神は細部に・・・

集中力を鍛えることは人生そのものに大きく影響してきます。集中力は意識してトレーニングし、身のまわりの環境を見直すことで、上げることができます。運動が苦手な人でも練習次第でフルマラソンを完走できるようになるのと同じように、トレーニング次第で普通の人の何倍も集中力を上げることも可能です。。

毎日ジョギングしている人と、何も運動しない人がマラソンで競争したら、絶対にジョギングしている人が勝つはずです。。

 集中力があれば、勉強も仕事も目標どおりに達成できるようになります。 そこで、集中力を高めることを習慣にしていけば、困難な課題に遭遇しても、それに打ち勝つ忍耐ができることで、解決できる能力が身についてきます。

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「ささいなこと」ほどないがしろにしない

五輪通算23個の金メダルを獲得した「怪物」マイケル・フェルプスは史上最強の五輪選手として有名です。彼をそこまで育てたコーチは名将ボブ・ボウマン氏です。最初に出場した2000年のシドニー五輪では、200mバタフライのみ出場し、5位に終わりました。

しかしこのとき、彼はメダルを狙って試合に臨んだわけではありません。「68年ぶりの五輪最年少の男子スイマー」だった15歳の彼にとって、競争相手はみな年齢も経験値も自分を上回る成人男性でした。勝てなくて当然です。 フェルプスとコーチのボウマン氏はその試合から多くのことを学び、ささいなことでも記録に残しました。

それをしないと後で悔やむことになるからです。たとえば彼は予選と準決勝で水着の紐を結ぶのを忘れました。なぜか??端的にいえば、緊張したからです。幸いトラブルは何も起きませんでしたが、私たちは地元に戻ってから水着が脱げないようにするという単純なタスクを必ず練習しました。

フェルプスは後に、初めての五輪を前にして、「ちょっとビビっていた」ことを認めました。無理もありません。まだ歯列矯正器具をつけている少年で、身長も伸びざかりだったのですから。しかし、このときの経験から学んだことは彼の記憶に残り、4年後のアテネで「ビビる」ことはありませんでした。

準備を整えていたからこそ、自信も備わり、本番ではまったくミスすることなく6個の金メダルを勝ち取ったのです。 「本番、特にそれが最初のパフォーマンスの場合は、できるだけ多くのことを学ぶ姿勢で臨もう」。ボウマン氏は教え子たちにそう伝えています。結果以外のことを考えるのは難しいかもしれませんが、それでも、ひとまずやってみることです。経験を積むたびに全体のレベルが上がり、将来のより大きな成果の準備が整うのです。

集中力を鍛える

大事な場面でも「集中力」をキープし続けることが大切なことです。それほど集中力に恵まれていないアスリートもいます。彼らが大きな試合で失敗する原因はたいてい集中力です。試合と試合の間で気が散ってしまい、集中力が途切れてしまうのです。

同じようなわなに落ちている人はたくさんいるのではないでしょうか。家族、友人、仕事、娯楽、さらに、ツイッター、フェイスブック、人気のゲームアプリ、それらはすべて、目の前の目標に集中する妨げになります。 試合では、集中力を妨げるさまざまなものをすべて排除して本番に臨む態勢が整っていなければなりません。試合に集中できるようにサポートするのです。

そこではたいてい、こんなやりとりが繰り広げられます。 コーチ「君がレースですべきことは何だ?」 選手「メダルをとること、相手を負かすこと、賞金を勝ち取ることです」 コーチ「いや、違う。君がすべきことは、A地点(出発点)からB地点(ゴール)までできるだけ速く泳ぐことだ。速く泳ぐことは、ライバルやメダルとは関係ない。

大事なのは、自分がすべきことに集中することだ。速く泳ぐために必要なこと、つまり、レースプランとテクニックに集中する。それだけだ。メダルとか、おカネ、情熱、レーン、ほかのスイマー、ソーシャルメディア、マスコミ、そんなものは君の足を引っ張る騒音でしかない。そんな無関係なものを気にしていたら混乱するだけだ。単純に考えようよ」

