できるとおもわなれば・・

新しいアイデアや活動を創出するためには、いろいろな経験を積むことが不可欠と思われます。また、その経験などから思考しているとき、「できる」と思わなければ、何事も絶対に不可能です。

あらゆる可能性を論理的に突き詰めていけば、不可能と思われることが可能になることも決して少なくありません。

ただ、そのためには目的や条件を変えたり、何かをあきらめたりしなければならないことや、何かが整うのを待つために、時間がかかることもあります。しかし、往々にして「それは難しいと思います。なぜなら」と困難な理由を並らべたり、「×××にはこういう問題があります。だから」といって問題の指摘に終始してしまっていることが多々あります。

上記のような発想と、「たぶん、できるはずだ。でもそのためには何をし、〇〇を組み合せすればいいはずだ」という発想は、天と地ほどの大きな違いを生み出します。

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マインドセットから変える

プロヴォカティブ・シンキングというのは、シンキングというように文字通り思考法なのだが、実はー番大事なのはマインドセットである。右脳か左脳かでいえば右脳のほう、つまり感情や感性の果たす役割が大きい。したがって、まずはマインドセットを変えることが第一歩となる。

鍵となるマインドセットは3つある。

1つは可能性を信じること。
何度もいうように、「できない」と思っていたら、何もできるわけがない。否定することからは何も始まらない。最初はウソでもいいから、「できる」と言い切ってしまうことも必要だ。

2つめは、好奇心を持つこと。 いろいろな種類の情報に、視点を変えて興味を持つこと。これまで気にしていなかったことや、まわりのみんなが無視するようなところに着目する。

3つめは、好奇心を持って集めた情報が、自分が取り組んでいる課題の本質やその解の方向性に関してどんな意味を持つのかを考えるときに、収集したひとつひとつの情報からたくさんの多様なメッセージを読み取ろうと楽しむことである。

1種類の読み取り方に満足せず、一般的な解釈や常道の読み取り方にとらわれず、より多く、より多様な読み取り方を見つけることにワクワクする気持ちだ。

3通りの意味合いが抽出できたら、4つめ、5つめはあり得ないかともう一度考え抜いてみる。同じ情報を見た他の人たちが読み取ったものを議論し、自分はそれらとは違う解釈ができないか、いや、必ず新しい読み取り方があるはずだと信じて、少しでも多くの異なる意味合いの抽出にゲームのように挑む。

難題に対する解を見つけるのはパズルやゲームだと考えてみよう。パズルやゲームは難しいほうが面白い。簡単にすぐ解けるものはつまらない。このように発想したらどうだろう。

それに難題や高い目標ほど、独創的、斬新なアイデアが生まれやすい。なぜなら発想を飛躍させざるをえないからである。 マインドセットを切り替えるには、多少の訓練が必要だ。 気の持ちようを変えるのは、簡単なようで、実は難しい。

「発想の転換のためには頭の中で思うだけではなく、実際に声に出していってみることだ。 「これはできる」「これは可能だ」「大成功するのではないか」そして、そのあとで、「なぜかというと・・・」と、可能である理由を述べる。つまり、強制的にプロヴォカティブな思考をするわけだ。

トレーニング方法は

自分のお気に入りを他人にすすめることである。お気に入りは、なんでもいい。食べ物でも、店でも、服でも、映画でも本でもいい。 あるものを人にすすめるとき、なんといって説明するだろうか。

そのものの欠点を挙げる人はいるまい。かならず優れているところ、すばらしいところ、魅力的なところを挙げて、伝えようとするだろう。これはものごとのプラスの面を見つける練習になる。たとえば「×××の新しいフレーバーはおいしい。これあなたにいいんじゃないの」と誰かにすすめてみる。

