■ 言語を使用できたことで生存できた

  約10万年ほど前に生息していたネアンデルタール人は人類に近い種であったが滅んでしまった。
ネアンデルタール人の逸話として、アメリカの人類学者カールトン・クーン氏は我々現世人類とよく似ているとコメントし、 「流行の服を着てニューヨークの地下鉄に乗っていてもネアンデルタール人とは気づかれないだろう」とのことが話題になった。

この時、ワイシャツにネクタイをつけ、ソフト帽を被って地下鉄に乗っているネアンデルタール人のイラスト(カリカチュア)を掲載した新聞があった。 たちまち新聞は人気を呼び、ネアンデルタール人が一気に有名になった。
と同時に、ネアンデルタール人が我々の遺伝的な先祖であるという大きな誤解も振りまかれた。

また、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスを比べると、ネアンデルタール人の方が脳は大きく重たかったようだ。 もしかしたらネアンデルタール人の方が賢かったのかもしれない。

ネアンデルタール人が絶滅したのは、種族間の争いや大災害などの異変の要因ではないそうである。 ネアンデルタール人の気道は短いため、母音がうまく発音できなかったらしい。

そのため、正確な発音ができず、相手に意図したとが伝達できなかった。 我々の祖先であるホモ・サピエンス(ラテン語で知性ある人)は気道が長く、声帯はのどの奥にあった。 そのおかげで、複雑な言語を発することができ、豊かなコミュニケーションが可能であった。

その結果、生存のために獲得したいろいろな知恵を言葉で次の世代に伝えた。そのことで、生存競争に勝つことができた。

例えば、森林に生息している草、キノコ類を食用にして、誰かが一度は口にいれ、経験し、食用として問題がないかどうかを他の人に言葉で伝えた。 もし、その草などに毒がふくまれていたとき、つぎからその草は採集しないはずである。
また、狩猟では動物の移動場所を仲間に教え、食料の確保に努めたはずだ。 ネアンデルタール人は、言葉の手段が貧弱のため、他の人から知識の伝達がなかった。

そのため、自分だけの感で動物を狩猟し、どうしても偶然にたよるため、動物や食料の確保が困難になり、やがて衰退していったと思われる。
我々の祖先であるホモ・サピエンスはひとりではできないことでも、高度な言葉を使用することで仲間と協働して動植物の狩猟や採集などができるようになった。仲間同士の会話や、 親子で生存に重要な事柄などを口承することが可能になった。また言葉でお互いが知ったことを伝えることで知識の共有化が進んだ。

 そのことで、知識を蓄積でき、厳しい生存競争に打ち勝ったのだという。  我々人類の祖先は、生存に適した方法や集団を作り、組織にリーダーを置き生存するためのルールをつくり、成果を分配しながら繁栄してきたといえる。 人としての隆盛のもとは言語、それによる知識の共有。知恵が人を活かして、繁栄を支えている。

 それは知識をデータベースとして蓄積しないと生き残れないことと同じである。
このことはこの高度な情報化が進んだ社会では、物事について考える力と考えたことを言語化する能力、それを文章にする能力などのコミュニケーションや情報の活用が企業の存亡を決めてしまうことを教えてくれている。
参考文献 日経ビジネスオンライン