営業日報の活用

~ 上司と営業マンの会話 ~

上司(課長):「A君。この頃、営業日報の内容が充実してきているね。」

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A:「ありがとうございます。いい営業日報が書けると、課長から有意義なコメントをいただけるので、余計やる気が出ます。商談時、お客様の発言をよく聞いて、メモをとるようにしています。言葉の真意を汲み取れるよう、意識しています。」

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上司:「うん、いい心がけだ。以前は、君自身が商談で話したことを書いていたね。あれでは、お客様が当社の製品にどのような想いを抱いているのかさっぱりわからないので、コメントのしようがなかったんだ。」

A:「はい。自分がどのようなことをしたか、アピールしようとしていました。」

上司:「気持ちはよくわかるよ。けれど、営業は喋ることが目的ではないからね。お客様に、当社の製品を使用しているイメージを思い浮かべてもらい、問題点や課題を探ることが大切なんだ。そして、そのためには、どの特性に期待しているのか、また、疑問を持っている箇所があるかどうかなど、上手に聞き出すことが必要になってくる。」

A:「恥ずかしながら、沈黙が苦手で、ついつい喋ってしまうんです。」

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上司:「相手の地位などに気後れして、焦ってしまうのかな。それなら、商談相手や、その会社の製品・商品・サービスの特徴について質問すればいい。そうすれば、相手は"自社のことに関心を持ってくれている"と思うだろう。その気持ちになってもらうと、君に対して好意を抱くようになる。すると、お互いに緊張がほぐれ、場の雰囲気が打ち解けたものになってくる。スティーブン・R・コヴィーが書いた 『7つの習慣』 という本を知っているね?」

A:「はい。昔、話題になった本ですよね。本屋で立ち読みしてそれきりですが・・・。」

上司:「彼が唱える"7つの習慣"のひとつに、"理解してから理解される"という重要なフレーズがある。人に好意を持ってもらうには、先に自分が相手を理解すること。相手の好みや関心事に興味を抱き、大いに心を向けていることを、相手にうまく伝えることが大切だ。わかりやすい例を挙げると、好きな人ができたとき、その人の趣味や食べ物の好みなどに強い関心を持つはずだ。その結果、向こうも君に対して好意的な行動をとるようになる。」

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A:「自分が興味を示すことで、相手の好意も引き出せるんですね。心理学を学べば、お客様との商談や社内の会議など、いろんなところで効果が期待できそうですね。」

上司:「うん、いいところに気がついたね。こうした心理学は、営業だけでなく、ビジネス全般や家庭においても役立つはずだよ。それからもうひとつ、"理解してから理解される"とは対照的な"フォールス・コンセンサス効果"という心理がある。人は、"自分の意見や行動は正当で一般的だ""自分と違った意見や行動は不当で特異なものだ"という思い込みに陥りやすい。"自分の考えは正しいのに、どうしてわかってもらえないのだろう?""なぜ、あの人はあんな間違った意見を言うのだろう?"と考えてしまうんだね。家族や恋人など、相手が親しい人であればあるほど、この傾向が強くなる。だから、馴染みの深いお客様とのお付き合いでは、この心理によくよく注意すること。"親しき仲にも礼儀あり"だからね。突然の注文のキャンセルは、こうした甘えが原因だったりするんだよ。」

A:「はい、わかりました。特に、営業で気をつけることは何でしょうか?」

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上司:「製品説明でお伺いしたとき、説明に終始するのではなく、"この製品を使用することでこのような利便性や効果がある"ということをしっかり訴求することだね。お客様が期待を抱いてくだされば、受注の確度は大幅にアップする。ただし、その製品を使用する状況をよく確認しておくことが肝要だ。使用する場面によって、ニーズや効果が大きく異なる場合もあるからね。」

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A:「どういうことですか?」

上司:「たとえば、自動車の場合。ひとくちに車といっても、用途はいろいろあるだろう。通勤に使う人もいれば、休日に行楽目的で乗る人もいる。何を重視するかも、人それぞれだ。小回りが利くことかもしれないし、多人数に対応できることかもしれない。燃費を気にするか、はたまたスピード感を求めるか・・・お客様のニーズによって、アピールすべき特性は変わってくる。スポーツタイプの自動車を選ぶ人は、エンジン音にこだわるらしい。こんな風に、お客様がどのような場面を想定しているのか、どんな効果を期待しているのか把握しておくことがとても大切なんだ。」

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A:「なるほど。"この商品があればこんないいことがある"という、お客様にとって魅力的なイメージを提示することが、お客様の気を引くコツなんですね。貴重なアドバイスをありがとうございます、勉強になりました。これからは、営業に心理学を取り入れてみようと思います。」

