■目に見えない三つの報酬
組織を強くするには、社員が会社のビジョンに共鳴して、全員の考えが同じベクトルに向けるようにすればいいと言われています。 言葉では簡単に表現できますが、実践するには非常に難しいことです。
これは組織の変革を議論するときでも「うちの会社はとても無理」「自分の立場では何もできない」とか、「うちは新しい会社だからまだそういう段階ではない」といった意見がでてきます。 他方では、これほど忙しく毎日働いても「なぜか働くことの喜びを感じられない」と思う人も多くなっています。
しかし、意外と多くの人が、「役に立ちたい」とか「成長したい」という欲求を持っています。そこで、組織力のアップは仕事に誇りを持ち、プロフェッショナルと自覚し、難しいことにチャレンジし、成長する体制を創ることです。
◆◇◆◇◆ ◆◇◆◇◆ ◆◇◆◇◆
組織を強くするには、社員が会社のビジョンに共鳴して、全員の考えが同じベクトルに向けるようにすればいいと言われています。 言葉では簡単に表現できますが、実践するには非常に難しいことです。
これは組織の変革を議論するときでも「うちの会社はとても無理」「自分の立場では何もできない」とか、「うちは新しい会社だからまだそういう段階ではない」といった意見がでてきます。 他方では、これほど忙しく毎日働いても「なぜか働くことの喜びを感じられない」と思う人も多くなっています。
しかし、意外と多くの人が、「役に立ちたい」とか「成長したい」という欲求を持っています。そこで、組織力のアップは仕事に誇りを持ち、プロフェッショナルと自覚し、難しいことにチャレンジし、成長する体制を創ることです。
仕事の報酬とは何か。「なぜ、そんなに一生懸命、働いているのですか」「そんなに一生懸命働くことによって、どんな報酬を得ているのですか」「あなたにとって、仕事の報酬とは何ですか」 この問いに対して、いかなる答えをするか。それによって、そのビジネスマンがこれから歩む道が分かれる。
もし、この問いに対して、「仕事の報酬は、給料や収入だ」と答えるならば、残念ながら、そのビジネスマンは大切なものが見えていない。 そして、その結果、どれほど一生懸命に働いても、本当に大切な報酬を得ることなく歩むことになる。だから、この問いが、「分かれ道」となる大切な問いなのです。
そして、この問いは、極めて大切な問いです。 マネジャーや経営者にとっても、例えば、夜遅くまで一生懸命に働いてくれる部下や社員がいる。 彼らに「毎日、夜遅くまで、ご苦労さま」と声をかけた後、「なぜ、そんなに一生懸命に働いてくれるのか」と聞いたとする。 それに対して、もし、部下や社員が、笑顔で、「ええ、この会社は、給料が良いですから」と答えたとする。
これは、マネジャーや経営者にとって、悩ましい瞬間である。たしかに、部下や社員を養うという意味では、そのマネジャーや経営者は経済力がある。けれども、何かが寂しい。
しかし、もし、部下や社員が真顔で「ええ、この会社では大切なものが得られますから」と答えたとする。これはマネジャーや経営者にとって素晴らしい瞬間である。 そのマネジャーや経営者は、部下や社員に対して、本当に大切な報酬を与えている。
では、その「本当に大切な報酬」とは、何か。それは「目に見えない報酬」です。 「仕事の報酬とは何か」と問われると、しばしば、我々は、給料や収入というものを頭に描いてしまう。たしかに、それも「仕事の報酬」である。また、ときに、我々は、役職や地位などを考えてしまう。 .たしかに、それも「仕事の報酬」である。
しかし、これらは、いずれも目に見える報酬です。そして、我々は、いつも、「目に見えるもの」に目を奪われてしまう。「目に見えるもの」だけを見つめてしまう。しかし、仕事には、実は、「目に見えない報酬」がある。 目には見えないけれども、決して見失ってはならない、大切な報酬がある。
収入や地位とは違った、それらとは決して比較することのできない大切な報酬がある。
では、その「目に見えない報酬」とは
第一が、「能力」
一生懸命に仕事をすると、職業人としての「能力」が身につく。良い仕事を残そうとする努力を通じて、職業人としての「能力」が磨かれる。そのことは、まぎれもなく、「仕事の報酬」です。
第二が、「仕事」
一生懸命に仕事をすると、良い仕事を残すことができる。職業人としての能力を磨くことによって、優れた仕事を残すことができる。それもまた、素晴らしい「仕事の報酬」です。
第三が、「成長」
一生懸命に仕事をすると、人間として「成長」できる。仕事の困難と悪戦苦闘し、仕事の仲間と切磋琢磨することによって、一人の人間として「成長」していくことができる。それは、ある意味で、「最高の報酬」です。 すなわち、「能力」「仕事」「成長」それが、「目に見えない三つの報酬」です。
我々は、「仕事の報酬」というものを考えるとき、収入や地位といった「目に見える報酬」ではなく、これらの「目に見えない報酬」に目を向けることが極めて大切です。 なぜなら、報酬というものには、二つの種類がある。
一つは、「自ら求めて得るべき報酬」。もう一つは、「結果として与えられる報酬」。その二つです。 しかし、我々は、この二つを、しばしば混同してしまう。例えば、収入や地位である。これは、そもそも、「自ら求めて得るべき報酬」ではない。
良い仕事、優れた仕事を成したとき、「結果として与えられる報酬」です。これに対して、「能力」「仕事」「成長」というものは、「自ら求めて得るべき報酬」です。 我々は仕事を通じて、それをいかに得ることができるか。 それを、日々、追求しその二つの違いを深く理解しておかなければならない。
明らかな錯誤
なぜなら、いま、世の中には、このことに関する錯誤が溢れている。例えば、「キャリア・アップ」のブームがある。いま、世を挙げて、これが一つの大きなブームとなっています。書店には、「キャリア・アップ」についての本が並んでいる。 いかに自分の商品価値を高め、それを収入に結びつけることができるか。そして、有利な職業に転職することができるか。そういった問題意識に答える本です。また、雑誌では、頻繁に「キャリア・アップ特集」そして、それらの雑誌の中には、給料の良い会社はどこか、年俸の高い職種は何か、待遇の良い企業はどこか、人気のある職業は何か、そういった情報が濫れている。 こうした本や雑誌が煽り立てる「キャリア・アップ」のブームの中で、我々は、無意識に、一つの錯誤に巻き込まれている。
収入や地位というものが、「結果として与えられる報酬」であることを忘れ、「自ら求めて得るべき報酬」であると考えてしまう。 そして、しばしば、我々はそれを得るための「うまい方法」と無意識に思ってしまう。 しかし、それは、明らかな錯誤です。 我々が、真に「仕事の報酬」というものを求めるならば、自ら求めて得るべきは、「能力」「仕事」「成長」という三つの報酬です。
その「目に見えない三つの報酬」こそ、深く、求めなければならない。なぜか、それらの報酬を求めないかぎり、仕事の本当の喜びは、決して得られない。 いま、なぜ、我々は、働くということに、喜びを感じなくなってしまったのか。それは、我々が、「目に見える報酬」に目を奪われ、「目に見えない報酬」を見失ってしまった。そうであるならば、我々は、その見失ってしまったものを、深く見つめなければならない。
幹部が使命感を持って仕事に挑戦し、部下の成長を願って指導すれば、その部下は「目に見えない報酬」を意識した行動を起こすようになるだろう。
参考文献:『 仕事の報酬とは何か』 著者 田坂広志