― バランススコアカードの業務評価指標(KPI)を活用 ―

バランススコアカードの各視点、特に業務プロセスの視点の中で、売上向上のためには、営業マンの個々の営業活動における「営業プロセス」と、それを全社的に定着させるマネジメントの両面からのアプローチが必要になります。この営業プロセス管理は、受注できた・できなかったといった結果だけではなく、結果に至るまでのプロセスも含めて管理します。
営業活動は、「訪問リスト作成」「商談」「提案書提出」「見積提出」「受注」というプロセスに分解できます。営業プロセス管理では、それぞれのプロセスをランクアップさせることと、それぞれのプロセスに一定量の顧客を確保すること、このふたつの視点が重要です。
前者については、顧客別に現在の状況と営業プロセスを照合し、どのプロセスの割合が大きいか、どのプロセスに問題があるかを議論し、解決します。例えば、アプローチ件数に対して提案書提出が極端に低い、あるいは見積提出件数に対して成約件数が低い、というように、営業マンの特性やスキルによって状況は異なります。アプローチ件数が少ない営業マンには、アポイント取得スキルの向上が必要です。提案書の提出件数を増やすにはニーズ把握のためのヒアリングスキル、受注アップにはクロージングスキルの修得が必要になります。このように、営業マンごと・顧客ごとに営業プロセスの進捗を把握し、どの部分に壁があるのか特定し、それを解決する有効な手法を実践しながら営業のステップを進めていきます。
もうひとつは、量を増やすことです。現在アプローチしている顧客の営業プロセスが改善されても、訪問できる顧客が少なくては、常に成果を出すことは困難です。したがって、新規に訪問できるリストを増やす活動を継続的に行います。これは上司のバックアップも必要になるので、それぞれの役割分担を明確にした上で、有効な活動を実践することが必要です。
このように、営業プロセスを質と量の両面から改善していくことが受注確度アップにつながります。この考え方をもとに、まずは、営業プロセスごとの定義を明確にした上で、現状の全社的な実績数値を算出し、目標数値を設定します。次に、個々の営業活動の実態を把握し、抱えている問題を明確にしていきます。営業活動を事実として客観的に見ることで、営業マン自身も納得できます。その上で、話し合いを行ったり、高い成果を発揮している営業マンのベストプラクティスといった具体的改善策を提示したりして、営業プロセスの改善を図っていきます。
次に重要なポイントは、営業マネジメントのしくみを考えることです。個々のマネージャーの力量に頼らず、営業プロセス管理で設定したプロセス指標(KPI)を共通のモノサシとして、それらを向上させていくためのマネジメントモデル(バランス・スコアカード)を構築します。マネジメントモデルとは、マネージャーが見るべき指標やタイミング、ツール、対応策等のガイドラインを策定することです。例えば、上司は毎月の支店・拠点の目標に対して、営業マンごとのプロセス指標を、営業マンと相談しながら設定します。プロセス指標は毎日確認し、週に1度は個別面談を実施します。面談では、詳細な活動状況をもとに、営業プロセスに問題がないかどうか、ある場合はどの部分か、改善するにはどんな方法が有効かをアドバイスします。
マネジメントモデルを構築することが営業プロセス管理の定着につながり、浸透させることが売上・粗利の向上につながります。営業プロセス管理による営業活動の可視化と改善策の実施を、継続して着実に積み重ねていくことで、成果を生み出すことができます。

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