一流起業家への道
■ 目次
一流起業家への道 その23 経営計画5
一流起業家への道 その22 経営計画4
一流起業家への道 その21 経営計画3
一流起業家への道 その20 経営計画2
一流起業家への道 その19 経営計画1
一流起業家への道 その18 融資2
一流起業家への道 その17 融資1
一流起業家への道 その16 官公署への届出6
一流起業家への道 その15 官公署への届出5
一流起業家への道 その14 官公署への届出4
一流起業家への道 その13 官公署への届出3
一流起業家への道 その12 官公署への届出2
一流起業家への道 その11 官公署への届出1
一流起業家への道 その10 社会保険加入3
一流起業家への道 その9 社会保険加入2
一流起業家への道 その8 社会保険加入1
一流起業家への道 その7 登記手続4
一流起業家への道 その6 登記手続3
一流起業家への道 その5 登記手続2
一流起業家への道 その4 登記手続1
一流起業家への道 その3 株式会社と有限会社の違い
一流起業家への道 その2 会社の種類
一流起業家への道 その1 プロローグ
                                       

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 ■ 一流起業家への道 その23 経営計画5  

いくらりっぱな経営計画が作成されても、予算と実績を対比して、
その「ズレ」の原因を見極め、修正のための具体的な方法を
考えなければならない。

そのために、少なくとも毎月1度、例えば毎月5日と決めたなら
その日に、「経営会議」を開くべきだ。
しかし、残念なことにこの経営会議を、「三悪会議」にして
しまっている会社がかなり多い。

「三悪会議」とは、「不準備会議」「演説会議」「言い訳会議」
のことだ。
「不準備会議」とは、ノートと筆記用具しか用意せずに書記係の
ような人ばかり集まりの会議である。
「演説会議」とは社長ばかりが一生懸命ハッパをかけている会議で
ある。
「言い訳会議」とは、達成できなかった理由だけに責任者が終始
している後ろ向きの会議である。

この「三悪会議」を脱却し、「事前に会議メンバーか打つ手を持ち寄り」
「社長だけに頼ることなく現場責任者を中心に知恵を絞り」
「過去のこと以上に明日以降どうするか」を具現化できたときに初めて
「ズレ」が修正される可能性が出てくる。目標達成のための改善行動と
協力関係の具体化が重要なのだ。会議を一生懸命やっても、「三悪会議」
に終始していたら時間の浪費にしかならないのだ。

今一度、経営会議の進め方について整理してみよう。
1. 経営会議の目的をハッキリさせること
a.経営計画どおりの成果必達を行うこと。
つまり計画即実績主義の実現が目的。
b.実績数値および重点施策に対する挑戦行動の結果と、その計画との
   差異などの問題点を発見し、それを解決する具体策を討議し、さらに
   その解決策の実行を確認すること。
c.先行管理(先見→先手→先攻)、差額挑の実践策を検討すること。
d.各部門間の問題について調整をはかること。

2. 基本的に討議されるもの
a.一定期間に遂行すべき結果はどうであったのか。
b.なぜ、このような結果になったのか。
c.なぜ、このような問題が出たのか。
d.だから、どう対応していくのか。
e.その対策はだれがいつまでに実施するのか。
f.その対策は、どう実施されたのか。

3. 決定事項実施の進行チェック
a.会議の議事録の作成―「有限実行」のもと決定事項を必ず実施させる
ために必要。
b.問題点処理管理表の作成―会議で問題点についての結論、
すなわち対策が出されたら、その実施チェックを行わなければならない。
結論(対策)が出たとき、担当や期限を定め、次回の会議では冒頭に実施
状況を確認する。
c.対策実施進度表を作ること―企業全体の成果をいう点から、対策の
タイミングを失することなく実施することが必要。

さて、有限会社A'sソフト21はA氏と妻B子の2人だけの小さな会社で
あるが、作成した経営計画の予算と実績の差異分析を毎月1度必ず行い、
先行管理を行おうと誓った。

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 ■ 一流起業家への道 その22 経営計画4 

経営計画を策定するとき、売上高及びそれに対応する変動費の
額の計画をすることが何より大切である。
そして、その次に計画しなければならないのが、
1.経費計画
2.人件費計画
3.投資計画
4.資金繰り計画等である。

具体的に個々の計画について検討してみよう。
まず、経費計画だが一般的には、過去三期の販売費及び管理費の
額を科目ごとに時系列に並べて、その趨勢を比較検討しながら、
今後の予算額を決定する。

余談だが、最近2つの会社の経営計画を策定したが、その内容に
ついて述べてみる。一つの会社は設立47期を迎える会社だが、
過去三期の販管費の合計(この場合、人件の額を含む)が、
例えば節税のために多額の役員退職金を出したある期を除けば、
その合計額がほぼ3期とも等しくなった。

これは現在の経営環境が不況であるとか、デフレであるとかに
多分に起因しているかもしれないが、社歴の長い会社では、
経営計画もしっかりしているし、長年の経験から経費について
その出費を抑える知恵や工夫があるので経費総額が固定費化する
傾向がある。
反面、企業風土が停滞しているような会社では、削減できる経費を
削減しないで放置している結果、経費が固定化していることもある。

そして、もう一つの会社は、設立1期目の会社であるが、この会社の
場合、当初予定していた経費の額より、設立数ヶ月は予算をかなり
超える経費を出費した。何故そのような事になったかと言えば、
一つは当初予定していた売上高をかなり上回る売上を計上出来たので、
それに関連してパートの人数を増やさなければならなかったこと、
そしてもう一つは、その他の経費について会社運営の経験のなさから、
何かと思わぬ出費がかさんだこと、さらにそれを抑える知恵や工夫も
なかったというのが原因である。

このように、考えると同じ経費でもある会社では固定費になり、
ある会社では変動費になったりする。経費の管理面から言えば、
売上に連動する変動費のほうが、管理しやすいわけだか、固定費化
している経費でも予算をオーバーしないよう努力することが大切である。

さて、有限会社A'sソフト21であるが、この話を聞いたA氏は、
電話料金、郵便料金、水道光熱費、事務用品費等について、たとえ
わずかであっても、どのようにすれば節約できるか考えることにした。

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 ■ 一流起業家への道 その21 経営計画3 

事業をはじめるに当たって見込める予定売上高が、
必要売上高に満たない時、どのような方策を講じれば
よいのだろうか。

前回説明したように、必要売上高は、固定費、目標利益、
変動比率の組み合わせで変化する。
したがって、消極策での解決方法は、
1.固定費を減らし
2.目標利益を下げ
3.変動比率を引き下げ
その結果、必要売上高を予定売上高まで引き下げるという
方法になる。

一方、積極策での解決方法は、予定売上高を必要売上高まで
引き上げると言う方法になる。そこで、それぞれについて
個々に検証してみよう。

固定費を減らすには、どうしたらよいか。有限会社A'sソフト21に
ついて言えば、その固定費の大半は、A氏と妻B子の役員報酬である。
現在、A氏の役員報酬は35万円、B子の役員報酬は20万円である。
極端な話、この役員報酬を減額すれば固定費は減らすことが出来る。
しかし、この金額を確保しないと生活できないなら、不足分は、
アルバイトでもして稼ぐしかない。

