トヨタ自動車が純利益を1兆円以上も稼ぎ出す企業になり、対照的にアメリカの超有名な自動車会社が赤字をだして、大規模なリストラをせざるを得ない状況になっている。
一昔前では考えられないことである。
このことで、トヨタ生産方式が以前にもまして話題になっている。
ただし、トヨタ生産方式を導入したが、改善活動が定着せず、困っているという話をよく聞く。
本を読んでトヨタ生産方式を実践しようとするが、実際には、なかなかうまくいかない。
定着の難しさなど実践上の壁を嘆く声も耳に入る。
なぜなのだろうか?大きな理由は、トヨタ生産方式がただ単に、カンバン方式でマニュアルどおり行っているのではないため、だと思われる。
トヨタ生産方式は命令で人を動かすのではなく、なぜ?と問いかけ、考える習慣を養うことを意識して、「自ら考えること」を大切にしている。
だから人が成長し、企業の可能性を無限大に広げるのである。
だが、私たちは上司からの指示を待つことなどのマニュアル的な安易さに慣れてしまっている。
だから、その分、思うように知恵が浮かばない。
知恵や工夫は「今までのやり方を変えよう」「やりがいある組織に変えよう」と真剣に考えないと浮かばない。
しかも、人は本来変化を好まない。慣れたやり方を変えることに強い抵抗感を示すものだ。
トヨタ生産方式のものの見方や考え方、行動の仕方はこれまでとはまるで違う。
だから、簡単には導入しづらいものである。トップやマネージャーが指示、命令するだけでは実践できないのはそのためだ。
トヨタ生産方式はマニュアル方式ではないから、現場に定着させるには、かなりの根気と忍耐が必要になる。
最も大切なことの一つは、「現場の人たちに自分で解決方法を考えてもらう」ことである。
どこにムダがあり、どう問題解決(改善)をすればムダ取りができるか。その最も合理的な答えの積み重ねが、トヨタ生産方式の真髄を形成している。
自分で解決方法を導き出せた人は、次の改善に容易に取り組むことができる。しかし、マニュアルやマネージャーの指示に従った人は、そこで成長が止まる。
だから、自ら問題点を探し、答えを見つけ出す努力をしていかなければならない。
とはいえ、頭ではわかっていても実際の現場に入るとうまくは進まない。
現場で問題が発生したとき、マネージャーと部下は、お互いに「指示したい」「教えてほしい」という奇妙な心理的一致に陥ったりする。
しかし、そこでグッと踏みとどまらなければ、改善は根づかない。
マネージャーが部下を指導する場合、大切なのは我慢である。「あなたはどう思います
か」と考えさせ、部下の答えに対し「そうじゃない。こうすればいいんだよ」と指示したくなるのを抑え、「もう少し、こう考えてみたら」とアドバイスをすることである。その忍耐が人財を育てていくのだ。
このように各自が主体的に行動できる体制とカンバン方式が一体となって、はじめてトヨタ生産方式が根づくのである。
この方法は生産現場だけではなく、営業、開発などすべての部署でも行える組織体制なれば、その会社はトヨタのようにエクセレントカンパニイになっていく。