■第3の案を・・
個人の思考が目まぐるしく変わる時代になっています。顧客の趣向を調査し、ニーズから、真のウォンツを見つけだすのは非常に困難です。 多種多様な趣向、感性などを上手に集約する必要があります。各々が意見を述べ、その意見から結論に導きだす際、絞り込み二者択一になり、2で割るような折衷案になりがちです。
このような案では、変化の激しい時代にマッチしたものになりません。その案のもっている特性を上手に織り込んで、第3の案を創造できるならば1+1は3以上になります。
お互いの案が極端にちがっているときほど、議論を尽くし、異質で卓越した第3の案がうまれるような体制創りが重要です。
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成功者の選択
スティーブン・R・コヴィー博士は著書「第3の案」で、2者の意見が対立したとき、私たちが最終的に求めなければならないのは、Aの案でもBの案でもない。意見が違う双方のニーズ(利害)を兼ね備えた「第3の案」であると説いています。
私たちはとかく二者択一の選択か、2つの案を合わせた妥協案かと考えがちですが、創造的な「第3の案」を生み出すことこそが、重要な選択なのです。 会議などで自分の意見と違う意見を出されたとき、私たちは通常それを歓迎しません。
しかし同じ目的を持って協力して「第3の案」をつくっていこうとすれば、お互いが自立し、意見やアイデア、考え方、パラダイム(視点)等あらゆる点で違っていますが、まずは歩み寄る必要があります。
歩み寄ったところで、異なるA案とB案が完全に重なり合うことはありませんが、重なり合う部分が生まれます。これが一般的にいわれる妥協案、折衷案です。しかし、「第3の案」は、双方の歩み寄りだけでは生まれません。異なるA案のニーズとB案のニーズを包括したうえで、お互いがまったく考えてもみなかった「第3の案」が生み出されるのです。第3の案は異なる、「個」の強みを生かした案なので、シナジー(相乗効果)が生まれます。
市場が多様化した今・・
なぜ今「第3の案」というシナジーを求めるパラダイムやスキルが必要なのでしょうか。それは、市場や社会の環境がこれまでとはまったく変わってしまったからです。以前は、市場が穏やかで、企業が何らかの価値やソリユーションをつくって提供すれば、市場はそのまま受け入れた時代でした。
それに対して、現在は激流のように、市場はきまぐれで、激しく変化しています。まさに「個」の時代となり、一人ひとりのニーズに細かく対応していかなければ、企業は生き残れない状態になっています。
激流の時代である現在は、一人ひとりが自らの中に方向性を見いだし、水しぶき一つひとつのニーズに対応していかなければ、同じ方向に向かって船を漕いでいくことさえできません。それなのに、一生懸命昔のやりかたで進もうとしている組織が少なくないのが現実です。
「第3の案」を生み出す人は、たとえば「会議で自分と異なる意見を出される」などさまざまな刺激に対して、すぐに拒否する理由を探したり、「相手が上司だからここは自分が折れよう」と自分の意見を取り下げたりはしまぜん。主体的に自らの行動(反応)を選択します。
会議で信頼している人から自分と異なる意見を出されても、その意見を違った視点からの意見として理解し、受け入れ、自分自身が影響を与えられる範囲の中で「第3の案」を生み出していこうと考えます。これが主体的な反応です。
能動的な人にのみ幸運が訪れる
スタンフオード大学のジョン・D・クランボルツ博士が提唱した「計画された偶発性理論」で、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」と。
つまり、大半のビジネスマンのキャリアは、偶然の出来事によってつくられており、計画通りになった人などほとんどいないということです。現在は企業が市場に合わせていく時代です。偶然起きるさまざまなことに対して、状況に応じて主体的な選択をしていかなければなりません。
とはいっても、「キャリアは偶然に任せておけばいい」という意味ではありません。「キャリアは偶然の積み重ねにより、予期せぬ出来事で成り立っています。日頃から能動的な行動をとっている人には、自分にとってより好ましいことが起こる」としているのがこの理論の素晴らしいところです。
良運は、刺激に対して何も考えず、努力もせず、即座に反応するだけの人には訪れません。主体的になり、一生懸命やっている人に訪れ、「好ましい偶然=幸運」が起きるのです。
つまりクランボルツ博士はキャリアパスそのものを否定しているわけではなく、目指す方向に向かって主体的に歩もうとするのであれば、より好ましい偶然というものが起きると説いています。さらに博士は、その計画された偶発性は、「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」という5つの行動特性を持っている人に起こりやすいと。
「遅い」は「早い」相亙理解の近道とは
どんな極端なA案とどんな極端なB案は必ず存在するものです。そのためにもっとも重要なのは、テクニックでもスキルでもありません。 自分の案でも相手の案でもない、今はまだ目に見えない、まったく新しいものを導き出していこうという意思です。
理解するためには、「聞く」ではなく「聴く」必要があります。「聴く」は耳だけでなく、目と心によってよく聴くという意味だと理解してください。もっといえば、自ら意思を持って相手の心を読みとりながら、相手の表情まで目も使って観察し、聴いていく、理解し共感するためだけに聴くということです。
そして「○○でなければいけない。」という固定観念や思い込み、偏見、つまらないプライドから飛び出て一緒に考えることです。すると、「そんなアイデアもあるかもしれない。」「こういうこともできるかもしれない。」というように、新しいアイデアを生み出すことができる可能性が高まります。
さらに、「第3の案」を見いだすプロセスには、大きなメリットは新しい視点から物事を見ることができるようになります。 それだけでなく、はじめは異なる意見を出し合っていた2者が理解を深めることで、お互いの関係にもよい変化が生じます。よりよい人間関係を築くことにつながります。
新しいものを創造するというワクワク感を共有することで、新たなエネルギーも生まれるでしょう。これこそが「運をつかむ」状態を自らつくり出す思考法なのです。
参考文献:『人生が変わる第3の選択』 プレジデント 2015/06/15号