次に、目標利益を下げるには、どうしたらよいか。有限会社A'sソフト
21の目標利益は、借入金返済額をベースにしている。
したがって、単純に考えれば借入金返済額を減らせばよいのだから、
投入できる自己資本を増せるまで開業を延期すればよいことになる。
そして、次に変動比率を引き下げる方法であるが、有限会社A'sソフト
21の変動費は外注費が100%と言っても過言ではない。

したがって、変動費率を引き下げるには、A氏が外注に出す分の仕事まで
自分でこなせば解決できる。これら消極策での解決策は、いずれにしても
A氏とB子になんらかの負担を強いる。それだけ起業するのは厳しいと
いうことを認識すべきである。

次に、積極策での解決方法であるが、これは予定売上高を増額すればよい
のだが、それはどうすればよいのだろうか。
有限会社A'sソフト21はソフトウェアの開発会社である。
売上を増やす一番の方法は、他の会社にはない技術力を売りにするか、
あるいは自社のオリジナル商品を開発するかである。そして、次に考えら
れるのは営業力をアップさせて受注額を増やすことである。
ただ、これらの積極策は、それを実行するためにはなんらかの投資を必要とする。

したがって、投資効率を考えて必ず成功するものでないと、開業してもすぐに
廃業しなければならないという結果を招く。積極策で解決するのは、消極策
よりもリスクを伴うので、よほどの自信がない限り、有限会社A'sソフト21の
ような小規模な会社では無理だろう。

幸い有限会社A'sソフト21の予定売上高は、必要売上高を上回っているから
よいが、現在のように起業するのに厳しい環境下では、必要売上高を確保できる
見込みのない場合は、起業すべきではないということだ。

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 ■ 一流起業家への道 その20 経営計画2 

経営計画を作成するとき、注意しなければならないのは、
その計画が、
1.実現可能であるか
2.具体的であるか
3.数値で示されているか
4.タイムスケジュールを伴っているか等である。

経営計画は、事業遂行の方法を計画したものであり、
いろいろな計画から成り立っているが、その中から利益計画と
資金計画について検討してみることにしよう。

利益計画は、収入と支出の見込み、採算性の検討などから、
利益計画のあり方を計画したものである。
利益計画では、まず、事業経営でどれほどの利益を必要とする
のかという、目標利益を設定する。

目標利益は、各企業によって異なるが、一般的には次のように
考えられている。
1.投下資本にふさわしいと判断される利益
2.売上高に対する適正利益
3.借入金の返済に必要とされる利益
4.同業他社に負けない利益
5.自社の過去の平均以上の利益等である。

有限会社A'sソフト21の場合、融資の章で説明したように、
国民金融生活金融公庫から、元金300万円で返済期間3年という
条件で融資が受けられたこと、設立1年目なので着実に経営したい
とのA氏の希望により、目標利益としては、上記2.の借入金返済に
必要とされる利益を選択した。借入金返済の可能性の視点から、
目標利益を求める算式は、
(年間借入金返済額−年間減価償却費)÷(1−0.5)
※税率を50%とした場合
ということになる。
そして、この目標利益を獲得するために、必要な売上高は、
次の算式で求められる。
必要売上高=(固定費+目標利益)÷(1−変動比率)
※変動比率=変動費÷売上高

ここで、今一度、有限会社A'sソフト21の経営計画を策定するに
あたっての前提条件を整理しておこう。前回までに述べたように、
有限会社A'sソフト21の年間借入金返済額は100万円、減価償却費は
200万円でパソコン関係の器具備品をそろえるつもりなので、
初年度は200万円×0.438=876,000円(定率法:耐用年数4年)、
固定費は役員報酬等の人件費関係が月額63万円 、その他の固定費を
月額10万円として計73万円、年間では876万円になる。
さらに、変動比率はソフト開発に当たって外注にかなり依存する
見込みなので、40%とする。

以上の前提条件から算出される必要売上高は、上記算式に当てはめると、
年間約1500万円ということになる。A氏の予定している売上高は、
これより当然多い数字であるが、仮に必要売上高に達しないとき、
どのような方策をうてばよいのか、疑問に思ったA氏は、Kに質問
してみることにした。

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 ■ 一流起業家への道 その19 経営計画1 

前回、融資を受け入るときに経営計画を作成することが
必要であることは述べた。
しかし、融資を受けるために経営計画を立てるのではなく、
経営計画の本質は会社の将来についての意思決定することで
ある。換言すれば、企業の進むべき目標と進むべき分野を
明らかにして、その実現のためにどのような対策をとるか、
それを煮詰めた計画が経営計画である。

ただ、このようにカッコよく経営計画を定義づけても、
あくまでそれは予定である。したがって、経営計画を立てても
予定通りいくとは限らないし、当然、経営計画を立てても
直ぐに利益が出たり、資金繰りが改善されるというような
ことはない。

このようなことから、中小企業の経営者は経営計画に消極的な
人が多い。しかし、経営計画無しで企業経営を行うのは、
設計図なしで家を建てるのに等しい訳で、現在の厳しい経営
環境では必ず行き詰まる。目標と将来のための現在の行動が
しっかり計画されていれば、あとは実行するだけだから、
経営計画にこの実行の内容まで盛り込んでおけば、あとは
この計画のチェックとフォローをすればよいことになる。
現在をいい加減に過ごせば、将来はないし、逆に将来の目標が
しっかりしていれば、現在をいい加減に過ごすことは出来なく
なるというのが人生だが、経営計画はまさに人生そのものと言える。

ところで、経営計画に盛り込む将来は本当に予測できないので
あろうか。確かに、100%当たる予測などありえない。しかし、
経営社が自社の将来を考えるとき、まず、外部環境を分析して、
Opportunities(機会)とThreats(脅威)をつかみ、内部環境を
分析して、Strengths(強み)とWeaknesses(弱み)を知るという
SWOT分析から入る。その分析の結果、目標と現実の
ギャップを埋める戦略代替案を立てる。
戦略代替案は、H.I.アンゾフによれば、製品(技術も含む)と
市場(顧客ニーズを含む)との組み合わせで決定する。
そして、それは次の4種類からなる。

1. 市場浸透…現在の市場で現在の製品をより多く投入する。
2. 市場開拓…新しい市場に現在の製品を投入する。
3. 製品開発…新しい製品を開発して、新しい市場に投入する。
4. 多角化 …新しい製品を開発して、新しい市場に投入する。

一見、無手勝流に経営しているように見える経営者でも、
自分の会社の将来を考えるときは、SWOT分析やアンゾフの
理論を知らなくても、無意識にこのような考えかたで会社
の将来を考えているはずである。これは、まさしく自社の将来を
予測して言えるのではないであろうか。経営計画は、このような
社長の考えを全社にわかるように、単に明文化したものに
すぎないのである。

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 ■ 一流起業家への道 その18 融資2 

融資の返済元金は、儲けつまり利益で返すことは前回説明した。
したがって、儲けで返すということは、当然税金がかかると
いうことだ。前回の借入条件で返済すると、1年間の返済元金は、
約100万円になる。今、諸条件を無視して、1年間100万円の元金を
返済するには、どれ位利益を上げなければならないかと言えば、
それは年間約200万円ということになる。

これはどういうことかというと、現在、法人税の実効税率は50%
(50%というのは、最大級で実際は40%〜50%の間というのが大半。
しかし、便宜上、ここでは50%とする。)である。
ということは、利益の半分は税金として、納税しなければならない。

