営業日報を活用して組織を強化する

スタッフ教育で名高いディズニーランドに、こんなエピソードがあります。
カストーディアルと呼ばれる清掃担当のスタッフが、来場者に「何をしているんですか?」と聞かれ、こう答えました。
「パークに落ちている思い出のかけらを拾っているんです。」

誇りを持てる環境をつくること、誇りを持って仕事をすること。 それが徹底できれば、仕事は喜びになります。
「サービス・情報を通じて、お客様に感動を提供できることに喜びを感じています。」
そう胸を張って言える営業マンは、自分の仕事に誇りを持つ人です。

営業支援システムは業績の向上を目的としていますが、利益の追求のみに焦点を当てたものではありません。 また、システムを導入すれば、自動的に成果が出るというものでもありません。 このシステムの特性を事前によく理解し、納得した上で、上司も含めた営業部全員で参加意識を持って運用することが不可欠です。

よくある疑問として、「報告を入力しているヒマがあれば、顧客を訪問したほうが売上につながるのでは?」という意見があります。 一理あるようにも思えますが、それが形だけの、特に目的のない訪問であったなら、どうでしょうか? 対応時間が取られて、相手にとってはうっとうしいだけです。 やみくもに訪問するよりも、営業支援システムを活用して有意義な営業活動を行うほうが、結果的には有効なのです。

営業支援システムにおいて、重要な役割を占めるのが営業報告です。 せっかくITを導入しても、入力データにミスや漏れがあれば意味がないのと同様、営業報告が機能しなければ、管理資料や営業プロセス進捗、案件進捗、先行管理も機能しません。

たとえば、顧客から「君がくれた情報のおかげで、大いに助かったよ。」と言ってもらえたとしましょう。 営業報告にその概要を記入すれば、それを読んだ他の営業マンにとって、良い参考になると同時に、大きな刺激にもなるでしょう。 本人にとっても、自分の経験を他の人と共有し、共感されたなら、より一層の達成感を得ることができます。

一方、もしも報告するシステムがなければ、自分ひとりの満足感で終わってしまいます。 せっかく好評を得た行動パターンも、共有することができません。 知らず知らずのうちに、貴重な資産を失っていることになります。
業務命令として仕方なく記入している場合、書いた本人の想いがないため、内容の乏しいものになります。 上司が読んでも感じるものがなく、コメントももらえないので、次第に使われなくなります。 上司への報告を目的としている場合には、自分に都合のいいことしか書かなくなります。

このように、営業報告は使い方次第で、非常に有意義なツールにも、形式だけの作業にもなります。 「お客様の役に立ちたい」「他の営業マンの参考になれば」という貢献意欲を持って営業報告を活用すれば、営業部全体の成長につながります。

また、企業として大切なことは、営業部のコンセプトを明確にすることです。

スターバックスを大企業に発展させたハワード・シュルツ氏は、コーヒーを売るのではなく、「第三の場所」を提供する、というコンセプトを持っていました。 「第三の場所」とは、職場でも家庭でもない場所、つまり、オフィスで仕事に打ち込んだあと頭を冷やせる場所、あるいは、ひとりで(もしくは気のおけない友人と)くつろげる場所という意味です。 ゆったりとした雰囲気の中で、リラックスできる空間を提供することが目的であり、コーヒーはそのための手段であると考えました。

この発想を営業に取り入れると、営業マンがとるべき行動がわかりやすくなります。 売上目標の達成を目的とするのではなく、「チャレンジして獲得した技術やサービスで顧客に感動を与える」などのコンセプトを設定することで、仕事への関わり方や意識も変化するはずです。

設定したコンセプトを具体的な行動に落とし込むには、バランス・スコアカードが役立ちます。 営業マンの日報から、コンセプトに沿って行動できているか、評価していきます。 顧客を訪問する際、何らかの参考情報を事前に準備しておき、少しでも喜ばれるよう努力し、その成果が営業報告に反映されるようになります。
その報告に対して、上司はコメントを入れます。 「次の商談につながる内容だ」「そこまでのことを聞きだせたか」「いい感触になってきた、その調子で」「よくそれを考え出したね 」など、状況に応じて適切なコメントやヒントを書くことで、良い励みになったり、気づきを促したりします。 場面によっては、「ありがとう」の一言も有効です。 こうしたやりとりを通じて、営業部のコミュニケーション力も向上します。

このように、営業日報を上手に活用すれば、営業部が活性化し、そこからさらに良い結果が生まれます。 人に喜ばれる・感謝される・認められることで営業報告が充実し、営業マンや組織が成長し、顧客サービスの充実・顧客満足・業績向上へと連鎖していくのです。

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