経営戦略策定の一番目の原則である顧客価値創造は、企業の経営を左右する重要な政策である。
お客様の本音を聞き出すことは難しい。かって、松下電器が自動炊飯器を開発していたとき、責任者は炊飯器をお客様に使用してもらって感想をきくことにした。
普通なら使用後、アンケート用紙に質問をならべて、それに記入してもらう方式が多い。そのやり方では想定した質問だけの回答になり、お客様の本音が分からない。そこで、お客様たちに部屋に集ってもらい、炊飯器を使用しながら、お互いが感想を言い合っている最中に、責任者はなにげなく後ろにまわり内容をメモした。
このような場では、お客様は自由に発言しているので、本音や忌憚のない批評がでてくる。
たとえば、炊飯器の蓋をあけたとき、蓋の角から蒸気の水滴が炊飯器の外に落ると、かすかに聞こえた。
開発責任者はそれをメモして、ただちに改善対策会議を開いた。そこで、でてきた改善は蓋の付け根にプラスチックで水滴を受留める簡単な器具を取り付けた。
当時、その装置で水滴が落ちるが改善され、松下電器の炊飯器がよく売れたことが話題になった。
また、最近では、以外な問合わせからヒントをつかみ、それを事業化した事例がある。
「炊飯器で煮物料理を作っても、壊れたりしませか。」との問合せがあった。この問合せは家庭料理の裏技として、炊飯器を使用して煮物を作ると美味しく出来るという口コミ情報が主婦の間に広がっていったものであった。
担当者はフッ素コーテイングしているのでうちなべに食材のにおいが移るのでお勧めできませんと回答した。
しかし、その後も同じような問合せが幾度もよせらえれた。なんどもそんな声があがるならと、実際に炊飯器を使って肉じゃがとビーフシチューを作った。
結果は意外に美味しかった。具材は崩れずに見栄えがよかった。煮汁は澄んだままで、ドロドロになったりはしていなく、具材の中まで味が染み込んでいた。
それならば、もっと改良するため、技術者は火加減のコントロール、超音波を使用し煮汁を染み込ませる、改良を積みかさね、2つの温度センサーと内蔵したマイコンによって内釜の温度を調理に適した状態に制御した。
火を使わず、全体をむらなく加熱できることが他の調理機器にない特徴で、多機能炊飯器を作り出した。この多機能炊飯器がおおきな評判になった。
クレーム、改善情報を問合せセンターがうけて、端末機で問合せ入力する。この情報を担当者が簡単に閲覧して、問われている問題の解決方法を入力する。トップがその判断に指示をだす仕組にしておくとが重要である。
お客様のニーズ、ウォンツを定期的に収集して、分析する。分析した上で、その問題点に対してアクションを起す組織にしておくことである。
ITを使用してもお客様の情報にたいして、行動をおこさなければ、IT投資がムダになる。そのためにIT導入の目的を明確して、その目的を全社員に周知、徹底をすることである。