つまり、年間200万円の利益に対して、100万円の税金を納税して、
残りの100万円が元金の返済源資になるわけだ。安易に融資を受けても、
これだけ利益を上げないと、借入金返済のために、さらに借入をしな
ければならないというような事態を招くことになる。融資額が、
設備資金や運転資金に使われ、その効果が元金の支払と税金の支払を
可能にするものかどうかということを見極めたうえで、
融資を受けなければならない。

そこで、そのために作成しなければならないのが、経営計画書である。
実際、国民生活金融公庫で、新規開業特別貸付等の融資の申込みを
する場合、これから開業する者及び開業直後で決算が済んでいない者は、
開業計画書、つまり経営計画書の提示を求められる。

国民生活金融公庫で融資を受ける場合、まず、
1.借入申込書に必要事項を記載して窓口に提出する。
2.後日、調査日及び持参すべき必要書類等を記載した通知が届く。
3.調査日に出向き調査を受ける。
4.数日後、融資が認められると、指定口座に融資額が振り込まれる。

という手順で融資を受けるわけだが、これらの手順の中で一番大事なのは、
調査時に社長が担当者に対して融資を受けて、どのように事業を発展させて
いくかというビジョンを、いかに納得がいくように説明できるかということだ。
そのためには数字の根拠だけでなく、会社の経営理念などを盛りこんだ経営
計画書に基づいて説明するのが最もよい。

余談だが、かつてKは、この調査時、社長と同席し、調査を受けたものだが、
現在、神戸市や明石市の国民生活金融公庫では、税理士等の同席を認めて
いないので、調査の前には、社長に対して調査の予行演習を行ってから、
調査に臨むように指導している。

これによって、社長の緊張は和らげられ、スムーズに調査を受けられると
いう効用があるからだ。

さらに融資を受ける場合、もう1点注意しておかなければならないのが、
連帯保証人(担保を提供する場合は、不要の場合もある)のことである。
融資を受けるのだから連帯保証人は当然立てなければならないが、
有限会社A'sソフト21の場合、A氏及び妻のB子以外の人を連帯保証人と
して求められるので、あらかじめ連帯保証人になってくれる人を探して
おかなければならない。

もし、連帯保証人になってくれる人がいない場合は、商工会議所の6ヶ月以上の
経営指導を受けなければならないという条件はあるが、新規開業者経営改善貸付を
受けるのがよいだろう。

以上、Kから融資について説明を受けた、A氏は融資について、受けるのも返すのも
つくづく大変だということを痛感した。

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 ■ 一流起業家への道 その17 融資1 

Kは、官公署への届け出なければならない書類
(説明を省略した書類は、後述する。)を作成して、期限までに
提出した。

さて、A氏は、開業にあたり300万円の出資金を準備し、200万円位を
かけて設備投資をしようとしている。したがって、運転資金として
残るのは、約100万円ということになる。この金額では、少々心もと
ないと感じたA氏は、Kに公的な融資制度を利用したいと相談した。
Kは公的な融資について説明する前に、融資を受けて返済していくと
いうことがどれだけ大変かということを、資金の流れ及び損益計算の
流れにそって説明することにした。

今、仮に有限会社A'sソフト21が300万円の融資を3年間の返済期間で、
年2%の利率で借入れたとする。
この場合、元金均等返済にすると、月々の元金返済額は83,333円
(1回だけ83,345円)、利息総額は92,500円になる。一般に企業が融資を
受ける場合、その使途は、設備資金か運転資金かということになる。
まず、300万円の融資をすべて設備資金に使ったと仮定すると、300万円は
機械装置等の固定資産の取得価額に充当され消滅することになる。そして、
300万円の取得価額をもとに、その機械装置等に定められている耐用年数に
もとづいて、毎期の減価償却が計算され、徐々に費用化されることになる。

次に、300万円をすべて外注費つまり運転資金に使ったと仮定すると、
300万円は外注先に支払った時点で消滅し、その全額がその事業年度に
費用化されることになる。つまり、このように融資額が使われ、手元に
資金がなくなってから返済が始まる。

したがって、返済の源資は、売上から諸経費を控除して残った利益(儲け)
からということになる。ここで一部の簿記の知識の乏しい経営者が勘違い
するのは、元金の返済を費用と考えることだ。この誤解が何故生じるかと
いえば、元金を返済することによって、手持資金は減るわけだから、
そのことは「お金が減れば損をする、つまり費用として使ったのと同じ。」
というように考えてしまうからである。

しかし、前述したように融資額は、減価償却費として、あるいは外注費として
すでに形を変え費用化している。ここで再度、元金を費用として処理できるなら、
費用を二重計上することになる。このことは損益計算の根幹を崩すことになり、
当然認められない。したがって、元金の返済は、費用でなく、損も得もないと
いうことだ。

もう少し簡単に言えば、例えば、必要がありお金を借りたが、事情が変わり
借りたお金を使わず、数日後返済した場合、元金の返済は損も得もないという
ことは明白だ。この場合、数日間の利息分だけ損をしたことになる。企業が
融資を受けて返済をする場合、融資額を使ってから、返済がはじまるので、
そこには当然タイムラグが生ずる。しかも、その場合、元金は儲けで返す
ことになるのだから、費用と勘違いするのもの無理からぬことかもしれない。

さらに、元金は儲けで返すということは、当然その分にも、税金がかかると
いうことになる。このことについて、Kはさらに続けた。

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 ■ 一流起業家への道 その16 官公署への届出6 

Kは、簡易課税制度について説明を始めた。

消費税では、中小企業者の負担を軽減するため、
簡易課税制度という簡便な計算方法が設けられている。
原則的な方法では、前述したように、まず課税売上にかかる
消費税額を算出し、次に課税仕入等にかかる消費税額を算出して、
これを前者から控除して消費税額を算出する。
しかし、簡易課税制度では、仕入等にかかる消費税の計算を、
みなし仕入率によって計算することができる。みなし仕入率は
次のように、事業別に決められている。

第1種事業(卸売業)・・・・・・・・90%
第2種事業(小売業)・・・・・・・・80%
第3種事業(製造業等)・・・・・・・70%
第4種事業(その他の事業)・・・・・60%
第5種事業(サービス業等)・・・・・50%

これによれば、有限会社A'sソフト21のようなソフトウェア
開発会社は、第5種事業に該当するから、納付税額は、次のように
計算される。
納付税額=課税売上高×5%−課税売上高×5%×50%=課税売上高×2.5%
となり、すなわち、課税売上高に2.5%を掛けるだけで、納付すべき
消費税額を算出することができる。

この簡易課税制度をうけるためには、
1.基準期間における課税売上高が2億円以下であること。
2.この適用を受けるための「消費税簡易課税制度選択届出書」を
 所轄税務署長にその選択をしようとする課税期間の初日の前日
 までに提出していること。という2つの条件が必要である。

もし、簡易課税で計算した消費税額が、原則的な方法で計算した
消費税額より少なければ、当然、簡易課税制度を選択すべきである。
有限会社A'sソフト21の場合、スタート時はA氏と奥さんで運営
する。したがって、ソフト開発にあたっては、外注に依存することが
多くなる。
しかし、その他の経費は物販などに比べ少ない。しかも、開業に
あたって予定している設備投資は、パソコンとその他の器具備品であり、
せいぜい200万円位までである。