「たいへんな仕事」を「単純な仕事」に変えるコツ

ジムは、レースの前に手か足の甲に文字を書くことを勧めています。言葉や記号でもかまいません。手の甲と足の甲はレースに臨む選手の視界に必ず入ります。そこに「キュー(合図)」を描いておけば、それを見て、心を落ち着け、「単純な仕事」に集中すればいいことを思い出すのです。

それはつまり、出発点からゴールまで、できるだけ速く泳ぐことです。 スタート直前、多くのアスリートが迷って自信を失いかねない瞬間、そのキューが目に入れば寸時に自分の仕事に集中することを思い出します。キューが「隣のレーンのスイマーやメダルのことなど忘れろ。ただ泳げ!」と呼び掛けるからです。

この方法はスイマー以外でも使えるかとコーチに尋ねたところ、彼は自信満々で「もちろん」と言いました。 「4人の子供をもつ専業主婦がいるとするね。父親は遅くまで働いているから、母親が4人全員の送り迎えをしなければならない。母親には1人でこなしきれないほどの用事がある。食料品店に行って、夕食の材料も買わなければならない。

そんなとき、手の甲に"食料"と書いておけば、どんなに込み入った状況になっても、食料品店に寄ることを思い出す。混乱から1歩離れて、深呼吸して、店に向かえと伝えるからだ。そして、任務が完了する!

たくさんの仕事をこなすと有能に見えるが、優先順位を決めて、仕事の数を管理できる範囲に留めないと、きりきり舞いして、しかも質が低下する。仕事を細分化して、1つずつ片づけ、ほかのタスクを思い出させるキューを利用すれば、すべてのタスクを効率よく、質を落とさずに予定どおりに行うことができるよ」

スポーツではよく「気負いすぎて失敗した」という言葉を聞きます。バスケットボールの選手が試合で前に何千回も成功しているのに、勝敗がかかった場面でフリースローをはずことがあります。また、野球選手が満塁サヨナラのチャンスがある打席で三振をしたりすることが。彼らはほかの状況でなら別の結果を出したかもしれません。

では、「気負いすぎる」原因が何かといえば、本番という、通常以上のプレッシャーを感じる場に置かれたからです。 気負いすぎとは、プレッシャーを感じて、身体ではなく精神面が最良の状態になれないことです。ふだんは上手にできる人でも、重圧がかかるとふだんどおりにできなくなる。

状況に負けて、「自分がそこにいるのは勉強してきたことや練習してきたことを行うためだ」という単純な理由を見失ってしまうのです。先を見て、結果に意識を向けてしまう。失敗したらどうしようと思ってしまう。

プレッシャーがかかる状況に直面したときは、自分自身と自分のプランだけを見つめましょう。"いま"に集中して、これまで何回も完璧をめざして練習してきたことをそのまま行うことです。それさえ守れば、望みの結果はついてきます。

「最強の金メダリスト」が本番中にめざしていること

彼は試合で気負いすぎて失敗したことがありませんでした。では、つねに勝ったかといえば、そんなことはありません。しかし、それはその日、ライバルが彼よりもよい泳ぎをしたからです。

彼は勝利を目標にしないで、タイムを目標にしたから、気負いすぎずにいられたのです。「自分がコントロールできるもの」に焦点を合わせることに集中したのです。

コーチが目標として与えたタイムがうまくいけば、もちろん金メダルにつながることもありますが、その場合でも、めざすのはあくまでもそのタイムを出す泳ぎです。

彼は「負けるのが嫌い」だと言ってきました。しかし彼が本当に嫌うのは、目標を達成できなったことです。誰かに負けるのと、自分に負けるのは違います。自分に負けることは許されない。大事なのは、ただそれだけのことです。

自分が自分に打ち克てばその結果がどういうものであれ、自分が越えたいものだったわけですから、自己肯定感が育まれ人生は充実きます。自分で変化させたいと思っていることや、成長したいと思っていること、それらを越えるため切磋琢磨すればいいわけです。

参考文献:『本番で「勝つ人」と「負ける人」の決定的な差』 ボブ・ボウマン 水泳アメリカ代表コーチ 著/ 東洋経済onLine

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