■ホーソン効果
経営力を強くする上で、社員のモチベーションを上げるには、今の仕事のやり方を根本的に変えなければ、解決できないと思いがちです。しかし、自然に気づかす方法で実践している会社があります。
ディズニーランドでは、キャストのやる気を引き出し、仕事に誇りを持ってもらうために「ナイトホージング」という制度を設けています。ナイトホージングとはパーク内が閉園した後、毎晩数百人ものナイトシフトの清掃スタッフが、パーク内のすべての床を水洗いし拭きあげる作業のことをいいます。
ディズニーランドで働くキャストは、帰る頃になると、ナイトスタッフが広大な敷地内の床面を水洗いしている場面を毎日観ることになります。 一生懸命ナイトホージングを行っている様子を観る、また見られていることを意識することで、同じキャストとして働く人たちに刺激をあたえ、モチベーションを上げています。
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ホーソンという名は、かつて産業上のリサーチが行われた工場に由来する。 リサーチの目的は、工場の生産高は、どんな変化が原因で増減するのかを突きとめることだった。
しかし、リサーチした人々が驚いたのは、変化するものが何であれ生産高が増したことである。
ホーソン工場は、シカゴにある電話機を製造する大工場だった。当時ウェスタン・エレクトリック社であった。いまではAT&Tの製造部門の核になっている最大の工場である。
実験が始まったのは1924年だが、特別な目的があるわけではなかった。そもそもの目的は単に、照明が労働者の生産性にどう影響を及ぼすか、それを調べることだったのである。判断すべき点はこれだった。工場にはもっと明かりが必要か否かであった。
実験の結果は、単純な実験からは単純な結果が出る。明かりが多くなればなるほど、業績はよくなる。つまり明かりが増えるにつれ、生産性もあがった。
意外な結果
ところが、そのあとで驚くべきことが起きた。照明をもとの明るさに戻しても、生産性が落ちなかった。 リサーチしていた人たちは理由がわからなくて、労働者を実験グループと非実験グループに分けてもう一度実験をした。実験グループのほうの照明は、明るさを3段階で切り替え、非実験グループのほうはずっと同じ明るさにしておいた。
これで、出るはずの結果がはたして出たか。 答えはノーだった。実験グループも非実験グループも、生産性が飛躍的に伸びた。 最終的に実験者たちは、何かが生産性を高めているが、それは照明じゃない、という結論を出した。 リサーチをしていた人たちは、経営陣を説得して、さらに実験を重ねることにした。
今度は照明じゃなく、中休み、コーヒーブレイクにあたるものだが、これの影響を調べようとした。そして志願者を5人だけ募り、隔離した部屋に入ってもらい実験した。 志願者たちは全員が女性だった。前は100人という大きなグループだったが、今度はグループ5人で、出来高に応じて魅力的な賃金が支払われることになった。
それから、おしゃべりについての規則をはじめ、いくつかの規則がゆるめられた。そして何よりも、経営陣の注目を浴びることになった。
あらゆるものを変えて、さらにもう一度変える
この新しい環境のもと、実験の目的でもある条件が加えられた。 つまり、ワークブレイクの長さがさまざまに変えられた。 リサーチをする人たちは目を見張った。休憩時間の長短にかかわらず、このグループの生産性が30パーセントあがった。特に驚いたのは、休憩時間がゼロになっても、彼女たちの生産性が高い数値を示したことだった。
実験は、リサーチとしては大失敗だったと言えるかもしれない。プロジェクトの目的はワークブレイクの影響について答えを導き出すことだった。なのに、答えらしい答えは出ていない。その一方で、生産性が30パーセントもあがったなんて! これはなぜだろう? 賃金が魅力的かどうかがポイントだったんじゃないかの意見があった。
研究リポートを書いた人たちによると、賃金の違いはたかが知れていて、生産性があがった理由としてはせいぜい半分にしかならない。じゃあ、あとの半分は何だろう。 志願者たちからは不信感や不安、つまり「権力への恐れ」といわれるものがほとんどなくなった。
彼女たちは以前より楽しそうにおしゃべりをし、自分たちのことを会社の役員や観察している我々にいろいろ話してくれるようになった。 仕事に対する意欲も高まった。彼女たちの間には個人的な関係が新たに生まれ、友情という強い絆にまで発展している。互いの家を訪問し合ったり、一緒にパーティーやダンスや劇場に出かけたり・・・・。
仕事においては、自分の生産性があがったために、友だちに十分ではないかもしれないが休憩してもらえるようになったと、5人が口をそろえて言うようになった。
ホーソン実験からの教訓
1)「だれに見られているのか?」自分を、自分の望む方向に変えるための友人や同僚の視線を意識して、その視線のなかに自らを置くことで変化を起こしやすくする。2)人は試すことが大好きだ。みんな自分から進んで実験に参加する。
3)人はチームのかなめになりたがり、そして"実験"グループはエリートのチームだ。自分はチームのかなめだと信じ込むと、人々は互いに協力し合うようになり、そのために監督者の仕事までどんどん自分たちでこなすようになる。
4)一つの小さな変化の中にこそこそ隠れていても何も起こりはしない。だけどその何もない状態を一気に変えたら、何かすごいものが手に入る。ホーソンの場合だと、生産性が30パーセントもあがった。
ホーソン効果と同じような事例では
ディズニーランドはパート・アルバイトとして働く人たちのモチベーションを維持するために、スピリット・オブ・東京ディズニーランドというのを行っている。 これは、年に1回全キャストに投票用紙が配布され、一番生き生きしていたキャストを1名推薦させ、職場ごとにもっとも票を集めたキャストを表彰する。
ディズニーランドは社員がキャストを評価するのではなく、キャスト同士が評価をするようにしている。そうすることで、他のキャストに認められたい、目標になりたいという気持ちを強くさせ一生懸命仕事に取り組むように促している。
私などは他の人の行動に影響をうける典型的な人間である。人が観ているととても頑張るが、自分だけだとなかなかモチベーションを上げられない傾向がある。
この心理を応用し職場で活用すれば、社員のモチベーションがより生き生きとなり、組織の活性化、経営力のアップへと繋がる。
参考文献:「仕事はたのしかね? 」著者 デイル・ドーテン