このような状況からすると、Kは簡易課税の方が有利であろうと、
A氏に説明した。
しかし、有限会社A'sソフト21は出資金額300万円の有限会社である。
その点では免税事業者である。しかも、多額の設備投資も予定していないし、
輸出売上もない。
したがって、あえて課税事業者になることを選択する必要もない。
であれば簡易課税を選択するかどうかについても当然、設立第1期目に
おいては考慮する必要もない。
ただし、設立2期目の終了の日までには、3期目に簡易課税を選択するか
どうかの意思決定をしなければならない。

以上のKの説明から、A氏は設立1期目においては課税事業者の届出は
しないことにした。
そして、Kは消費税についてさらに付け加えた。

まず第1点は、簡易課税制度は、廃止の方向に進むということ。
そして、もう1点は3,000万円の免税点も引き下げられるということ。
そして、最後に、消費税は制度的に見て、不条理な部分が多い税制で
あるということを。

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 ■ 一流起業家への道 その15 官公署への届出5 

税務署への届出で次に検討しなければならないのは、
消費税関係の届出である。そのため消費税について
その概要を説明してみよう。

まず、消費税の納税義務者についてである。
消費税においては、基準期間の課税売上高が3,000万円
以下の事業者は納税義務が免除される。
このような納税義務が免除される事業者を「免税事業者」という。

また、当該課税期間の課税売上高が3,000万円以下であっても、
基準期間の課税売上高が3,000万円超である場合には、納税義務は
免除されない。この納税義務の免除の判定要素となる基準期間だが、
事業年度が1年の法人の場合、基準期間は前々期である。

この結果、新設法人は、基準期間に消費税の対象となる売上高、
つまり課税売上高そのものが存在しないので、消費税の納税義務は
生じないことになる。

しかし、ここで注意したいのは、新設法人でも資本又は出資の金額が
1,000万円以上である法人については、設立1期目から納税義務が課され
免税事業者に該当しないということだ。有限会社A'sソフト21の出資
金額は300万円なので、設立1期目は免税事業に該当することになる。
ということは、消費税の納税義務は免除されるが、免税事業者である
ため消費税の還付も受けることはできない。
消費税の計算方法は、売上等にかかる消費税額から仕入・経費等に
かかる消費税額を控除することによって計算される。

通常の場合、売上等にかかる消費税額のほうが仕入・経費等にかかる
消費税額より多いので、その差額を税務署に納付しなければならない
わけだから、免税事業者である有限会社A'sソフト21は誠にラッキーと
いえる。しかし、免税事業者でも、なかには仕入・経費等にかかる
消費税額が売上等にかかる消費税額より多くなる事業者もある。

例えば次のような事業者である。先ず第1は、設立1期目で多額の設備投資を
行う事業者である。仕入・経費等にかかる消費税額のなかには、会社を運営
するために購入した固定資産等に対してかけられた消費税額も含まれる。
したがって、設立1期目で多額の設備投資をする事業者は、仕入・経費等に
かかる消費税額に設備投資の消費税が加算され、売上等にかかる消費税額
より多くなることもある。

第2に、売上の大半が輸出である事業者の場合である。消費税は、あくまで
内国消費税であり、国内において消費される物品やサービスに負担を求める
という性格から、輸出については免税とされている。
(一方、輸入取引は課税対象である。)したがって、売上のすべてが輸出と
いうような事業者であれば、売上等にかかる消費税額はゼロであり、仕入・
経費等にかかる消費税額のほうが多くなるのは当然となる。

このような例示した事業者では、基準期間の課税売上高が3,000万円以下でも、
選択により課税事業者になることができる課税事業者選択制度が設けられて
いる。課税事業者を選択するには、「課税事業者選択届出書」を納税地の
所轄税務署長に提出しなければならないが、納税義務者となるのは、原則と
してその提出した日の属する課税期間の翌課税期間ということになる。
ただし、例外として新設法人の場合はその届出をした課税期間から効果が
生じる。

ここまで説明したKは、消費税について避けて通れない「簡易課税制度」
について続けて説明することにした。

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 ■ 一流起業家への道 その14 官公署への届出4 

今、100万円で取得したパソコン(耐用年数4年)の減価償却費は、
前述の算式にあてはめると次のとおりになる。
定額法
毎年の償却額=(100万円―10万円.注1)×0.25=225,000円
注1:残存価額は取得価額の10%
定率法
1年目 100万円×0.438=438,000円注2
2年目 (100万円―438,000円)×0.438=246,156円注3
3年目 (100万円―438,000円―246,156円)×0.438=138,339円注4
4年目
  (100万円−438,000円―246,156円−138,339円)×0.438=77,747円注5

注2〜5:1年目から4年目までの償却額の累計額は900,242円であり、
残存額は取得価額の10%(端数誤差有り)が残るように償却率が
設定されている。

以上からわかるように、定額法は毎年同じ額を均等に償却する
ことになる。これに対して定率法は初期に高額の償却費を計上し、
年数がたつにつれて償却費を逓減していく方法であることがわかる。

どちらの方法を選択するかは、会社に任されているわけであるが、
有限会社A’sソフト21の保有資産の大半は、仕事柄コンピュータ
関連の資産ということになる。
それらは、技術の進歩が著しいので、当然陳腐化も急激に進む。
1年目、2年目に償却費を定額法より多く計上する定率法を選択した
ほうが、減価償却費という費用をそれだけ多く計上できる訳であるから、
定額法に比べ初期の当期利益は小さくなって当然初期の税金も少なくなる。

この説明からA氏は、減価償却資産について、定率法を選択することに
した。
(建物や無形固定資産のように定額法しか選択できないものは除く)
なお、減価償却の方法の届出は、新設法人の場合は設立の日の属する
確定申告期書の提出期限までに納税地の所轄税務署長へ届出ることと
されている。

なお、減価償却資産につき償却の方法を選定しなかった場合の法定
償却方法は、定率法である。(建物や無形固定資産等は除く)
さらに、いったん選定した償却方法も相当期間(特別な事情がない
限り3年間)を経過すれば変更することも可能である。

さらに減価償却費についてはあと2点付け加えておく。先ず1点は、
残存価額である。建物以外の有形固定資産の償却計算の基礎となる
残存価額は取得価額の10%と定められているが、これは帳簿価額が
取得価額の10%に達したときに償却を停止するのではなく、償却は
帳簿価額の5%に達するまで行うことができることが税法上認められている。
(因みに建物は帳簿価額が1円に達するまで、無形固定資産については
その取得金額に達するまで償却可能)

もう1点は、事業年度の中途で取得した資産の償却額は月割計算し、
日割計算はしないということである。資産を9月1日に取得しても
9月30日に取得しても、有限会社A’sソフト21の場合9月から7月
までの11ヶ月とみなして、年間償却額の12分の11乗じてその年度の
償却額とするということである。

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 ■ 一流起業家への道 その13 官公署への届出3 

税務署への届出書として、次に減価償却資産の償却方法の
届出書について説明しよう。

新設法人の場合、その設立の日の属する事業年度の確定
申告書の提出期限までに、その有する減価償却資産の区分
ごとによるべき償却方法を選定して、納税地の所轄税務署に
届出なければならない。