常に結論はポジティブなものにして、なぜならば〜と考えるクセをつける。その魅力を友人や家族、同僚に伝えるにはどうしたらよいか考えて実践してみる。

そうすると口先だけでよさを説明したところで、相手の反応は鈍いということがわかる。ましてや相手がこれまで興味を持っていなかったものについてであればなおさらだ。まずは自分自身がとことんその対象物を面白がっていなければ、言葉に真実味がこもらない。そして魅力を言葉にして伝えようとする課程で、自分が面白いと思う。

理由をより明確にすることが求められる。 つまり、「面白い」と思ったあとで、「なぜ自分が面白いと思ったか」という感情をなぞるような行為だが、これは面白がる気持ちをさらに養う効果がある。

この練習を繰り返すうちに、「面白がる」感度が研ぎ澄まされてくることを実感するだろう。 プロヴォカティブ・シンキングにおいては、ひとつの情報から多面的な意味合いや可能性を引き出すことが重要だが、そのためのスキルを磨くアプローチがある。

たとえば、異なる主語で考えてみる。

たいていの仕事の場面では、自社や自分の所属部門を主語として、目の前の情報がどんな意味を持つかを考える。 顧客、取引先は、株主は、あるいは同じ市場データでも、競合他社は違う意味をそこにみとめて、違う戦略をとってくるかもしれない。

しかし主語が変わると、同じ情報でも、持つ意味がまったく違ってくることも珍しくない。これは自社の危機が競合他社のチャンスであることからもすぐわかるだろう。

事業戦略を構築する際にも、このような「主語を変えて考える」思考を活用すると、顧客の気持ちや競合の動きをダイナミックに捉えることができて、有効な戦略を立てることができるだろう。

因数分解を楽しむ

一歩外に出てみれば、街中は多種多様な情報があふれた状態になっている。窓から見える景色を一定の区切りで切り取って、複数の情報や素材に共通するものを括りだしたり、逆に複数の要素に分けてみたりしてみよう。

例えば、電車の雑誌の吊り広告「週刊東洋経済」、「週刊ダイヤモンド」、「週刊現代」や「週刊ポスト」、月刊誌などがある。それを見て、これらに共通のものは何なのか。

そこから、複数の月刊誌の特集が重なっていることが多い。3つや4つ以上の雑誌がイタリアを特集していることがある。そのテーマに話題性があるからなのだろう。「今年の秋の流行はイタリアだな」というような簡単な因数分解になる。

また、電車に乗っている学生のファッションや行動に着目してもいい。あるいは新聞、特定の商品のテレビコマーシャルでもかまわない。月曜、あるいは金曜の、ゴールデンアワーのテレビ番組の内容がどう変わっていくかでもいい。また、いつも行くコンビニの特定の棚を見るのもいい。

これはスナック菓子でも飲料でもいいが、「特定の棚」というのが肝心で、いつも見るところを決めていると、微妙な変化に気がつくようになる。あるいはユニクロの店のショーウインドウの変化なども見る。

おすすめしたいのは、一つの広告を見たときに、そこに含まれる情報が、自分が今仕事で取り組んでいる課題にとってどんな意味を持つのか、今度の自分の休みの行動にどんな示唆を持つのかなどを考えること。

そして次に、同じ広告の情報を自分が営業だったらどうか、経理の人が見たらどう思うか。自分以外の他人が見た場合はどんな意味を持つのかを想像してみるとさらに興味が募る。

他人の視点で情報を読む訓練にも、電車の吊り広告は向いている。 「自分はいつもこのことを気にしていよう」と決め、何かひとつに絞って、マイクロな情報を継続的に追いかけるのは、人と違うものの見方ができるようになる手法である。

要するに複数の個別の情報に含まれている共通の要素を、そこから抜き出して組み合わせると、何か新しいものが見えてくる。共通項を括り出すのが因数分解である。情報が多様で複雑であればあるほど、何十通り、何百通りもの因数分解が可能になる。

参考文献:『面白がる思考 プロヴォカティブ・シンキング』 山梨広一 著/ 東洋経済新婦報社 

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