■成功をイメージする
最近、脳についての研究が進み、脳の特性を活かす興味深い話題があります。 「脳は現実と想像を区別できない」ということがあるそうです。梅干しやレモンを想像すると勝手に唾が口の中に広がる、というのがまさにこの状態を証明しています。
例えば、スポーツ選手がイメージトレーニングを反復することにより、試合に備えます。スポーツ選手に限らず、結婚式の挨拶や、会社や学校でのプレゼンテーション、あまり親しくない相手とのミーティングや、友だち同士などの人間関係など、イメージを広げるだけで、体験を重ねることができ、より自信をもって物事に対応できるようになります。
つまり、想像すればするほど、それを現実に起きた体験だと理解し、経験が積まれるというわけです。 経験を繰り返すほど、体が慣れてきて対応力が湧いてきます。 脳の特性を理解すれば、その「経験」は、「想像」でもいいという事になります。
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自分をもっと大きくイメージしよう
何が創造力に影響を与えるのかを探るために、人の生い立ちから教育過程にいたるまでさまざまな要因を調査した結果、その違いはたったひとつ、「創造的な人は自分を創造的だと考え、そうでない人は自分が創造的でないと考えている」ということが判明した。
「あるべき姿」を決めるのに制限はない
清掃作業員のアンディーは、いつも人より早く職場に来て掃除をしていた。そして暇を見つけては独学でモールス信号を学んだ。ある日、電報交換手がみな席を外していた時間に、電報が飛び込んできた。
当時の規則で、交換手以外は設備に手を触れてはならないことになっていた。だが、アンディーは電報を受信したくてたまらず、処罰を覚悟で電報を受け取った。
結果、社長は彼を解雇するどころか、交換手がいないときには電報を受信できるようにしてくれた。 その後、彼は鉄道会社の電信手としてスカウトされた。電信手となったアンディーは、ここでも独学で鉄道運営課程の勉強をした。
ある日、出勤直後に列車の脱線事故が起きた。責任者に連絡できなかったため、彼は解雇と懲役を覚悟で、鉄道路線の変更を電報で指示し、事故を収拾した。
彼こそが、のちに「鉄鋼王」と呼ぼれることになるアンドリェー・カーネギーその人である。 また、アップルはコンピューター事業で築いたデザインとソフトウェア技術を基盤に中核事業を再定義し、画期的なデジタル新製品賠巴を開発し、携帯電話市場のパラダイムを変えるiPhoneを世に出した。
ノキアとアグファは両社とも100年を超える歴史を持つ企業だ。ところが、片方はいまも発展を続けており、もう片方は破産した。世界の携帯電話マーケットのシェア第1位を誇るノキアは、もともと木材加工会社だったが、1990年代の中頃からIT分野にその中核を移していった。
一方、アグファは事業の分野をアナログフィルムに限定し、創業140年の2005年に倒産した。ポラロイドはデジタル時代の到来をいち早く悟ったが、自社の技術の高さにあぐらをかき、事業の幅を狭く限ったせいで悲惨な失敗をした。
また、アメリカの鉄道会社の成長がストップしたのは、乗客と貨物の運送需要が減少したためではない。彼らは自らを運送業者ではなく、鉄道会社だと狭く捉えたからだ。個人だけではなく、企業も自らをあまりに狭く捉えると、大きなツケが回ってくることになる。
自己イメージが変わればひとつひとつの行動が変わる
たとえ意識しなくても、あなたの頭の中は何らかの自己イメージに満たされている。「ただのコンビニ店主」「サラリーマン」「僕なんか」「この年齢で」といった否定的なイメージは、存在自体を認識しなくても、わたしたちの精神の中に深く根ざしており、知らずしらずのうちにわたしたちの行動全般に影響を及ぼす。
人は誰でも「自分は〜な人間だ」という自己一貫性原理を持っている。そして、それに合致する証拠を探し出し、自己イメージに合わせて行動しようという強い欲求を持ち、無意識のうちに、自分の言葉と行動を自己イメージと一致させることが道徳的だと考えるそうだ。
うつ病患者は気分がよいことがあって楽しくなると、なぜか罪の意識を感じ、うつ病から抜け出したいと思いながら、愉快な状態を受け入れられないそうだ。 それは、自分が考える自己イメージに合わないと思うと矛盾を感じ、落ち着かないからだ。
一般に、うつ病から抜け出せないからうつ病だと言うが、実は自分がうつ病患者だと考えるからうつ病から抜け出せない場合の方がずっと多いらしい。 1863年1月1日、リンカーン大統領が奴隷解放宣言をしたとき、自由を求めて出ていくだろうと思っていた奴隷たちは、予想とは違ってほとんどが以前のように主人の下で生きていくことを選択した。
あれほど求めていた自由が与えられたのに、なぜだろうか? 彼らはそうやって生きることが運命だと考え、頭の中に塀をつくって生きていたからだ。プレスコ・トッレー博士は実験を通じて、成功と失敗は自己イメージによるという事実を確認した。
心理学者のコリンズもまた、学生の数学の成績は才能よりも信念が大きく左右するという事実を、実験で確かめた研究者だ。彼は、数学の能力が同等だとしても、「数学が得意」だという信念を持っている学生は、そうでない学生に比べて時間がたてばたつほどはっきりと数学の成績が高くなるという事実を発見した。
「僕はもともと計算が苦手なんだ」「わたしは数学に向いていない」「自分は数学的な頭がない」と決めつけていれば、間違いなく数学ができなくなる。 「自分はもともと朝が苦手だ」と規定すれば、他人より早く出勤するのは不可能だ。