選定できる償却方法は、原則として資産の区分に応じ、
それぞれ、次のように定められている。

1.平成10年3月31日以前に取得された建物
(4.に該当するものを除く)…定額法、定率法
2.平成10年4月1日以後に取得された建物
(4.に該当するものを除く)…定額法
3.建物以外の有形固定資産
(4.及び8.に該当するものを除く)…定額法、定率法
4.鉱業用減価償却資産
(6.及び8.に該当するものを除く)…定額法、定率法、生産高比例法
5.無形固定資産
(6.に該当するもの及び平成10年3月31日以前に取得された
営業権を除く)及び生物…定額法
6.鉱業権…定額法、生産高比例法
7.平成10年3月31日以前に取得された営業権…随時償却の方法
8.国外リース資産(平成10年10月1日以後に締結するリース契約に
係るものに限る)…リース期間定額法

なお、減価償却資産として減価償却しなければならない資産の
取得価額は、20万円以上のものであり、使用可能期間が1年未満
又はその取得価額が10万円未満のものについては、一時に損金に
算入することが認められている。
(平成10年度の税制改正により、取得価額が10万円以上20万円未満の
減価償却資産については、事業年度ごとに3年間で償却する
一括償却資産の損金算入制度が創設された)

さて、上記の償却方法で一般的な定額法と定率法について説明してみよう。

1.定額法…償却費が毎年同一となるように耐用年数に応じて
     定められた償却率により次の算式で計算した金額を
各事業年度の償却限度額とする方法
(取得価額−残存価額)×定額法による償却率
2.定率法…償却費が毎年一定の割合で逓減するように耐用年数に応じて
定められた償却率により次の算式で計算した金額を各事業
年度の償却限度額とする方法
期首帳簿価額(注1)×定率法による償却率
注1:取得価額−既に損金の額に算入された償却費の合計額

ここまで、説明を受けたA氏は、具体的数字をあげて説明して欲しいと
Kに求めた。そこでKは、同じ資産を定額法と定率法で減価償却すれば
毎年の償却費がどのように変化するのかを説明することにした。

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 ■ 一流起業家への道 その12 官公署への届出2 
税務署への届出で、青色申告の承認申請書のほかに注意しなければ
ならないものを説明しよう。

まず、棚卸資産の評価方法の届出書である。棚卸資産の評価方法と
して選定できるものは、大きく分けて原価法と低価法があり、
原価法はさらに、個別法、先入先出法、後入先出法、総平均法、
単純平均法、移動平均法、最終仕入原価法、
売価還元法(紙幅の関係で個々の説明は省略する。ただ、最終
仕入原価法だけは、今回の構成上、下記で説明する。)
8つに区分される。

低価法も、原価法(低価法についても下記で説明する。)の
いずれか1つを基礎とすることになる。
評価方法は、事業の種類ごとに、さらに、
1.商品・製品、2.半製品、3.仕掛品、4.主要原材料、
5.補助原材料その他の棚卸資産に5区分して選定するのが原則で
あるが、事業所別に、又はさらに種類その他合理的な区分ごとに
細分して評価方法を選定することもできる。

選定した方法の届出については、新設法人の場合は、設立の日の
属する事業年度の確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署に
届出ることとされている。法人が評価方法を選定しなかった場合又は
選定した評価方法によって評価しなかった場合には、法定評価方法で
ある最終仕入原価法による原価法によって計算される。

さて、有限会社A'sソフト21の事業内容は、コンピュータソフト
ウエアの開発をメインとするので、物販などと違い基本的に在庫を
大量にかかえることはない。しかし、ソフト開発にあたりコンピュータ
関連部品など若干の在庫を抱えることは想定される。それらは、
技術の進歩が著しい現在では、数ヶ月で価値が激減するものもある。

以上から、在庫の特性と評価方法が簡単なことから、最終仕入原価法に
よる原価法に基づく低価法を選択することをKはA氏に薦めた。

簡単な例をあげてみよう。
仕入月日 仕入個数 仕入単価
2月1日 1個 1,500円
4月5日 1個 1,400円
6月15日   1個 1,200円

上記日付において、コンピュータ関連部品を上記単価で仕入れ、
期末(7月31日)まで、使用されずに残ってしまったとする。
なお、期末における仕入単価は1,100円とする。この場合の期末評価額は、
最終仕入原価法による原価法に基づく低価法によれば、6月15日の
仕入単価1,200円と期末時価1,100円を比較して、低いほうの1,100円を
選択し、それに期末の在庫個数3個を掛けた3,300円と言うことになる。

因みに、最終仕入原価法による原価法で評価すれば、期末仕入単価は
考慮しなくてよいので、1,200円×3個=3,600円ということになる。
なお、いったん採用した評価方法も相当期間(特別な事情がない限り
3年間)を経過すれば、変更することも可能である。

以上の説明を聞いたA氏は、棚卸資産の評価方法について、期末評価
額が、より現在の時価が反映されているという意味で、最終仕入原価法に
よる原価法に基づく低価法によることに同意した。


最終仕入原価法
最終仕入原価法は、期末棚卸資産をその種類等の異なるごとに区分し、
その種類等の同じものについて、事業年度終了の時から最も近い時に
おいて取得したものの1単位当たりの取得価額をその1単位当たりの
取得価額とする方法。

低価法
原価法のいずれか1つの方法による評価額と期末時価(再調達価額)の
いずれか低い方を評価額とする方法。

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 ■ 一流起業家への道 その11 官公署への届出1 
Kは、つぎに各官公署への届出についてA氏に説明した。
届出する官公署は、以前にも述べたように、所轄の税務署、
県税事務所及び市町村役場である。

このうち県税事務所と市町村役場に届出する書類は、
法人設立届出書であり、これは所定の用紙に必要事項を書き込み、
それに定款のコピー及び法人の登記簿謄本のコピーを添付すれば
よいので簡単である。

少々厄介なのが税務署への届出である。税務署への届出の種類は、
法人設立届出書、青色申告の承認申請書、棚卸資産の評価方法の
届出書、減価償却の償却方法の届出書、給与支払事務所等の開設
届出書、さらに選択すれば、消費税関係の届出書や源泉所得税の
納期の特例の承認に関する申請書などがある。

このうち注意を要するものについて説明しよう。まず、青色申告の
承認申請書である。
青色申告書の提出の承認申請を受けようとする
法人は、設立第1期については、設立の日から3ヶ月を経過した日と
当該事業年度末日のいずれか早い日の前日までに当該申請書を提出
しなければならない。そして、青色申告法人の承認を受けた法人は、
大蔵省令の定めるところにより帳簿書類を備付けこれにその取引を
記録し、かつ、その帳簿書類を7年間(棚卸資産の引渡し又は受入に
際して作成させる注文書、領収鉦等の書類については5年間)、
これを納税地に保存することとされている。

大雑把に説明すると、青色申告法人は複式簿記の原則、つまり、
きっちり仕訳をしてそれを総勘定元帳やその他の必要な帳簿に記帳し
それに基づいて決算を行わなければならないということである。

これに対して、白色申告法人は、仕訳帳や総勘定元帳の作成は義務
付けられておらず、現金出納帳その他の必要な書類を備えれば足りると
いうものである。
こう説明すると手間のかからない白色申告を選択したくなるが、
青色申告は手間もかかる代わりに特典もたくさんある。

そのうち特にその恩恵にあずかるのが、青色申告事業年度の欠損金の
5年間の繰越控除である。これは、例えば設立第1期の決算で、
5百万円の欠損金が出たとしよう。するとその欠損金は、第2期から
第6期までに出た所得金額から順次控除されるというものである。
極端な話、第6期までの所得金額の累計が5百万以下なら法人税の
支払はゼロということになる。これは白色申告法人にはない非常に
有利な特典である。

