■ 望ましい行動を増やす

  ある行動をして「ほしいものが得られる」と、将来その行動頻度は増加する。これは、例えば「提案書を提出したら認められた」「ファインプレーをしたら歓声がわいた」といった場合です。

行動した結果、期待した反応が得られること、すなわち「ほしいものが得られる」状態です。 例えば、ある上司が、部下の出してきたレポートに対して、「とてもよかったよ」などと認めたり、「この部分はこういうアイデアもあるね」などの的確なアドバイスをしたりしたとします。

するとその部下は、自然に「次もいいレポートを出そう」という気持ちになるでしょう。これが「承認による行動強化」です。 承認による行動強化をうまく使える上司に対して、部下は積極的にアドバイスを求めたり、この上司の指示に真っ先に取り組んだりするようになるでしょう。まり、自分の取った行動が「すばらしい」「とてもよい」と認められる(承認される)ことで、その行動が強化されるのが「承認による行動強化」です。

承認されると人はその行動を繰り返す

ある行動をすると、ほめられたり認められたりする場合、つまり「ほしいものが得られる」場合、人はその行動を繰り返したり、行動の量を増加させます。これが「承認による行動強化」です。 「承認による行動強化」は、どんな場面で見られるでしょうか?

例えば、スポーツの世界では頻繁に見られます。プロ野球やプロサッカーには応援団やサポーターがいて、選手がファインプレーをすると熱狂的な声援や歓声が起こります。こうした観客の反応によって、選手たちは動機付けされると共に、自分たちにどんなプレーが期待されているのか、ということを瞬時に理解できるわけです。

企業、職場では あなたは、今週、職場でどのくらい「承認による行動強化」を手に入れることができましたか?また、部下に対して、あなたはどれだけの「承認による行動強化」を与えることができたでしょうか 残念ながら、おそらくスポーツと比べたら、ものにならないほどの少さではないでしょうか?

「最近の若い者は、どうも根気が足りない」などという言葉をよく聞きます。「最近の若い者は・・・・」といったセリフはローマの遺跡にも刻まれていたそうですから、いつの時代も次の世代に対する戒めとして言われ続けてきたものです。

しかし、どうも今までとは少し異なってきたように感じます。 これは、今の若い人たちが育った環境があまりにも激変したからだと思えてなりませ.ん。幼いときからゲームに触れ、インターネットを操り、携帯電話を持ち歩いている世代です。町ではコンビニエンスストアが24時間営業しており、常に便利さを追求してきた社会の恩恵にどっぷり浸かっている世代です。

言いかえれば、日常生活から膨大な量の「承認による行動強化」を受け続けてきた世代なのです。即、確実に、メリットを手にしてきた世代が、面倒くさいことや時間がかかることには抵抗感を示し、易きに流れやすいのもうなずけます。

そんな彼らが社会人になり、会社に入ったとたんに「承認による行動強化」の量が激減したら、どうなるでしょうか すぐに会社をやめたり、業務に打ち込まず、を取ったりするのもわかる気がします。 プライベートな部分へ逃げるような態度を取ったりするのもわかる気がします。

ほめるなら、「やっている最中」が効果的

「承認による行動強化」は、「行動をしている最中」、次に「行動が終わった直後」に行うのが効果的です。

それは、行動者が「どの行動に対して、『承認による行動強化』が行われたか」をはっきりつかむことができるからです。 先ほどのスポーツの世界で言えば、競技の最中に「承認による行動強化」が得られるために、「どんなプレーをすればいいか」が明確になっています。

私たちがゴルフをする場合なども同じです。打ち終わった直後に「ナイスショット!」と声がかかるから意味があるわけです。これがもし、全ホール終わってから、風呂で汗を流し、ビールで一杯やっているときに、「そうそう、君の3番ホールのショットはよかったね」と振り返られても、打った本人は何がどうよかったのか、ピンと感じないと思います。

ビジネスの世界でも同じです。 新人営業マンに、先輩社員や上司が同行営業することがあります。目的は、新人営業マンの前で営業の手本を見せ、モデルとしてもらうこと、そして、新人営業マンの営業を横で観察し、後で「ここがよかった」「このやり方はだめ。こうするといい」というようにフィードバックすることです。

特に後者の場合は、営業が終わった直後に「振り返り」を行うのが最も効果的です。 名刺交換などのビジネスマナーから、ヒアリングの方法、話の展開の仕方、企画書などのプレゼンテーションの仕方などで、よかった点、改善点を即座に指摘するのです。

そうすると、「本人の行動と、指摘の関連性」が明確なため、望ましい行動は維持され、定着化します。同時に、悪かった点については改善の方向が示され、次回の営業の課題となるわけです。

参考文献:行動原理のマネジメント 著者 中島克也 ダイヤモンド社