早起きできないのは、怠けているためではない。意志が弱いからでもない。自分を「早起きできない人間」と決めつけているからだ。 いまとは違う姿で生きていきたければ、理想に描く姿の人間として自分をイメージしさえすればよい。 実行力のある人間になりたければ、「自分は意志薄弱だ」という考えを頭から追い出して、「自分は決心すれば、必ずやり遂げる人間だ」と、きっぱりと規定すればよい。
本当の自己受容ができている
自己受容ができているというのも、勝負所に強い人の特徴と言えます。 しかし、自己受容というと、自分は素晴らしい、自分は何でもうまくできるというように自己を全面的に肯定しながら、「そんなのは自分には無理だ」と言う人が多いのではないでしょうか。
しかし、自己受容というのは、そういうことではありません。まだまだ至らない点もあるということも含めて、未熟ながらも向上をめざして頑張っている自分を肯定する。それが自己受容です。 自己を肯定できるようになるには、成功体験が必要だなどと言われますが、人生には思い通りにならないこと、うまくいかないことも多いという現実を考えると、成功体験だけでは自己を肯定できるようにはなりません。
逆に言えば、思い通りにならないことが多いのに、なぜ自己を肯定できるようになるのかに目を向ける必要があります。そこに諦めない心が育つ秘訣がありそうです。
何もかも思い通りになる、成果が出るなどということは現実にはあり得ません。たとえ思い通りにならなくても、成果が出なくても、未熟ながらも頑張っている自分を認める視点が諦めない心を育てます。
どんな領域でも、活躍している人はみんなレジリエンスが高いものです。タフに生きるためには、要するに物事の受け止め方がポイントになります。
メジャーリーグで大活躍し、古巣の広島東洋力―プに戻ってきた黒田博樹投手は、巨人戦で復帰後初の完封勝利を目前にしながら、9回裏に亀井選手に犠牲フライを打たれて逆転サヨナラ負けを喫してしまいました。つい若い頃のつもりで投げて痛い目に遭い、非常に悔しい思いをすることになりました。力強い球が投げられた若い頃とは違ったわけです。
「あのときはショックでしたね。 あの試合では野球の厳しさというものを思い知らされました。つい昔の感覚というか、7年前の頭で野球をやって、最後はあのような結果になってしまった。いまも同じことをやっていたのでは駄目なんだと、そういうことを改めて教えられた試合でした」と言います。
さらに、「ただ、そこで大切なのは、そういう自分を受け入れないといけないのです。あんな負け方をしたのは力が衰えているわけだから、その衰えを練習で補わなければならない。そこに成熟する余地が残っているし、新たな鎧を身につける必要性を感じました」と回想されていました。
感情反応より認知反応を心がけ、すばやく気持ちを切り替えようということです。どんなにショックを受けても、どんなに苦しい状況に追い込まれても、落ち込まず、すぐに気持ちを切り替えて、どうしたらよいかと対処法を模索する。それがスムーズにできているからこそ、人並み外れた成果を出すことができると思います。
イメージつくりで可能性の追求
ある人があなたとどう接するかは、あなたが実際にどんな人間かということよりも、その人があなたをどう規定しているかに全面的にかかっている。同様に、あなたの態度や行動も、あなたがあなた自身をどう規定しているかによって決まる。その認識が合っていようが間違っていようが、人は自分のイメージに合致するように行動する。
かつて。紀元前27年ごろのローマ帝国の政治家、哲学者、詩人のセネカはこう語った。「何かができないということは、それがあまり難しいからではなく、難しいと思い込んでやってみようとしないからだ」自分に新しいイメージをかぶせれば、あなたの行動はその新しいアイデンティティーを裏付けるために、自動的に変化するだろう。
次の文面は、自分をより大きくイメージしてから、人生の目標と態度が完全に変わったという大学院生の感想です。 「いつか教授とお話ししたとき、『わたしはもともと○○性格なんです』と言うと、教授は『そんなレッテルを貼ってはいけない!』とおっしゃいました。そのお言葉を聞いて、まるでハンマーで頭を殴られたような感じがしました。
考えてみると、わたしにはいつも自分を『○○な人間』として限界をつくる癖がありました.大学院で発表しているときにも、心のどかでは講義をすることが本当に自分の適性に合っていると思いながら、自分から『教授という職業には就けない人間』と決めつけ、カウンセラーの立場で満足していました。ですが、自分の中の可能性を掘り出してくださった教授のおかげで、『自分にできないわけがない』いう気持ちになり、教授になると公開宣言することにしました。
それをご覧になった教授がしばしば冗談交じりに『○○○教授』とわたしを呼ぶたびに、わたしから1千万キロメートルも離れたところにあったはずの『教授』という職業が、ほんの1メートル先の近さに感じられます。もちうん、失敗することもあるかも知れませんが、ただの夢に過ぎないとは、誰にも言わせません」と述べている。
努力しても成果がでないなら、行動を変えようとするのではなく、イメージをつくり替えることだ。自己イメージが変われば、行動は自然と変わるものだからだ。これまでと違う人生を歩みたければ、これまでと違う自分をイメージする必要がある。
参考文献:『先延ばしにしない技術』 イ・ミンギュ 著/サンマーク出版