Kは、このような特典もさることながら、起業家としては、仕訳から
はじまり最終的には貸借対照表や損益計算書の作成までの一連の
手続きを理解しておくことは当然必要なことであるので、青色申告の
選択を進めた。
A氏及びB子とも簿記の知識がほとんどないので、自信がないと
言ったが、Kは次のように答えた。「Aさんは、仕事柄コンピュータは
お手のものなのだから安い経理用ソフトを買ってきて、それに仕訳を
入力すれば必要な帳簿はすべてコンピュータが作成してくれる。
ただ、間違っていけないのは、コンピュータがしてくれるのは、
作業の部分で、仕訳を考えるのはAさんでありB子さんである。
その部分のついては、当然勉強してもらわなければならない。しかし、
その部分をフォローするために私がいるわけだから、何も心配する
ことはない。」

この言葉を聞いたA氏は、迷わず青色申告を選択することにした。

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 ■ 一流起業家への道 その10 社会保険加入3 
Kは、A氏から示された役員報酬の額で、健康保険、厚生年金及び介護保険の額を計算した。
その額は以下のようになる。

※ 保険料(被保険者負担分)
             健康保険      厚生年金保険   合計
          (介護保険に該当する被保険者)
A氏 月額35万円   17,226円      31,230円       48,756円
B子 月額20万円    9,570円      17,350円        26,920円
合計           26,796円        48,580円       75,676円

上記から、A氏及びB子の役員報酬から天引きされる健康保険等の額は、

75,676円ということになる。これを基に月末に会社の預金口座から引き落と
される健康保険等の額は、被保険者負担額75,676円に同額の会社負担額
75,676円を加えた額に、全額会社負担分の児童手当拠出金616円
(厚生年金保険の標準報酬月額の1000分の1.1)を加えた151,968円ということになる。
したがって、月末の引落口座には、必ずこの金額が入金されている必要がある。

さて、次に問題となるのは労災保険である。労災保険は、「労働者災害補償

保険」という位だから、一般社員やパートタイマーの人にだけ適用される保険である。
したがって、役員は仕事中や通勤途中でケガをしても労災保険は使えない。
なぜなら、役員は労働者ではないからである。
しかし、中小企業では、役員といっても社員と同等あるいはそれ以上に製造現場で

先頭に立ち、営業に駆けずりまわるのが常である。このような状況で、役員が労災保険を
使えないというのは、酷である。

そこで、これを解決するのが労災保険の「特別加入制度」である。

これは「労働保険事務組合」というところに、労働保険の事務を委託することにより、
役員も労災保険のメリットを受けることができる制度である。
保険料は、特別加入者が補償を受けたい日額に応じることになっており、3,500円から

20,000円の範囲で選ぶ。A氏つまり、ソフトウエア開発会社の役員が日額20,000円を
選択すると、20,000円×365×1,000分の5.5=40,150円。
この金額を支払えばA氏も労災保険を受けることが出来る。A氏は、特別加入制度の

保険料の支払額と仕事の危険度を勘案して、とりあえず今回は加入を見送ることにした。

最後に雇用保険であるが、これも役員は加入対象者でなく、また、労災保険の「特別

加入制度」に対応するような制度もないので、A氏及びB子は雇用保険には加入できない。

以上から、A氏及びB子の役員報酬から天引きされる社会保険料は、健康保険、

厚生年金及び介護保険ということになる。Kから社会保険制度の概要の説明を受けたA氏は、
社会保険の負担額の大きさに驚き、今後は社会保険料の会社負担分も含めた金額で
人件費は把握しなければならないと思った。そして、当然、
社会保険の加入手続きについては、Kに全面委任した。

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 一流起業家への道 その9 社会保険加入2 
役員報酬が重要な意味を持つと言う理由は、『役員賞与は損金の額に算入しないと言う
法人税法のきまりがあるからだ』
とKは説明した。役員報酬の重要性の説明に何故、役員賞与が出てくるのかとA氏は
思ったが、Kの説明を聞くことにした。

法人の経理において、役員賞与を自由に損金、換言すれば費用にすることを認めれば、
利益操作が可能となる。何故なら、法人においてその賞与の額を決定する権限を持つのは、
役員だからである。

例えば、ある期において予想外の利益が出そうな状況だとしよう。
役員達は、法人税を少なくしようと、当然役員賞与を出すことを決める。しかしこれを認めると、
多額な役員賞与を期末に一気に支給して当期利益を極端に引き下げることも可能であり、いくら
でも利益操作が出来るという点から、法人税法では役員賞与の損金算入を認めていない。

以上の点を考慮すれば、A氏及びB子の役員報酬の額は、役員賞与を考慮しないで、1年間に
必要な生活費の合計を算出し、それを12分の1したものを1ヶ月の役員報酬の額として決める
のが合理的である。サラリーマンの時のように、夏と冬の賞与の額を見込んで家計をやりくりする
のは今後はできないということである。もちろん、
蛇足ではあるが、利益処分という損金にならない方法で、役員賞与をだすことは可能であるし、
従業員には決算賞与という形で期末に賞与を支給することも可能である。

これらについての詳細については、別の機会に譲ることにして、今は社会保険の加入の話に戻そう。
A氏はB子と相談の結果、役員報酬の額をA氏は1ヵ月30万円、B子は1ヵ月15万円とし、もし、
予想外に利益が出そうなら、期中に役員報酬を引き上げたいと、Kに相談した。
Kは、A氏及びB子の役員報酬の額が、会社の利益計画と生活費との関連から算出したものなら
それには異存はないと言った。しかし、期中に役員報酬を引き上げるのはだめだと言った。何故なら、
それも決定する権限は役員にあり、効果としては役員賞与支給するのとなんら変わりがないからだと
言った。役員報酬の期中の増額も無理と分かったA氏は、役員報酬の額をそれぞれ5万円づつ増額して、
A氏1ヵ月35万円、B子1ヵ月20万円でスターとすることにし、その額で社会保険料がいくらになるのか、
Kに計算してもらうことにした。

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  一流起業家への道 その8 社会保険加入1 
司法書士及びKのアドバイスをえて、平成14年8月1日に汲`'sソフト21は、めでたく設立された。
この次A氏がしなければならいことは、官公署への届出である。この点についてもKのアドバイスは
明快である。自ら届出をしようかと考えている。A氏に対して、Kは、「それについては、私に任せなさい。
その分、仕事に傾注してください。」と言った。ただ、届出について経営者として理解しておかねばならない
ことがあるので、Kはこの点について説明した。まず最初にKは会社設立後、官公署への届出なければ
ならない書類の種類について説明した。

・ 労働基準監督書…適用事業報告等
・ 公共職業安定所…雇用保険適用事業設置届及び雇用保険被保険者資格取得届等
・ 社会保険事務所…健康保険・厚生年金保険新規適用事業所現況書など
・ 税務署…法人設立届出書、給与支払事務所等開設届出書等
・ 県税事務所…法人設立届出書
・ 市長村役場…法人設立届出書

このうちKは、まず5つの社会保険、
1. 健康保険
2. 厚生年金
3. 介護保険
4. 労災保険
5. 雇用保険
の届出について説明した。汲`'sソフト21は、代表取締役A氏(47歳)と取締役A氏の妻B子(43歳)の
2人の従業員からなる会社である。また、A氏夫妻には、19歳の大学生の一人息子がいる。健康保険・
厚生年金・介護保険については、事業所を管轄する社会保険事務所に届出をすればよいのだが、
それはKに任せることにして、A氏が準備しなければならない書類は次のものがある。