上司:「うん、今日の話し合いは非常に意義深かったよ。君が営業日報に価値のある内容を綴っていくことで、上司や同僚たちと情報を共有し、活用することができる。それと同時に、文章力や伝える力の鍛錬にもなっているんだ。一石二鳥だね。コミュニケーション力が身に付けば、営業力もアップするよ。」

A:「そうですね。コミュニケーション能力の重要性は、日々感じています。どうすれば鍛えられますか?」

上司:「こればかりは、本を読んで勉強してもダメで、実地で身につけていくしかないね。優れた先輩や上司を見習って、OJT的に学んでいけばいい。尊敬する人の真似から始めて、少しずつ自分のものにすればいいと思うよ。今後、君の営業日報を閲覧するのが楽しみだね。内容が充実した報告を読むと、必ず、コメントを書きたくなる。」

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A:「参考になるコメントをもらうことで、その商談への取り組みが変わることがあります。いただいた助言を意識して商談したところ、意図した通りに話が運び、ワクワクしながら日報を書きました。そうしたら、評価点がついていたので、"やった!"という気持ちになりました。」

上司:「そうだね。ヒントを活かして、次回の商談時にお客様の意図をうまく汲み上げ、また営業日報に報告があれば、あたかも君と私がいっしょに、お客様のところで商談しているようだ。日報を通じて、二人三脚で営業できる。報告内容とコメントだけで不十分なときは、口頭での話し合いを入れることもあるけれど。このように、意義のある営業日報を書く、役に立つコメントをもらう、商談をうまく進められる・・・という好循環を確立できれば、お互いの知恵を共有し、有効活用できる。営業マン全員がこのサイクルを上手に使えたなら、当社の営業成績は自然に良くなるだろう。」

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A:「以前、同僚の報告にコメントを入れたところ、"ありがとう"と回答をもらいました。そのとき思ったのですが、社外の人と接するときだけでなく、社内においても、コミュニケーションは大切ですね。」

上司:「その通り。いいコミュニケーションは、いい職場環境を作り、モチベーションの向上にもつながるからね。"ありがとう"は、ごくありふれた言葉のようだけれど、お互いに気持ちよく仕事ができる魔法の言葉だよ。」

A:「何気なく使っている言葉ですが、効果は絶大ですね。」

上司:「ときどき会合で利用する、"和民"という居酒屋があるだろう。経営しているワタミ株式会社は、経営理念の最初に"地球上で一番たくさんの「ありがとう」を集めるグループを目指して""変化する社会に応じて「ありがとう」を創造していきます"と掲げている。また、創業者で会長の渡邉美樹氏は『創業時から、たくさんの笑顔、たくさんのありがとうと出会うべく挑戦を繰り返してきました』と感慨深い言葉を述べている。」

A:「そういえば、和民のスタッフはいきいきと仕事をしていて、サービスも行き届いていましたね。」

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上司:「経営理念がただのお題目にならず、スタッフ一人ひとりにしっかり浸透しているんだね。私も、どのようなコメントならばいい刺激になるだろうと、いつも想いを巡らせているんだが・・・。書く内容に悩んだときは、営業支援システムの参照入力も利用しているよ。コメント欄の右横のボタンをクリックすると、 参考コメントの一覧が表示  されるんだ。」

A:「お互いに営業日報を閲覧して、"ありがとう"という言葉が行き交うようになれば、営業部の組織力は間違いなく向上するでしょうね。」

上司:「そうだね、そしてお客様からはパートナーとして認められる。ただし、組織力のアップには3つの要素が必要だよ。ひとつは今話したコミュニケーション。それから、貢献意欲と共有目的。この3つがうまく機能すれば、きっといい組織になる。貢献意欲とは、たとえば日報を書くときに、"この報告でコメントをもらい、そこからまたヒントを得て、お客様の役に立ちたい"とか、"他の営業マンの参考になればうれしい"とか、そういう想いがあること。  貢献意欲のある報告には評価点  をつけているね。最後に、共有目的。さっきも触れたように、目的や理念を全員で共有することは、組織において非常に意味のあることなんだ。我々の場合、"絶えず新技術を学び、チャレンジし、その成果からお客様のパートナーになる"という方針を、朝礼でいつも唱和しているよね。これがまさに、共有目的なんだよ。」

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A:「どれも大切な要素ですね。今回、営業日報を活かして意義のある行動につなげていくことや、お客様とのやりとりで気をつけることなどを教えていただき、また、課長もいろいろな工夫をされていると知って、とても励みになりました。これからも、一期一会の心構えで商談に臨み、コメントをいただけるような、他の営業マンにも参考になるような営業日報を目指していきます。」

上司:「期待しているよ。皆がこの営業支援システムの本質を理解して実践できれば、この会社はどんどん変わっていくはずだ。」

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