いい努力をすれば・・

ある目的のため、課題を遂行していく過程において、知恵、工夫を駆使して努力しています。例えば、お客さんから快適な乗りものを造ってほしいと依頼され、スポーツカータイプの自動車を提示しました。ところが、希望していたのは家族で快適にドライブできる車だった。

このようなケースにならいために、同じ時間と労力をかけるのであれば、効果ある努力に転換したほうがいいはずです。 ?無意識のうちに時間を費やしてしまっている無駄な努力を排除して、時間と自らの能力を最大限に生かすための働き方をしていきたいものです。

要は、労力や時間ではなく、努力の質にあります。 ?明確な目的に向かって、期限を意識し、生産性を高める効果ある努力をすれば、自分自身もまわりの雰囲気にいい影響を与え、成長します。

効果ある努力をする人は、試行錯誤しながら成果に結びつくパターンを修得でき、その人の働きかけによってまわりの環境が変わっていきます。成長した人が進化した状況で働けば、次はさらに高い成果を出すことができます。

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つねに現状からの「変化」を目指す

10の仕事をして9つうまくいってもその成果は目に見えず、たった一つの失敗が問題になるとしたら、リスクに対して神経質になってしまうのは当然です。

現場から新たな提案が入るとします。「この課題は、このような新しいやり方で解決できるんじゃないでしょうか」すると上司の第一声は「でも」です。そのあと、過去のデータや事例を根拠とする「できない理由」を挙げることに気持ちと時間と頭を使うようになります。習慣と慣れによって、そんな仕事の仕方が定着してきます。

業種を問わず、個人を問わず、中堅やベテランになるにつれて、「否定病」にかかる確率は高くなっていきます。それも、優秀で真面目な人ほど失敗を恐れるために、症状は重くなります。この「否定病」の一番の予防策は、「努力とは成果を出すためにある」と肝に銘じることです。 また、思考は筋肉に似たところがあり、同じことを繰り返すと癖がつきます。

プロ野球の選手は、オフのゴルフでは左打ちの人があえて右打ちをしたり、シーズン中とは反対のバッターボックスに入ってスイングしたりして矯正します。ビジネスマンも意識的に新しい仕事に取り組んだり、ふだんとは違ったプロジェクトチームに参加したりすることで、身についた習性を柔軟にでます。大切なのは、面倒がらないことです。

「いつもとは違うこと」をやるのはつねに面倒です。だが、「新しいことにチャレンジすることは面倒くさい」「例外を検討するのは面倒くさい。となってしまうしまったら、個人も組織も、そこで成長が止まってしまいます。世の中の状況はつねに変わり、顧客も競争相手も変わっていきます。

自分が成長しなければ、みんなが走っている中で一人取り残されてしまうことになります。つまり、成長が止まるというのは現状維持ではなく、ずるずるとマイナスに滑り落ちていくことなのです。

「具体的なアイデア」を足で生み出す

問題分析だけで終わらせずに解決策まで生み出すのが、ビジネスにおける思考のルールです。「この問題について考える」というとき、期待される成果は「では、どうするか」という答えです。

ところが、会議や打ち合わせの場などで意見を出す際、問題がなぜ問題なのかを論理立てて整理するだけで終わってしまう人は多いです。 例えば、あなたは体調が悪くて病院に行き、「朝起きたときからの倦怠感と胃痛をなんとかしたい」と医師に訴えたとします。医師は親身になって生活習慣について細かく尋ねて診察し、さまざまな検査をし、丁寧に説明をしてくれます。

「検査の結果、血圧が高いし、ちょっとメタボ気味ですね。酒を飲んだあとの夜中のラーメンがまずいな。運動不足だし、睡眠も全然足りていない。生活習慣を変えましょう この医師は悪い医師ではないのかもしれませんが、これは患者が期待する成果ではありません。血圧もメタボも事実だが、患者が知りたいのはどういうアクションをすれば現在の不調が改善するかという具体策です。「生活習慣を変えたほうがいい」というのはもっともだが、具体性がないし、そこまでなら誰にでもわかることです。

ビジネスでも同じことが起きています。知的で堅実な人は、問題点を分析するのが得意だし、論理的に導かれる解決の方向性を示すことができます。 しかし、「まず、具体的に何をすべきか」という発想の段階になると、詰まってしまいます。

発想力に特別優れていない人がアイデアを出すために、やるべきことは3つあります。 第1に、「自分は具体的なアイデアを出す部分が弱い」と自覚することです。 第2に、考えるプロセスの時間配分を工夫することです。 大型の企画提案の際、情報収集や問題分析に時間をかけているうちに、提案の3日前になっていたというのでは困る。

時間を区切って、「10日前になったら、問題分析や調査の精度が粗くても中断して、具体的なアイデア出しに集中する」などと決めることです。 第3に、アイデアを外から集めてくることです。

外の世界を見て、いろんなことをしていれば、幅広い知識が蓄えられます。新しい発想がクライアントとのコミュニケーションから生まれることもあれば、一見関係のない知識と課題を結びつけることでアイデアが生まれることもあります。テレビで見た行列のできるアイスクリーム店、野球監督の名言、外国人観光客が買っていくもの、歴史書、ランチが人気のレストラン。

関係ないことを見て聞いて体験し、アイデアのリソースを増やします。効率主義だけで仕事をしていたら、アイデアは広がらりません。仕事だけをしているのではなく、「無駄なこと」「余計なこと」をする余裕と思い切りを持つことが重要です。仕事を一生懸命にしながらも、時間をつくって、あえて仕事に関係のない本を読んだり、他業界の人などと話をしたりすることが、アイデアのリソースを豊かにしてくれます。

初動からハンズオン(手を触れる)で取り組む

生産性の高いリーダーは「ハンズオン」で仕事にあたります。つまり、自ら手を動かして、積極的に現場の仕事に関わっていきます。これは、たとえ経営トップであってもそうです。 新しい世代のプロフェッショナル経営者を見ていると、多くの経営トップがハンズオンで仕事にあたっています。

タイプはさまざまで、業界も経歴も違いますが、自らアイデアを出し、行動し、働きかけ動き回る社長が大きな成果を出しています。 創業当初は自分でやるしかなかったでしょうが、大企業になっても革張りの椅子にどっしり座り込んだりしていません。優れた創業者は重要な課題であればあるほど率先して行動しています。

こうした人たちと対照的に、座って報告を待つ"受けて応えるリーダー"もいます。人問は経験と年齢を重ねると放っておいても受けて応えるようになりがちです。部下にお任せでスタートしたわりに、あとから自分に打診がないとき、「そこまで変えるのはまずいんじゃない?」と横やりを入れることがよくあります。

あなたがいま、若手のリーダーであれば、仕事のすべてのステップにハンズオンで取り組むことを意識すべきです。 仕事は立ち上げのときにいかに面倒な仕事をしてしまうかが勝負となります。リーダーは、そこで自らハンズオンで道筋をつけていかなければならなりません。

最も大事で、最も頭と気をつかう仕事はつねにリーダーが直接行うという覚悟を持つべきです。 リーダーがやることはその仕事の「核心部分」であり、人に任せることは「それぞれの相手が得意なこと」という組み合わせをするに重きを置きます。

ハンズオンは、「最初から最後まで徹底的に管理する」との行動に対する「過干渉」のことではありません。 「ここぞ」というキーとなるところは、リーダー自ら実践するが大切なことです。

参考文献:『いい努力』 山梨 広一 著/ ダイヤモンド社

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