・保険料口座振替依頼書
 (金融機関の確認印を受けたものを3枚提出する。健康保険等は、毎月末自動引落になる。したがって、
 引落日には、預金残高を確認しておく必要がある)

・法人登記簿謄本(交付後3ヶ月以内のもので、コピーは許可されない)

・賃貸借契約書(汲`'sソフト21はA氏所有の自宅の一室を事務所としているので不要)

・在学証明書又は学生証の写し(19歳以上の学生を被扶養者とするとき必要)

である。さらに、A氏が健康保険等の届出をするときに決めておかなければならないのが、役員報酬の額である。
役員報酬は、当然のことながら、それによって生活ができなければ意味がないわけである。しかも、その額は
社会保険料を決定するし、その他源泉所得税他いろいろな事にも影響するので、慎重に決定しなければならない。
役員報酬の重要性について、Kは続けた。

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 一流起業家への道 その7 登記手続4
Kは、A氏が次にしなければならないことを説明した。
・事業の目的を決める。
   事業の目的とは、会社の営む事業の内容を言うが、事業の目的を定款に定める場合には、
   「社会通念上、会社の目的とする事業が何であるかを知り得る程度に明確かつ具体的に
  記載すべきである」とされている。
 
ところで、登記実務では、これをより具体的に表して、事業の目的は、
   1. 法令又は公序良俗に反せず(適法性)、
   2. 営利性を有し、かつ、
   3. 明確性及び
   4. 具体性を有するものでなければならないとしている。

 汲`'sソフト21はソフトウエアの開発を目的とする会社なので、 A氏は「コンピュータソフトウエアの
 開発」を事業の目的にしたいと言った。 これは、登記上問題ないのだが、これが「コンピュータソフト
 ウエアに 関するサービス業務」とすると「関するサービス業務」という内容に具体性がないということで、
 登記できないことになる。とにかく、事業の目的を決める際には、司法書士に自分が考えている会社の
 目的が登記できるか否か事前に調べてもらう必要がある。さらに事業の目的であるが、これは、
 当面会社の事業としないが、将来は会社の事業として行う、あるいは行う可能性のある事業も目的と
 して定款に記載しておくべきである。何故なら、事業の目的の変更は、定款の変更事項であるので、
 事業の目的を変えると、その度に登記をしなければならず、時間と費用がかかるからである。

 以上の説明を受けたA氏は、将来のことも想定し、事業の目的を、
   1.コンピュータソフトウエア・ハードウエアの開発、販売、保守及びコンサルティング
   2.労働者派遣事業
   3.教育に関する版物の発行及び講習会の開催
   4.総合リース業
   5.前各号の付帯する一切の事業 とすることにした。

・設立年月日及び営業年月日を決める。
  会社の成立する日は、設立登記の日である。したがって、A氏が会社の設立日としたい日までには
  すべての書類を整えておかねばならない。これは、司法書士が段取りを組んでくれるので任せて
  おけばよい。ところで、設立日と営業年度の因果関係であるが、これは少々厄介なことになる可能性が
  ある。A氏はなるべく早く会社を設立したいので、司法書士に7月15日に相談に行き、8月1日を会社
  設立の日としたいと言った。これは、書類を整えるのに充分な期間があるので、司法書士は了解した。
  そして次に営業年度だが、A氏は、当然のことながら、営業年度終了後2ヶ月以内に決算を行い税務申告を
  しなければならないことは知っていたので、比較的時間のとれる、「9月1日から8月31日」にしたいと言った。
  これに対しKは、8月1日を設立年月日とし、8月31日を営業年度の終了日とすると、第1期目の決算は、
  設立1ヵ月で行わなければならないことになると説明した。会社の営業年度は、1年を超えて定めることは
  できないので、この場合、どうしても1ヵ月で決算を行わなければならない。A氏は、1ヵ月で決算するのは、
  比較的時間のとれる時期とは言え、会社設立後間もない時期であり何かと忙しいので避けたいと思った。
  そこで、設立日を9月1日にするかと考えたが、とにかく早く会社を立ち上げたかったので、営業年度を「8月1日
  から7月31日」にして、第1期目の決算は12ヶ月間とすることにした。
   Kも諸事情を考慮して賛成した。

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 一流起業家への道 その6 登記手続3
A氏は、法人設立の手続きを司法書士に依頼することにしたが、その場合でもA氏がどうしても
しなければならないことがある。このことについて、Kは説明した。
・ 出資払込保管証明書を発行してもらう
   出資払込保管証明書は、今後の便宜を考えると、事業所の近くの銀行に発行してもらうのが
   良いと思われるが、銀行によっては、出資金保管証明書を一見の客には出さないところもある。
   とにかく、法人設立のためには出資金保管証明書を発行してもらうのが先決であるので、
   事業所の近くの銀行にこだわらず、普段取引をしている銀行を中心にあたって見る。それでも、
   どうしても銀行が見つからないときは、司法書士や税理士に相談してみる。Kはよろこんで、
   銀行を紹介すると言った。
・ 本店所在地を決める
   A氏は自宅の一室を事務所として、スタートすることにしたので、本店所在地は、自宅住所地の
   神戸市兵庫区羽坂通〇丁目〇番地〇号でということになる。
・ 商号を決める
   A氏は法人名を「A'sソフト21」(読み方:エーズソフトニジュウイチ)にしたいといった。しかし、Kは
   登記上、A'sというアルファベット表示はできない事、さらに21という算用数字も表示できないことを
   説明した。したがって、登記上は、「エーズソフト二十一」という表示で登記することになると説明した。
   もちろん、これは登記上だけで、商売上は、「A'sソフト21」の表示で商売することになんの問題も
   ないことは付け加えた。さらに、商号については、類似商号の問題がある。登記をするにあたって、
   管轄登記所に行って、内定した商号と同一または類似の商号の登記が同一市長村内にされて
   いないかどうか、調査しておく必要がある。なぜかというと、他人がすでに登記している商号と同一の
   商号のみならず、これと判然と区別することができない。類似の商号は、同一市長村で登記することが
   できないからである。
   なお、A'sソフト21は神戸市つまり政令指定都市に所在するわけであるから、市ではなく区が単位で
   調査することになる。類似商号の調査は、司法書士に行ってもらえばよいのだが、もし、管轄登記所に
   類似商号の法人が存在していたら、残念ながら違う商号を考え直さなければならない。

