぎないよう配慮することが、長いあいだ火を燃やし続けるこつである。 しかし、一人で焚き火をするのは、いくぶんさびしいことである。大勢の人とともにキャンプファイヤーを囲む。

多くの人が集まれば、より多くの薪を集めることができ、より巨大な火を起こし、みなで歌い踊り過ごすことができる。このような場合、キャンプファイヤーそのものが楽しい、そう感じる人もいるだろう。キャンプファイヤーと同じように、仕事を楽しめるような生き方ができるようになれば、やってみたい。そう思う人もいるだろう。

仕事を楽しむ

楽しく仕事ができる職種として、営業マンをとりあげてみよう。営業マンは、時代の変化にさらされる仕事であり、常に売上をあげられるわけではない。とはいえ、彼らは、他社の動向、製造ラインからの要望、販売店との調整など、挑戦すべき課題を柔軟に設定できる。

また、売上や市場シェアなどの明確な目標を立てることができる。そして、さまざま取引先や顧客から苦情や感謝などのフィードバックを受けることができる。このような視点から見れば、営業マンの仕事には、仕事を楽しむための条件が揃っている。

社会心理学者のチクセントミハイは、楽しめる仕事の条件について、次のように説明している。それは、変化に富み、ある程度の挑戦的な課題があり、明確な目標を立てられること。そのうえ、直接的なフィードバックが与えられること等。

この条件を考慮し、仕事のやり方を捉え直したなら、仕事を楽しみ、かつ、長いあいだ働き続けることができるにちがいない。

参考文献:『組織は人なり』 野中郁次郎 監修/ナカニシヤ出版

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