さらに、KはA氏のしなければならないことを続けて説明した。
 

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 一流起業家への道 その5 登記手続2
KはA氏に法人設立登記を専門家、つまり司法書士に依頼するにあたって、一番気になる費用の点、
さらに司法書士に依頼するといってもA氏自身がどうしてもしなければならないことについて説明した。
まず費用の点だが、出資金額300万円の有限会社を設立するのに必要な費用は次のようなものである。
・ 定款関係
  収入印紙4万円(定款は3通作成するが、そのうち公証人に提出する定款に貼付する)
  手数料約4.万5千円(公証人に定款の認証をしてもらう費用)
・ 銀行関係
  出資金額の2.5/1000程度(これは、銀行に出資払込保管証明書を発行してもらう費用。
  300万円の出資金なら7,500円程度ということになる)
・ 登録免許税
  資本金の7/1000 ただし最低6万円(出資金額300万円の7/1000なら21,000円になるが、
  最低6万円なので、この場合6万円ということなる)
・ 司法書士手数料
  10万円〜15万円位(これは依頼する司法書士によって違うが、概ねこの位の金額は必要である)
・ その他
  個人印鑑証明書代…定款認証時に公証人役場へ持参するもの、銀行に出資金保管証明作成を
               依頼するときに持参するもの、登記申請書に添付するものなどに必要。
               A氏の場合、A氏と奥さんの各3通計6通必要なので、1通300円×6通=1,800円
  印鑑代…代表者印、会社印、銀行印、ゴム印など必要。金額は、立派な印鑑を作らない場合でも、
        3万円〜5万円位は必要。
  登記簿謄本代・代表者の印鑑証明書…法人の登記が完了すると、関係官庁や銀行に登記簿謄本及び
  代表者の印鑑証明書の提出を求められる。税務署などは、登記簿謄本は、コピーでもよいのが、
  社会保険事務所などは本書でないとだめだ。そこで、とりあえず、登記簿謄本及び代表者の印鑑証明書を
  各5通法務局に請求するもとすると、それにかかる費用は、登記簿謄本代1通1,000円×5通=5,000円、
  印鑑証明書代1通500円×5通=2,500円
以上からKはA氏に、出資金額300万円の法人を設立するのに必要な費用は、30万円〜40
万円であると説明した。A氏は出資金額300万円と諸費用40万円計340万円は、いつでも
預金口座から引き出せるよう準備しておこうと思った。

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 一流起業家への道 その4 登記手続1
Kは有限会社の設立登記の手順とそのポイントについて、A氏に説明した。
1. 事前準備
   ・基本的事項→本店所在地、出資金の額、出資一口の金額、役員(取締役、代表取締役、監査役)、
    会社の事業目的、営業年度、代表者印の調整、出資払込取扱金融機関など
   ・会社名の検討→本店所在地で類似商号の調査
   ・印鑑証明書→社員及び取締役の印鑑証明書が必要
2. 定款の作成
  ・公証人、登記所、会社用の3通を作成
3. 定款の認証
  ・本社所在地の公証人役場が認証
4. 出資金の払込
  ・取扱金融機関が払込金保管証明書を交付
5. 取締役・監査役の調査
  ・金銭の全額払込み、現物出資の給付などの調査
6. 登記申請
  ・取締役・監査役の調査後、2週間以内に設立登記申請
  ・本社所在地管轄の登記所に提出
  ・登記申請が受理されたら、その日が会社設立の日
KはA氏に金融機関が出資払込金保管証明書を何日位で交付してくれるかによって変わってくるが、
事前準備から、登記申請して登記所が調査の結果、登記完了お墨付きをくれるまでに要する最短の日数は、
約10日と説明した。A氏は、登記手続について、書店に行けば、「有限会社の設立の仕方」のような本が
たくさん出ているので、自分で登記申請の書類を作成しようと思うのだがとKに相談したが、Kは、A氏に
「これから、何社も会社を設立するわけでもないし、費用はかかっても、専門家に任せなさい。
Aさんがご自分で設立登記の手続きをするために要する労力と時間を考えると、それは本業に回されたほうが
ずっと会社のためになる。」とアドバイスした。A氏も納得したので、Kは登記費用等について説明することにした。


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 一流起業家への道 その3 株式会社と有限会社の違い
株式会社と有限会社の違いについて、KはA氏につぎのように説明した。
・株式会社
  最低資本金は、1000万円で出資者は1人以上。株主は出資の範囲内で
  有限かつ間接の責任を負う。
  取締役は3人以上、代表取締役と監査役はそれぞれ1人以上必要。
・有限会社
  最低資本金300万円で出資者は1人以上50人以下。出資者は出資の
  範囲内で有限かつ間接の責任を負う。取締役は1名以上、代表取締役、
  監査役はおかなくて良い。
  A氏が開業にあたって、準備できる資金は500万円であるから、
  最低資本金の制限から有限会社で開業することになる。
  A氏は有限会社というと、株式会社に比べて、何か小さい
  会社というイメージがあるので、株式会社でスタートしたかったのだが、
  最低資本という商法上のきまりがある以上、
  これはどうしようもない。Kは、そのことについてとにかく
  有限会社で会社を立ち上げ、早く儲けて増資できるくらいの会社の財政状態し、
  それから株式会社に組織変更すればよいとアドバイスした。A氏も気持ち切り替え、
  A氏と妻を取締役とし、代表取締役はA氏とすることにした。さて、この次に問題となるのは、
  登記手続であるが、Kはそのことについても、さらにアドバイスした。
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  一流起業家への道 その2 会社の種類
A氏から相談を受けたKは、法人の種類について次のように説明した。

会社の種類を区別する基準はいろいろあるが、一般には社員の責任の態様による。
そこで、会社の社員の責任の態様による区分について見てみると、社員の責任の態様は
、@直接責任と間接責任、A有限責任と無限責任の組み合わせによって異なってくる。
まず、@の責任の態様は、会社の債権者に対して、社員が直接に責任を負うことがあるか
どうかという点に注目したものである。たとえば、合名会社あるいは合資会社の各社員は、
会社財産をもって会社の債務を完済することができないときは、連帯してその弁済の責めを
負うとされている。
これに対して、株式会社あるいは有限会社の社員は、会社の債権者に対して責任を負わない。
ただ、会社の社員になるにあたって会社に出資した財産は、会社の債務の弁済に充てられるので、
間接的に会社債権者に責任を負っているともいえる。そこで、これを間接責任社員という。
つぎに、Aの責任の態様は、責任の範囲に着目したものである。
有限責任社員とは、会社の債権者に社員が直接あるいは間接に責任を負う場合に
社員が会社に出資した限度の範囲内で責任を負担するというものである。
株式会社の株主、有限会社の社員、合資会社の有限責任社員が有限責任社員である。
これに対して、無限責任社員とは、会社の債権者に対して社員は、債務が残存する限り
範囲に限定なく責任を負担するというものである。
合名会社の社員及び合資会社の無限責任社員が無限責任社員である。
なお、間接責任社員は、社員が出資した財産の範囲で責任を負担することを当然の前提と
しているので無限責任を負担することはない。
Kから説明を受けたA氏は、直接責任と無限責任という言葉に責任の重さを痛感したので
株式会社か有限会社でスタートすることにした。

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  一流起業家への道  その1 プロローグ
大手メーカーをリストラされたA氏は、妻と相談の結果、一念発起して自らのキャリアを活かし
ソフトウェア開発会社を設立することにした。開業資金は退職金が出たので、5百万円は用意できる。
それなりの勝算がある開業ではあるが、当初の出費は出きるだけ抑えたい考え、
事務所は自宅の一室とし、従業員はA氏と妻の2人で出発することにした。
また、コンピュータなど最低必要な備品等は、順次揃えて行く事にした。開業に当たり、
まずA氏が悩んだことは、会社の形態を個人企業でスタートさせるか、法人組織でスタートさせるかということだった。
しかし、自らの会社勤めの経験から、大手企業は、個人企業より法人を重視していたことを思いだし、
法人組織でスタートすることにした。A氏は、法律関係に詳しくないので、法人組織といっても、
株式会社と有限会社の2種類位はあるのだろうという程度の知識しかなかったので、
友人の税理士K氏に相談に行くことにした。

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